表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/137

第11話 決断①

「………領主の、犬」

「ああ。そんな奴らの家族になるというのは、そういう意味だぞ」


 そういう意味。つまり、俺も人殺しになるということ。領主とやらからの命令を、否応なしにこなさなければならないという事。


「エルリアは知ってるんですか」

「ああ、一応伝えはした。理解しているかはわからんが」

「………なんで、そんな事してるんですか」


 見たところ、この人たちは貴族でも何でもない。そんな人たちが、なんで領主とやらの命令をこなしているんだ。


「取引の結果だ」

「取引? なんの取引ですか」

「仲間でもないお前に話す義理はない」

「………」


 ここまで話しといてそれは教えてくれないのか。俺はこの人たちにとって敵ではないだけで、味方でもない、ということか。ならば、これからの俺の扱いはどうなる。


「俺の事はどうするんですか」

「ギルドに入るつもりがないのなら、エルリアの護衛をさせる」

「エルリアの護衛…」


 そうだ、この人達とあの子の関係はなんなんだ。間違いなく血縁ではない。だったら、なんであの子と一緒に暮らしてる? ガイウスにとって大切な人と言っていた。どう大切なのだろう。


「なんでエルリアと暮らしてるんですか。あんな小さい子と闇ギルドの人たちが一緒に暮らしてるなんて、どう考えてもおかしい」

「お前が知る必要はない」

「……ありますよ!」

「部屋で大人しくしてろ」

「…………っ」


 結局教えてもらえないのか。後ろの二人は何も言わないのか?

 俺は後ろに立っている二人をこっそり見た。


「……………」

「…………っ」


 アッカドは平然としていた。だがユーリィは、なんだか辛そうな顔をしていた。

 あとでユーリィを尋ねよう。とても優しい彼女のことだから、何か教えてくれるかもしれない。

 とりあえず今は大人しく部屋に戻ろう。ガイウスがいる場で聞き出せるとは思えない。


 俺は踵を返し、部屋に戻った。


「……………はあ」


 何もすることがない。ユーリィはまだガイウスといるだろうし、話を聞くのはもう少し時間を置いてからでないといけない。それまで何かで暇をつぶしたいが、女児の部屋を勝手に調べる訳にもいかないしな。今までの振り返りでもするか…。













「……ねえ、ガイウス」

「何だ」

「過去に会った転生者って、この世界のことを知ったら人を殺しはじめたのよね。だからあいつにも教えなかった。でも、結局教えたのはなぜ?」

「あいつにそんな度胸ないだろう。それに、契約した後なら、いざという時にエルリアが対処できる」

「………それ、エルリアにあいつを殺させるってこと?」

「…………」

「あんたねぇ……!!」

「あくまでその場に俺がいなかったらの話だ。俺がいれば、俺が殺る。お前が悩む必要はない」

「………そんなこと、言わないでよ…」


 女は優しすぎる。いつでも仲間のことを考え、他人のことを考え、世界のどこかの人の生を考えている。『死は絶対の終わりであり、恐怖であり、他人によってもたらされていいものではない』。そう思っている女が、誰かを殺せるはずもない。


