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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
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第93話 犯罪

「なんか、一方的だったな」

「……うーーん………」

「フレアだけ無傷っす。ずるいっす」

「やめろ、(ひが)むな。態度の問題だろう」

「余計傷つくっす……」


 フォード君のお母さんに置いていかれた俺たちは、足を崩して文句を言い合っていた。足が痺れてみんな立てないらしい。俺は立てるけどノリで付き合っています。


「ねえねえ、三人とも」

「どうしたカルディア」


 めっちゃウジウジするじゃん。


「あのさ……怪しくない?」

「何が?」

「あの母親。怪しいなー、とか思わなかった……?」

「えっと……」


 さては最近間違えすぎて安易に断言できないんだな? イジりたい。が、ここは抑えて。


「変だとは思ったよ。質問の内容とか、魔法に詳しいところとか、適当な誤魔化しを流すところとか」

「同感っす。フォード君のこと心配してる割には、フォード君毎日ここ来てたっす」

「ネクロマンサーと繋げるのは流石に短絡的だと思うが、何か知っている可能性はある……かもしれない」

「だよね、だよね!」


 カルディアは確信を得た途端に元気になった。可愛いと思ったら負けな気がする。


「尾行しよう!」

「攻めるな……。でも、どこ行ったか分かんないぞ」

「家でしょ。確か森の中にあるんだよね、彼らの家。まさか蛇行しながら帰るわけもないだろうし、あっちを真っ直ぐ行けば追いつけると思うよ」

「バレたら今度こそ終わりだぞ……?」

「その心配はないよ。ね?」


 カルディアはコラブルを見た。


「っす」


 コラブルはすぐ肯定した。


「オイラの『エージェント』、他人にも使えるっす」

「マジか!?」

「領域内にいれば可能っす。『エージェント』」


 コラブルが魔法を唱えると、足元の影から黒い魔力が溢れ出し、俺たちの周囲を覆ってしまった。それは次第に収縮していき、やがて俺たちの体にピッタリと張り付いた。


「完成っす」

「……なんか、あれだな。意外にも異物感とかないんだな」

「今回は顔にもついてるっすよ」

「へー。でも視界は良好だぞ?」

「目だけ避けてるっす」

「器用だな」

「ぶふっ!」


 誰かが俺を見て笑った。


「おい誰だ笑った奴」

「ごめん僕」

「素直だな。……ふっ」

「笑ったな!?」

「カルディアのは初めて見たし。笑っちゃうわ」

「早く慣れようね。ね!」

「そ、そうだな」


 恥ずかしがっているのか分からないが、カルディアの声が若干うわずっている。可愛いと思ったら負けだ。早く慣れよう。


「ゴホン! とにかく、この状態ならバレずについていける。見られたのに野放しにするわけにもいかないしね。早く行こう」

「分かった」


 俺たち四人はフォード君たちが向かった方向へ歩き出した。




















「家に着いちゃったな……」

「真っ直ぐで合ってて良かったね」


 しばらく経って、俺たちは森の中のフォード君の家に辿り着いていた。


 さほど大きくはないが、質素で綺麗な家だった。大きな窓から中の様子が窺える。部屋も整理整頓されていて、生活感が薄かった。


 中ではフォード君とお母さんが何かを話している。流石に声は漏れてこない。

 俺は静かな声でカルディアに話しかけた。


「ここからどうする……? 家に押し入るわけにもいかないし……」

「待機だね……。向こうが何かアクションを起こすまでは、ここで我慢だ」


 やはりそうなるか。しばらくはここでじっとしていよう。








 一時間ほど経った頃。


 家から誰かが出て行った。慎重に家の中を覗くと、フォード君しかいなかった。


「カルディア。お母さん出かけたみたいだぞ」

「そっか。じゃあ押しかけちゃう?」

「必要性をあんま感じないけど……」

「ここで怯んでると永遠に見つかんないっすよ、ネクロマンサー」

「……押しかけちゃうかぁ」


 フォード君宅に押しかけることにした。


 俺たち四人は闇魔法を解き、玄関の前に立った。


 二回ノック。しばらくして、


「どちらさまですか」


 フォード君が出迎えてくれた。いや、出迎えてくれたわけじゃないか。


「やあ、フォード君。来ちゃった」

「あ、お兄ちゃん。……なんで僕の家知ってるの?」

「野生の勘、かな」

「すごい……!!」


 無垢な少年を騙した瞬間である。やむを得まい。


「僕たち、君のお母さんについて知りたいんだけど、教えてくれない?」

「いいよ」

「じゃ、おっ邪魔しまーす」


 カルディアはズカズカと他人の敷地に入って行った。それに続いて俺たちも中に入って行った。



「君のお母さんの仕事は何? まさか専業主婦じゃないよね」

「えっと……なんか、難しいことだった」

「魔法関連?」

「わからない」


 カルディアはフォード君の家を漁っていた。もちろん形跡を残さぬよう丁寧に漁っているが、よくもまあそんなに躊躇なく漁れるものだ。俺なんか立ってるだけで息苦しいのに。


「君のお母さんっていつも留守なの? 君、毎日来てたじゃん」

「うん。まいにち街にいってる」

「ふーん……」


 めぼしいものが見つからないらしく、カルディアはあっちこっちを探っていた。フレアとコラブルも慎重に探索している。俺だけサボりみたいになってるが、俺に他人の家を漁るのは無理だ。


「君のお母さん、何か変なことに加担してない? 些細なことでいいんだ。変なところがあったら教えて欲しいな」

「えっと…………」


 フォード君は黙ってしまった。待て、なぜそこで口籠る。


「……あるの?」

「ううん、ないと思う。ただお母さん、変人だから、たまに嫌われる」

「へー……」


 変人……そうは見えなかったけどな。もう少し探る必要がありそうだ。


「フォード君。お母さんはいつ帰ってくるか知ってる?」

「たぶん、夜になってから」

「遅いねえ。いつもそうなのかな?」

「うん。いそがしいんだって」

「じゃ、もうちょっと探ろうか」

「……分かった。手伝うよ」


 結局は俺も加わり、全員で家を探索し始めた。


「……さっきからなにしてるの?」

「え? あー……『気にしないで』、は無理があるか。物盗んだりとかはしないから、見逃して欲しいんだけど……」

「わかった。みのがす」

「……助かるよ」


 指摘されて初めてやってることのヤバさを自覚した。これ、もしネクロマンサーと無関係だったらどう言い訳すればいいんだろう……。

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