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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
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第92話 邂逅

「一日ぶりの広場だな」

「特に何も感じないね。少年が来るまでは、適当に時間潰そうか」

「っす」


 翌日。予定通り広場に来た。ここに来ると修行をする気分になるが、今日はその必要はない。


「フォード君、いつ来るかな」

「さあね」

「フォード君の位置とか分かんないんすか?」

「探せば分かる」

「じゃあ探すっす。待ってる必要はないっすよ。こっちから突撃すりゃいいんっす」

「……ちょっと待ってね」


 カルディアは魔眼でフォード君を探し始めた。


「……あれぇ? 覚えたはずなんだけど……」

「見つからないのか?」

「うん。なんか見当たらないや」

「じゃあ待つっす」

「切り替え早いな」


 俺たちはしばらく木陰に入りながら待っていた。途中の会話はくっだらないことばかりだったので割愛。


 かなり時間が経って。


「お。コラブル、あそこ見てみ」

「んん? おお、いるっす」


 丁度反対側の木の後ろから、フォード君がこちらをチラチラ覗いている。この距離、魔法がないと見えなかっただろうな。

 俺はすぐに立ち上がって、駆け足でフォード君の元へ駆け寄った。道中目が合い、フォード君は笑い出していた。罪悪感があるなら来なきゃいいのに……。


「アラタどうしたの?」

「フォード君見つけたんっす」

「本当? どれどれ……うーん? 何も見当たらないなぁ……」

「……まずい」

「フレア? 何か見えたんすか?」

「ああ。コラブル。アラタを止めろ。全力で」

「アラターーーー!!!! ステイっ!!」


 なんだ? 騒がしいな。


 俺はもうフォード君の目の前にいた。一度コラブルたちの方を振り返ってみると、大きな仕草で何かを必死に訴えていたが、俺には伝わらなかった。


 いいや、放っておこう。


「フォード君、一日ぶり」


 俺はとうとう声をかけてしまった。


「う、うん……」

「……? どうし、た………」


 不意に、誰かがフォード君の後ろに立った。俺がゆっくりと視線を上げると、目が合った。


 三十くらいの女性だった。長い茶髪を一本に結い、化粧はなく地味な服装。確かリヴァイアの冬着。だが、風貌などどうでも良かった。


 見られた。女性の顔は真っ青だった。


「…………どうも」


 挨拶してみた。


「きゃあああああああああああああああ!?!?」

「どわあああああああああああああああ!?!?」


 最悪の邂逅だった。

















「説明してください……!!!」

「い、いや、これには訳が」

「せ、つ、め、い……!!」


 現在、俺たちは四人全員正座させられています。すごくデジャブ。


 なんと、女性はフォード君の母親でした。しかし、こうなるのは時間の問題だったのかもしれない。


「昨日家に帰ってみたらフォードが家にいなくて、必死に探してたら森の中で一人で歩いているし、理由を聞いてみたら気になることがあるとしか言わないから、今日確かめに来たら……」


 女性はゆっくりと俺を見た。


「こんな化け物と関わっていただなんて……!」


 初めて言われた率直な言葉は、俺の心の奥深くまで突き刺さった。


「化け物……だと……!? 酷い……」

「否定できないよねー」

「諸々のツケが回ってきたっす」

「私語は謹んでください……!!」

「「「すいません」」」


 母、ガチギレである。


「フォードと何をしてたんですか?」

「いや、何かをしてた訳ではなく、フォード君が一方的に見てきただけで」

「……そうなの、フォード?」


 少年は首を横に振った。


「あいつやってんな」

「コロッス」

「クソガキぃ!!」


 母がヤジを飛ばす俺たちをキッと睨んだ。場が静まり返った。


「……もう何をしていたかはどうでもいいです。とにかく、二度とフォードには関わらないでください」

「……善処します」

「約束、してください」

「……はい」


 今、すごく理不尽なことを言われている気がする。全てはフォード君次第だというのに。


「……少し、質問いいですか」

「な、なんですか?」


 俺たちに聞きたいことがあるようだ。心当たりがありすぎてどれか分からない。


「貴方は……なんですか?」


 なんですか、と来たか。精霊だと言うわけには行かない。上手く誤魔化そう。


「俺は……魔物です」

「魔物、ですか?」

「はい。めっちゃ賢い魔物です」


 全然上手くない。警戒されてもおかしくないが、いけるか…?


「そうですか」


 いけた!?


「そちらの二人が眼に宿しているのは、魔眼ですか?」

「へー、魔眼の色とか知ってるんだ。詳しいねー」

「基礎知識でしょう……?」

「魔法使い界隈では、そうだねー」


 カルディアの奴、やけに煽るな。何か視たのだろうか。


「……透視と業火は、ゴッデスが所有しているはず。何故こんなところにいるんですか」

「え? あー……家出?」

「……本当に?」

「うん、本当」


 苦しい。苦しいぞカルディア。ママさんの顔を直視できない。


「……そうですか」


 いけた!?


「あれ、意外と興味ないんだね。魔法詳しいんでしょ? もっと思うことないの?」

「ないです。興味もない。早く家に帰りなさい」

「辛辣だねー……」

「……そこのふくよかな男」

「はははははいっす」


 コラブルめっちゃ震えてる……。


「貴方、昨日会いましたね」

「はははいっす」


 なにぃ?


「暇な人間を探してるそうですが、何故ですか」

「そそそれは………強い人を探してるっす」

「探してどうするんですか」

「えええっと……」


 まずい、思った以上に踏み込んでくる。ここは上手く誤魔化さないと……!


「あの、俺が!」

「……化け物が?」

「……俺が、強くなりたいなー、って」

「何故ですか」


 怒涛の質問攻め。なんなんだ?


「憧れ、的な?」

「……そうですか」


 いけた!? 何故こんな適当な誤魔化しが通じるんだ……。


「あの、何か気になることでもあるんですか? 質問の内容が変というかなんというか……」

「いえ、特には」

「嘘だぁ」

「言っておきますが、貴方たちに興味はありません。私たちはこれで失礼します」


 そう言うとフォード君のお母さんは、フォード君の手を取って歩き出した。


「二度と、息子の前に現れないでください」


 そう吐き捨てた後、彼女がこちらを振り向くことはなかった。

 フォード君は、ずっと俺のことを見ていた。

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