「お前が気にする必要はねえよ。お前は誰かに優しさを振りまいてりゃいい。それがこの世界で、お前がしてやれることなんだ」


 男は一途だった。いつでも仲間のことだけを考え、一人の女の事だけを考え、自らの手を汚すことに躊躇はなかった。しかし、そんな男も他人を直接手にかけたことはなかった。


「………全部俺に任せておけばいい」


 そう、この男だ。いくつもの命を屠り、自らのため、ある女性のためにあらゆるものを犠牲にし、自らを極悪人と称するこの男。自らだけを極悪人と称するこの男。

 三人で『エゴイスト』。それは実質一人だった。全てを一人で背負うと決めたが故に。仲間の手を汚させないために。


「ねえ、ガイウス。わたし、おにいちゃんのところに行ってくるね」

「……ああ」


 全ては、彼女のために。











 床の上でゴロゴロと転がっていると、ガチャッと誰かが扉を開け、部屋に入ってきた。俺は仰向けになって扉に目をやった。


「おにいちゃん、わたしとおはなししよ」

「あ、ああ。いいよ」


 エルリアだった。俺は体を起こし、エルリアと向き合って座った。固定されている腕が痛々しい。全て自分のせいだ。謝らなければ。


「ごめん、エルリア。腕、痛いよね」

「んー……? あ、だいじょぶだよ。もうすぐなおっちゃうもん」

「それって、どういう意味」


 明らかにおかしい。誰かに治してもらうというニュアンスではないと感じる。でも、だとしたら。


「かってになおっちゃうの」

「………そう、なんだ」


 勝手に治る。自然治癒で治るという認識で相違ないだろうが、どういう事だ。まだ一日も経過してないのに、もう治りそうだと? どうやらこの子についても色々探らないといけないみたいだな。


「それより、おはなししよ!」

「あ、ああ」


 最近のエルリアを見ていると、こういう年相応な時のほうが珍しく感じてしまう。


「おにいちゃんって、なんていうの?」

「なんて……ああ、名前?」

「うん」


 この世界に来て初めて聞かれた。多分まだ誰も知らないだろうな...。


「俺は『アラタ』って言うんだ」

「アラタ…? へんなひびきだね」

「そうかな」


 この世界では変か。

 それから少しの間、下らない話で時間を潰した。俺は基本的に聞くことに専念していた。楽しそうに話しているエルリアを見ると、なんだか気が楽になった。


「ねえ、あらたおにいちゃん。ユーリィにききたいこと、あるの?」

「え、なんでわかったの」

「えへへ、なんとなく」


 エスパーかな。 ...エスパーなのか? ほんとにいそうで怖いぞこの世界。


「ユーリィのへや、いこ。もうもどってるよ」

「教えてくれるかな」

「ユーリィはやさしいから、きっとおしえてくれるよ。こっち」


 エルリアに案内され、ユーリィの部屋の前に来た(案内されずとも来れるが)。今はエルリアの言葉を信じよう。俺は勇気を出してノックした。


「はい……あんた」

「すいません、聞きたいことがあって」

「………外で話しましょう」


 そういって廊下の、食卓と反対側の裏口から外へ出た。

 ユーリィは裏口を閉め、誰も出てこれないように扉に寄りかかった。俺はユーリィと向かい合い、エルリアと手を繋いだままユーリィからの言葉を待った。


「聞きたいことって?」


 前置きなく本題に入る。でも、どうやら教えてくれるらしい。


「取引の結果闇ギルドをやってるって言いましたよね」

「……ええ、まあ」


 なんだか歯切れが悪いが構わず続けよう。


「取引ってなんですか」

「……領主様との直接の取引でね、情報を貰う代わりに、領主様からの命令に従う。まあ、主に依頼をこなすの」


 情報との交換? だとしたら、人を殺さないと手に入らないぐらいの情報ってことになるぞ。そんなに価値があるものなのか?


「情報って、なんの情報ですか」

「魔眼の情報」

「まがん? なんですかそれ」

「……それを知るには、この世界のことを知らないといけないんだけど……」

「…? どうしたんです…」


 ああ、そういう事か。俺が前の転生者の二の舞になりかねないと思っているのか。


「大丈夫です。前の転生者みたいなことはしません」

「…………この世界はね、七つの国に分かれてるの。王都ゴッデス、夢都グローリア、魔都アトラス、男都スタンブルク、枯都リヴァイア、数都アルキメデス、神都レジエント。なんとか都ってやつは通称ね。それで、かつてはそれぞれを魔眼を持った魔法使いが治めてたの」

「じゃあ、国のトップの情報を集めてるってことですか?」


 それだと少しおかしい。人殺しまでしなくとも情報ぐらい手に入れられそうだ。まさか国のトップが素性を明かさないなんてことはないだろうし。


「話は最後まで聞くものよ。『かつて』って言ったでしょう? その体制はもう崩れてるし、七つのうち一つは…いえ、二つは行方不明なのよ」

「じゃあ、それを探していると?」

「ええ、私たちが探し求めているものは行方不明になっている魔眼の一つ、『仮定の魔眼』よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