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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第3章 束の間の平和
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第28話 修行開始

「はあ…はあ…はあ…はあ…」

「…ぅえっぷ」

「コラブル、吐くなよ?」


 時刻はもうすぐ正午。アッカド、コラブルさんと修行を始めて一時間ほど経った。

 俺たちは今外に出て二対一で勝負をしている。俺とコラブルさん対アッカドだ。魔法の練習をするつもりだったが、体術も必要だとガイウスに言われてこの勝負を始めた。

 始めたのだが…。


「強すぎる…」

「手も足も出なかったっす…」

「まだまだだなあお前ら」


 俺たちはアッカドに指一つ触れられないでいた。コラブルさんは単純に動きが鈍いし、俺はこういうことに疎すぎて何が正しいのか、何をすべきかが全くわからない。アッカドに翻弄されるまま一時間が経過し、コラブルさんの体力は限界を迎え、俺は勝てる気がしなくて諦めかけていた。


「まだまだもなにも、俺殴り合いとかしたことないんですよ?」

「聖堂で一回やったんじゃねえの?」

「あれは…違いますよ。殴り合いとは言えません」


 しかし、アッカドの動き、明らかに人のそれじゃなかった。俺の上を飛び越えたり、コラブルさんを投げ飛ばしたりしていた。これはつまり、


「これって身体魔法の練習ですか?」

「お、分かってんじゃん」


 結局は魔法の練習じゃないか、そう言えばいいのに。だが何か掴めた気はしない。今の時間に意味はあったのだろうか。張り切ってたコラブルさんは動きすぎて吐きそうになってるし。

 しかしこの服装、結構動きやすいな。あの街の人々はお洒落に興味があるだけでなく、機能性も重視しているようだ。激しく動いたが破れたりもしていない。


「身体魔法ってコツを掴むのが難しいんだよ。呪文作ってもはっきりと思い浮かべんのが案外大変なんだ。何せ自分の体だからな。学校通ってたやつならそこらへんも教わるって聞いたんだが、コラブルは身体魔法使えねえのか?」

「甘やかされてきたっすから…ぅえ」

「日陰で休みましょう」


 俺はコラブルさんを木陰まで連れて行った。顔が真っ青だ。しばらく休ませなければならないだろう。

 俺はコラブルさんを木に寄りかからせた後、アッカドの正面に向かい、目を合わせた。


「お、やる気満々って感じか?」

「ちょっと違いますけど…具体的には何が足掛かりになるんですか?」

「とりあえず一回使ってみるのが大事だ。でも最初から自分の意思通りに使うのはむずいから、何回もやってみて、感覚を掴むのを待つのが定石だな」


 待つ。ならばひたすら殴り合うしかないってことか。なかなかに過酷な修行だが、楽な修行なんてないだろうし、今が踏ん張りどころだ。どれだけ踏ん張ればいいのかわからないのが辛いが。


 俺はアッカドに向かって走り出した。そもそも俺自身の身体能力が優れているので、力負けはしないはずなんだ。はずなんだけど。


「うわっ」


 俺の突進は避けられることもなく、アッカドはその場から動かずに俺を投げ飛ばしてしまった。これ、俺たちが弱いだけでなく、アッカドが強いっていうのもこの悲惨な結果の要因になってると思う。


「お前はもうちょい考えて動いた方がいいぜ。突っ込んでダメなら待つしかないだろ」

「なるほど…でもそれって今は当てはまんないんじゃ? 戦わないとコツ掴めそうにないですし」

「そうとも限らないぜ。よーく観察してみろ」


 観察。

 俺は距離をとり、言われた通りアッカドの動きを観察した。隙はない。びっくりするほどないぞ。観察してどうしろってんだ。

 いや待てよ、自分のことも観察しろってことか?


 俺は何ならアッカドに勝てる?


 そうだ、忘れていたけど、俺の脚力は結構すごいはずだ。この足に救われた記憶が二つほどある。安直だがこれにかけるしかない…!

 俺は再び走り出した。その場で跳んでも意味がない。ある程度近づいたところで、不意打ちのように跳んで、上から攻撃を食らわせられれば…!

 アッカドは俺の動きを見て不敵な笑みを浮かべた。何を考えているのかわからないが、引くわけにもいかない。

 五メートルほどまで詰めたところで俺は思い切り跳んだ。が、


(あれ!?)


