表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
106/137

第96話 急転

「はぁ……」

「はぁ……」


 夕飯後。食卓にて。


「「はぁぁぁぁ………」」


 アッカドとカルディアが溜め息をつきまくっている。


「あんまり落ち込まないでくださいよ。生きてるだけでも幸運ってものです」

「でもなぁ……勝てねえ相手は久しぶりだ。凹む」


 アッカドたちがまたネクロマンサーに襲われたのだそう。みんな無事で良かった。


「察するに、お前らの方も進展ねえんだろ?」

「全くない訳じゃないですけど、正直ネクロマンサーに近づいてる気はしません」


 フォード君宅には何もなかった。むしろ無さすぎて逆に怪しかった。

 フォード君の物は幾つかあったが、お母さんの私物がほとんど見当たらなかったのである。あったのは服ぐらいで、その数も少なすぎた。


「少年の母親、多分すごく強いんだよねー」

「なんで?」

「今日はあの二人、冬服を着てたでしょ? あれに細工がしてあるのか、魔眼で見れなかった」

「お前が雑魚いんじゃねえか?」

「否定はできないけど、そこまで盲目じゃないよ、僕の魔眼」


 推測ばかり捗れど、依然証拠はない。


「もう少しお母さん探ってみよう。それでダメだったら、いよいよお手上げだね」

「寒冷化の方も進展ないしなぁ。結構無謀な事してるのかもしんねえな、俺たち」

「ですね。でも、頑張りましょう」

「そうだな」


 今日はもう寝るか。


「俺寝ますね。おやすみなさい」

「おう。……あ、そうだ。アラタ、一個教えとく」

「なんです?」

「ネクロマンサーは女だ」


 アッカドは断言した。


「な、なんで分かるんですか!?」

「今日やり合ったときに声を聞いた。あと、多分だが、ネクロマンサーは額の辺りを怪我してるはずだ。俺が傷つけた」

「おー、分かりやすい目印だね」

「だろ? 参考にしてくれよ」

「はい、参考にします…!」


 俺はそのまま寝た。色々考えていたので、寝るのに時間がかかった。


 ネクロマンサーは女。

 その言葉が頭から離れなかった。
















「……どういうことですか」


 翌日。俺たちは真正面からフォード君宅を訪ねていた。お母さんの顔がとても怖いです。


「このままです」

「来ちゃったっす」

「帰りなさい」

「あー待って閉めないでよー!!」


 カルディアは必死に扉をこじ開けた。


「君はフォード君の前には現れるなって言っただけじゃないか。僕らは君に会いに来たんだよ?」

「私に……? 何故ですか」

「えっと……君、強いでしょ?」

「……だったらなんです」

「ほら、そこの化け物がさ、修行中で君に興味があるって」


 俺!?


「……だとしても、手合わせはしません。帰りなさい」

「いやーーー待ってよーーーっ!!」


 カルディア粘るな……頑張れ!


「……なんですか」

「君、忙しいんでしょ?」

「……ええ。それが何か」

「最近のリヴァイアって物騒じゃないか。だからさ、フォード君を放っておけないんだよ」


 ここでフォード君を引き合いに出すとは、うまいな。


「もう他人じゃないからね。よその家庭に口挟むようで悪いけど、フォード君を一人で置いていって、ちょっと無責任なんじゃないかな?」

「…………」


 フォード君のお母さんは黙ってしまった。


「……つまり貴方達は、フォードの面倒を見たいと?」

「そこまでは言ってないけど、まあそんな感じかな」

「………」


 フォード君のお母さんは考え込んでしまった。

 俺は小さな声でカルディアに話しかけた。


「カルディア。ちょっと踏み込みすぎじゃないか……?」

「何言ってんの。ここは踏み込むべきでしょ。それとも何、君にはあれが見えないの?」


 そう言うとカルディアは、フォード君のお母さんの額辺りを指さした。


「……見えるよ」


 そこには包帯が巻かれていた。

 昨日アッカドが言っていた。ネクロマンサーは額の辺りを怪我しているはずだと。

 昨日会った時はこんなものなかった。あの後に負った怪我という事だ。


「黒寄りのグレーだよ。僕らが探すべきは証拠、あるいは動機だ」

「今問い詰めたらどうっすか?」

「詰めきれないだろう。せめて証拠は集めるべきだ。……おそらく彼女だろうが」


 フレアの言う通りである。

 俺たちは最早確信を得ていた。

 (たぶん)強いし、アリバイもなければ、ネクロマンサーと同じ位置に傷を負っている。そして、女性。

 この人、すごく黒い。

 しかしそれでも疑いきれずにいるのは、彼女がフォード君の母親だからだ。

 フォード君の母親がそんなことするのかな。証拠も大事だが、今はとにかく動機が知りたい。動機が分からなければ、断定できない。


「……分かりました。お願いします」


 フォード君のお母さんは俺たちのお願いを聞き入れてくれた。


「え、いいの!?」

「頼んでおいて何故そんなに驚くのです」

「頼んでおいてなんだけど、普通許可出さないでしょーこんなふざけたお願いに」

「……大事な子供です。失いたくない」

「ふーん……」

「私はサラです。これからよろしくお願いします」


 かくして俺たちは、合法的にフォード君と関われることになった。
















 三日が経過した。


 俺たちは今日もフォード君宅を訪ねていた。最近変わったことといえば、気温がさらに下がったぐらいだ。調査は進展していなかった。


「お母さん、お水」

「……はい」


 俺たちがフォード君と関われるようになってから、サラさんもずっと家にいた。俺たちの意味がないじゃんか。余程フォード君が心配らしい。


「じゃ、今日は帰るよ。じゃあね、フォード君」

「う、うん……」


 最近のフォード君は、俺たちが帰る時に悲しそうな顔をしていた。懐かれたらしい。


「明日も来るよ」

「……うん」


 俺たちはフォード君宅を出た。














「サラさんでほぼ間違いないはずなんだけど……」

「何にも掴めないね」


 未だ事態は進展していなかった。ただただ時間を浪費し続けているだけのように思えた。

 そんな時だった。



「ま、待ってください!」

「……?」


 その声に後ろを振り向くと、サラさんがこっちに向かって走ってきていた。


「ど、どうしたんですか」

「フォードは一緒ですか!?」

「いや、いませんけど……」

「そんな……」

「何かあったのかな?」


 そうカルディアが尋ねた。サラさんの返答は信じ難いものだった。


「フォードが居なくなりました……!!」



 実に意外なことに、事態を急転させたのはフォード君だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