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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第3章 束の間の平和
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第23話 自己紹介と男たち

 盗聴問題は解決したものの、それまではそれぞれが別のことをしていたので、それを片付けてから改めて話をしようということになった。アッカドと男たちのリーダーはエルリアと遊び、ユーリィと俺は掃除、ガイウスは自室にこもっていた。

 掃除が終わる頃には正午を回っていたので、昼ごはんを食べ、時刻は午後一時ごろ。ガイウス、ユーリィ、アッカド、エルリア、俺が食卓に揃っている。エルリアはガイウスの膝の上に座っていた。尊い。


「じゃ、改めて自己紹介しましょう。私たちの名前はもう知られているみたいだけど」


 ユーリィが切り出してくれた。知ってはいるが、それはこっちが勝手に把握しているだけなので、本人の口から聞きたいとずっと思っていた。


「私はユーリィ・エリスヴァレン。子供と動物と水色が大好きなお姉さんです!」


 テンション高めだった。好感しか持てない。子供好きはなんとなく分かっていたが、動物も好きなんだ。だから耳とか尻尾とかあんなに触ってきたのか…。


「なぜ水色?」

「直感よ。綺麗じゃない?」

「まあ確かに」

「やけにテンション高いなお前。良い歳して自己紹介で色って…ガキか」

「アッカドに言われる筋合いないわ。好きな色には個性が出るのよ」

「そうかー?」

「否定できるの?」

「でき………」

「できないんじゃない」

「うるせぇ!」


 アッカドが負けた。この二人仲良いな。


「はあったく……俺はアッカド・コークス。好きなもんは…まあ料理とかかなぁ」

「……色は」

「あ?」

「好きな色は!?」

「……黒です」


 根に持ってる…。

食べることが好きだから料理が上手なのか。当番制だし、どうせ自分で作るなら美味しくしたかったんだな。確かにすごく美味しい。


「私、エルリア! いっかい教えたけど、もういっかいおしえるね」

「うん。よろしくね、エルリア」


 “エルリア”だけ…ユーリィやアッカドみたいにファミリーネームは教えてくれないのだろうか。大事な情報ではないんだけど。


「あ、好きなものはね、まほうとガイウス! あと銀色!」

「魔法もなんだ?」


 ガイウスが好きというのはなんとなく予想できるが魔法が好きなのか。初耳だ。もしかして練習してたりするのかな。だとしたら強いのも納得が…いかないか。


「ゴホンっ」


 ガイウスが口に拳をあて咳払いをした。恥ずかしかったのかな。


「俺はガイウス・ヴィル・ベアラーだ。好きなものは特にない」

「えーー! エルリアのことは?」

「……………」

「好き?」

「……はあ。そういうことにしておこう」


 折れた。ガイウスが折れたぞ。エルリアって本当に何者なんだ。


「色は!?」

「なんでもいいだろう」

「ここに来てそれは許されねえぜ…ボスも道連れだ…」

「………銀色だ」


 ノリがよろしいようで。エルリアと同じ色とは、何かあるな。


 そんなこんなで、とうとう俺の番が来た。自然と視線が俺に集まった。なんか緊張するな、こんなに注目されると。


「…俺は、日野 新って言います。好きなものは…自分でもよくわかんないです。色は青です」

「後半も気になるんだが、ヒノアラタ? やっぱ転生者って変な名前だなぁ」

「ヒノくんって呼べばいいのかしら?」


 ユーリィは下の名前で呼びたいようだ。ここでは逆なんだよな。


「いえ、俺がいた場所では後ろの名前を親に付けてもらうんです」

「あら、そうなの。じゃあアラタ君ね。よろしく、アラタ君」

「よろしくな、アラタ!」

「…お願いしますっ」


 泣いてしまいそうだ。下の名前で呼ばれるのはあんなに嫌だったのに、この人たちに呼ばれると逆に嬉しいのはなんでだろう。胸の奥が暖かくなってくる。


「さて、これからやることがある」


 ガイウスが話を変える。午後はやることがなかったので、こちらとしては都合がいい。


「あの男たちのことだ」


 八人の失業者のことか。


「どうするんですか?」

「いつまでもここに置いておくわけにはいかない。食費がかさむ」

「それもそうねえ。買い溜めしておいたの、もうなくなりそうだし」

「つってもよお、どうするんだよ。当てあんのか?」

「ある」


 言い切るのか。でも確かに、教会の件が片付いた後ならなんとかなる可能性もある。


「教会が警護団に締められたからな、議会も警護団の目につくはずだ。そうなれば議会は動き辛くなるだろう。それに、議会は街の端の方は注目していない。アラタ、男たちを呼んでこい」

「はい。どこにいるんです?」

「シルフィーの小屋だ」

「シルフィーの? なんでまた」

「掃除と世話をさせている」

「…大丈夫ですかね」

「さあな。とりあえずいってこい」


 俺は玄関から出てシルフィーの小屋へ向かった。道中叫び声のようなものが聞こえてきた。やっぱり知らない人間が相手だから警戒しちゃったかな…?