 思ったより跳ばなかった。四メートルほどしか浮いていない。思い描いていたものとのズレに感覚を狂わされ、姿勢が崩れる。視線が地面に強制的に移され、アッカドが視界から外れた。一回転しそうな勢いだ。第三者がこの現場を見たら絶句するだろう。ダサすぎる。

 俺は空中で姿勢を整えてなんとか着地した。そしてすぐにアッカドの姿を探したが、見当たらない。必死に目を動かしてあちこち探し回っていると、


「ぐへ!?」


 上から地面に叩きつけられた。高さはそんなになかったのでそこまで痛くはなかったが、その衝撃に息が詰まりそうになった。


「まだまだだなあ」

「ど、どこにいたんですか?」

「お前の上」


 上。上? …それって俺より高く跳んだってことか? あれえ…ジャンプ力なら勝てると思ったんだけどなあ…もしや俺、身体強化魔法使えていたのでは? 窮地に立っていた時限定だが、床が沈むほどの勢いでジャンプしていた。あれが身体強化魔法ならば、もう感覚は知っているということになる。あの時の感覚を思い出せば…。


「飯だ」

「おっけーい」

「あ、ちょ、今いいとこだったのに!」

「飯はちゃんと食おうぜ。コラブル連れてきてくれ」

「…はい」


 いいところでガイウスに遮られてしまった。畜生、自分のペースでやりすぎだろ! 五分ぐらいくれてもいいじゃんか…。

 俺はコラブルさんを連れ、食卓に向かった。男しかいない。ガイウス、アッカド、コラブルさんに俺。


「エルリアとユーリィは?」

「エルちゃんはシルフィーのとこだな。クレイが一緒にいる。ユーリィは依頼」

「依頼…依頼!!?」


 俺は物凄い勢いで立ち上がり、椅子を後方へ弾き飛ばしてしまった。依頼だって?


「ああ、違う違う。あいつ、独自で依頼受けてんの。治療のな。あいつ結構稼いでくれてんだぜ?」

「この家で暮らせているのも、ユーリィのおかげかもしれないな」

「へえ…」


 なるほど、ユーリィは【治癒】の素質を持っているのか。エルリアを治したと言っていたしな。じゃあ医者みたいなものか? すごい立派じゃないか。自己評価が低すぎるんだ、ユーリィは。

 エルリアと、クレイ、というのは男たちのリーダーの名前か。シルフィーの小屋にいるらしい。というか、ここ最近はずっとずっとシルフィーの小屋にいるらしい。アッカドは俺たちに付き合ってもらっているし、エルリアの世話をしてくれているのかもな。

 …エルリアのこと、聞かなくちゃな。なんで一緒に暮らしているのかとか。今はその時ではない気がするので後にするが。











 昼食後。

 ガイウスと魔法の練習だ。身体魔法はアッカドと練習するので、炎魔法の練習をすることになるだろう(コラブルさんは闇)。

 俺はそこまで苦労しなかった。何せ初めてではない。包帯を燃やしたこともあるし、思ったより体に馴染んでるな。呪文を作らずとも全身を燃やすことができた。

 魔法とは実に素晴らしいもので、昨日貰った服を着て体を燃やしてしまった時は焦りで頭が真っ白になってしまったが、それは杞憂に終わった。燃やす対象を自分で決めれるらしく、燃やしたいものだけを燃やすことができるようだった(葉っぱで試した)。

 問題はコラブルさんだ。


「ううううううううん…」


 さっきからずっと俯きながら唸っていて、ガイウスにめっちゃ睨まれている。何してるんだろう。

 コラブルさんは顔を上げ、キリッとした表情でガイウスに尋ねる。


「ガイウスさん。闇魔法ってなんすか?」

「知らん」


 …コラブルさんの歩く道はかなり険しいものになりそうだな。


 午後は楽しかった。ここまでガッツリ魔法に触れたのは今日が初めてだ。これからの日々が楽しみになってきた。

 日が暮れてきた。今日はこれで終わりだ。魔法を使うと少しだが疲労を感じるな。精霊といえど休みはとらないといけないようだ。

 俺は自室に戻った。装飾は子供向けのままなので背徳感が拭えないが、もう慣れてきた。でも硬い床もいいけど、そろそろベッドが恋しくなってきたな…。


「………あれ?」


 ふとベッドに目を向けると、昨日はあったはずの白いウサギのぬいぐるみがなくなっていた。

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