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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
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第97話 岩山

「フォード君が……!?」

「貴方達が出てからすぐ姿が見えなくなって、家の周りを探しても見当たらなくて…!」

「うーん、まずいね。もうすぐ日が落ちる。冬着は着てるのかな?」

「多分、着てます」

「それは良かった。……だからといって余裕があるわけでもないけどね」


 緊急事態だ。


「探そう、カルディア」

「分かってるよ。手分けしよう。僕とコラブルは一緒に探す。フレアとアラタは個々で探して」

「分かった」

「サラさんは家で待機してて。途中で少年が帰ってくるかもしれないし」

「わ、分かりました…!」

「見つけたらどうやって合図すればいいんだ?」

「フレアとアラタは炎でも打ち上げてよ。僕らが見つけたらどっちかと合流する。さあ、時間はない。行こう!」


 俺たちは三手に分かれ、フォード君の捜索を開始した。












「本当に、何処にいるんだよ?」


 全然見つからない。空はもう真っ暗だ。気温も下がってきているし、冬服を着ていてもずっと外にいては凍えてしまう。それが分からないフォード君ではないだろうに。


(なんで一人で出歩いたりしてるんだ? やっぱりおかしな子供だな)


 そんなことを考えながら、俺はフォード君を探し続けた。森の中は見通しが悪く、見えるのは近くのの岩山ぐらいで、捜索は困難を極めている。


「フォードくーーーーーん!! どこーーー!!」


 ……声も通らない。厳しいな。


 ーーーおいでーーー


「………?」


 ふと、誰かに呼ばれた気がした。気のせいではないだろう。誰だ?


 ーーーこちらだーーー


 俺は誰かに招かれるのを感じ、その感覚に素直に従って足を進めた。


 辿り着いたのは、ずっと見えていた岩山の麓だった。岩がゴツゴツしていて、足場はかなり悪い。


「誰かいますかー?」


 軽く呼びかけてみた。返事はない。

 俺は山をぐるっと一周した。なかなか長かったが、結局誰もいなかった。


(イタズラかなんかか……?)


 などとありえもしないことを考えている俺に、それは話しかけてきた。


『こちらだ』

「……どっち?」

『左である』


 俺が言われた通りに左を向くと、そこには俺を見つめる、俺の体よりも大きな深碧色の瞳があった。


『はじめまして、森の子よ』


 その声は神様のような包容力を持っていて、その瞳も慈しみで満ちているように見えたがしかし、やはり俺は頭を抱えずにいられなかった。


「………は、はじめまして」

『我が声を聞いたか。やはり森の子であるな』

「も、森の子?」

『精霊なれば、森の子である』

「……!」


 一目で見抜かれた……!? 何者だ、こいつ。


「貴方は……なんですか?」

其方(そなた)の目には如何に映る』

「山」

『はは、違いなし。であるが、訂正しよう。我は人の子がカカトカバネと呼ぶものである』

「カカトカバネ!?」


 俺は思わず山のてっぺんを見上げた。あそこまでが体だから、俺はカカトカバネ一匹の外周をぐるっとした訳で、あっちの岩場は全部口で……デカすぎるだろ!? 


『かつての統率者である。今は傍観者に過ぎず、最早我が子の声もこの耳には届かぬが』


 統率者……リーダーってことか。


「貴方が俺を呼んだんですよね……?」

『然り』

「何の用ですか? 今時間がなくて」

『そう急くな。ゆとりを持て、森の子よ。我は其方に伝えねばならん』

「手短にお願いします」

『ふむ、なんと恐れを知らぬ……良い、実に良いな。それでこそ語る価値があるというもの』


 手短にっていったはずなんだけど、全然急いでくれない。長寿そうだしなぁ……。


「手短に、お願いします」


 念を押した。


『ああ、ああ承知した。この国は、もうすぐ滅ぶ』

「はい?」

『我が一番に伝えるべきことは伝えた。行くが良い』


 今度は手短すぎる。そんな台詞を流せるわけないだろ!


「すみません、今の言葉、詳しく」

『……ふふ、あまり急くなと言うただろう? ゆとりを持て、森の子よ』

「……はい」


 釣られた……。


『この国、リヴァイアの北方には悪魔が眠っている』

「悪魔?」

『それはかつて一国を滅ぼした。リヴァイアの前にこの地で栄えた、ある一国をな。それが再び目覚めようとしている』


 また意味の分からないことを……これ以上謎を増やさないでほしい。


「それがどうかしたんですか?」

『それはまず瘴気を放った。その瘴気は生物を侵食する。そして狂わせる。我が数多の同胞も狂気に堕ちた』

「……ドンマイです」

『はは、慰めか。受け取っておこう。……だが、今は何かが違っている。瘴気は人体をも蝕むはずであったし、より多くの生物を狂わせるはずであった』


 何が何だかという感じだ。そもそも今は瘴気なんかないというのに。何と比較してるんだ?


「すみません、要点が分からないんですけど……」

『言うなれば、滅びは近いが、何かが違う、と言うことである。この言葉を、其方が()()()()()に伝えると良い』

「………!?」


 ガイウスのことを知ってる? ってことは今の言葉は、寒冷化の方と関係があるのか。


「……ガイウスに伝えておきます」

『ああ。そうするといい』


 伝わるといいんだけど……。


 そうだ、すごく物知りみたいだし、このカカトカバネに聞いてみよう。


「あの、一つ伺っても?」

『なんだね』

「俺、今子供をさがしてるんですけど、その子の場所って分かったりします?」

『この森にあるのだな?』

「はい」

『であれば、見つけることは容易である』

「本当ですか!?」


 俺は大きな目の元に駆け寄った。


「お願いです、力を貸してください!」

『ああ、良いだろう。森の子の願いであればな。……見つけたぞ』


 早いな。


『西の、赤い花が宿る木の下である』


 ……え、なにそれ。


「あの、それじゃちょっと……」

『ふむ、分からぬか。では、我が(まぶた)に触れるがいい』

「瞼……? こうですか?」


 俺は手を上に伸ばして、目の上部の岩のように硬い部分に触れた。


『そこで良い。目を瞑り、感覚を澄ませ』


 俺は言われた通りに目を閉じて、感覚を研ぎ澄ました。すると、


「………!?」


 フォード君がいる位置の景色が脳裏に流れ込んできた。気持ち悪い感覚に思わず後退り、転んで尻餅をついてしまった。


『心得たか?』

「は、はい……」

『ならば行け、森の子よ。伝えるべきことは伝えた。……ああいや、後一つ残っていたな』


 山のようなカカトカバネはゆっくりと瞬きした後、今度は警告するような目で俺を見た。


『其方自身も、用心せよ。黒い心は発芽のように小さく顔を出しているが、それはいずれ、其方を飲み込むほどに肥大化するだろう。それに呑まれてはならない』

「……分かり、ました。……?」

『はは、今は分からずとも良い。いつかその時が来る。時に身を委ねよ』


 俺はしばらく突っ立って考え込んでいたが、訳がわからなくなったので、大きな目から距離をとってお辞儀した後、フォード君の元へ向かった。

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