「助けてくれ〜!」

「……………はあ」


 なんて情けない声なんだ…早く行こう。


「大丈夫ですか…大丈夫ですか!?」

「ぐほぁっ!!」


 酷い景色だった。ある男は脱力して壁に寄りかかり、ある男は地面に尻を高くしてうつ伏せで倒れており、ある男はたった今、シルフィーに蹴り飛ばされていた。他に距離をとっている男が三人いる。


「ああ…よく来てくれたっす…こいつヤバイっすよ…殺意を感じるっす…」


 太った男が小屋の裏から出てきた。この様子だと何もしてないな、こいつ。


「とりあえず皆さん、食卓に行ってください。あとは自分がやります」

「ああ…助かるっす…」


 壁に寄りかかっていた男は立ち上がり、蹴られた男は太った男の肩を借り、倒れていた男は放置されていた。


「ちょ、この人も連れてってくださいよ」

「そいつは自業自得っす…その鳥を適当に扱うし、羽毛をむしるし…調子に乗るからこうなるんす…」

『まったくだわ! なんて横柄で、汚らわしい!』

「ああ、そう…」


 被害者と思わしき女性が突然会話に入ってきたが、そんなに驚きはしなかった。

 ん? 女?


『ああ…世話してくれるなら、貴方のようなハンサムな方がいいわあ…』

「…これはちょっと予想外」


 喋っているのはシルフィーだった。いや、全ての生き物と意思疎通できるんならきっとこうなるだろうなとは思ってたけども、お嬢様というかおばさんというか…。


『ああそうだわ、挨拶がまだでしたわね。私はシルフィーと言います! よろしくね、狼さん❤︎』


 シルフィーは翼を広げ少し羽ばたいた。地面の砂が巻き上げられ身体中に付き、ストレスを覚えながらも挨拶を返す。


「どうも。俺はアラタです」

『あら…あなたおいくつ?』

「十九ですけど、それが何か?」

『お若いのねぇ…あと二十歳老いてから出直してくださいまし』

「………こいつ……」


 振られたみたいになっている。間違いなく面倒くさいタイプの鳥だ。マジかよお…嫌だなあ…。


『とりあえず掃除してくださりません? 羽毛が落ちてしまって』

「分っかりましたー…」


 掃除はこなした。最中かなり話しかけられたが、全て適当に返した。なんて言われたか全く覚えていない。


『ありがとうございます。また来てくださいな❤︎』

「うっす」


 極力避けよう、もう全部誰かに押し付けよう。シルフィーの声が聞こえるのは多分俺だけだし、他の人ならそんな苦痛じゃないはず。


 俺が食卓に戻ると、ガイウスが外出の準備をしていた。


「どこか行くんですか?」

「ああ。街に行ってくる」

「大丈夫なんです?」

「入る気はないそうよ。この人たちを端の方に連れて行くんだとか」

「ああ。目的地に着いたらこいつらを鉄格子の上から入れる」


 端の方、それも鉄格子に近い場所。心当たりはひとつしかない。


「あの聖堂に?」

「ああ。情報屋から情報を仕入れてある。絶対とは言えんが、それなりに安全だろう。議会があそこに目を向けるとは考えにくいしな」

「自分も行っていいですか……?」

「だめだ」

「ですよね…」


 あれからそんなに時間は経っていないが、どんな様子か確認したかった。しかし、街の人に目撃されると厄介だしなあ…。


「と、言いたいところだが」

「へ?」

「街に入らなければ大丈夫だろう。森の中から見るだけならいいぞ」

「マジですか!?」


 いいのか。絶対にダメだと思ってた。言ってみるもんだな。


「もしかしたら、良いものが見れるかもしれない」

「良いもの…?」

「出るぞ」

「あ、はい」


 ガイウスはもう玄関の扉を開いていた。外には男たちがそれぞれ荷物を一つずつ持って立っていた。俺はガイウスの後に続いて玄関から外へ出て、あの小さな聖堂を目指して森の中へ進んでいった。

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