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COAST MAN  作者: サクヤダ
オリジン
4/15

逃走開始

「俺は殺人犯だ! お前らは逃げろ!! 俺は……能力をコントロール出来ない以上お前らとは一緒に居られない。お前らを殺したくない……俺は……救急車を呼んで逃げる」



 慶太は瞬の顔を見て瞬の覚悟を読み取り、諦めた様子で自分の頭をグシャグシャと掻いて、瞬に強く喝を入れた。



「お前の言いたい事は分かった。ただ、俺の言う事も聞け、絶対に捕まるな。俺はお前を見捨てない。絶対に助けるから、それまでは絶対に捕まるな」



 友美も瞬の顔を見た際に覚悟を読み取っており、慶太の言葉を聞いて立ち上がって慶太と共に声を掛ける。



「慶太……瞬! 私も同じ! 絶対助けるから! 見捨てない!」



 2人の言葉を聞いた瞬は少し安堵した表情を見せる。しかし、すぐに険しい表情に戻り、2人にこう言った。



「お前らが居た痕跡は全部消す。だから、安心しろ。俺も捕まらない。でも、絶対に無理はしないでほしい。もしもの時は俺を見捨てろ。早く行け」



 慶太と友美は瞬の言葉を聞き、「絶対に見捨てない!」と言って車の元に走っていった。

 瞬は2人が車で去るのを遠くから見送り1人になる。そして、自分の手と殺してしまった2人を交互にを見ていた。

 一人になり、改めて考える。



「(俺は本当に能力者だったのか……。人を2人も殺してしまった……慶太と友美にはもう会えないかもしれないな、……玲奈にも……もうずっと1人かもしれないな)」



 脳内をあらゆる考えが駆け巡るが、瞬は改めて覚悟を決めた。2人が去ってから約10分程経ちスマホを取り出し完全に手遅れだが救急車を呼んだ。



「海岸に男性2人が倒れています。早く来てください」



 そして、その場を去った。



――――1週間後――――



 瞬と別れてから一週間、慶太と友美はどうやって瞬を助けるか話し合った。しかし、2人は現実的で成功しそうな案が出ず、頼れそうな知り合いも居なかった。そこで、ある人に協力してもらう為に動き始めた。

 そして慶太は自分の部屋であるニュースを見ていた。



「1週間前に海岸で発見された男性2名の遺体に関して、警察は水難事故ではなく、能力者による殺人の可能性が高いとの見解を示し、能力者対策本部が捜査を開始したと発表しました」



 あれから一週間たってあの事件が報道されていた。しかも、能力者が関わっている可能性まで示唆されており、能力者に関する事件に詳しいコメンテーターまで出演していた。そして、アナウンサーは今回の事件についてコメンテーターに質問した。



「なぜ、水難事故から能力者による殺人事件に切り替わったんでしょうか?」


「はい、警察の発表によりますと、死因は窒息死なのですが衣服、または身体が2名とも少ししか濡れていなかったとの事です。これで、恐らく水難事故の線が消えたんだと思います。そして、首を絞められた後も袋を被せられた痕跡も全く無いんです。最後に発見し、通報した男性は救急車が到着した際にはもう居なかった、という事ですね」


「では、その通報した男性が今とても重要な人物になっている訳ですね」


「はい、もしかしたら、その男性が能力で“殺してしまった”のかもしれないですね」



 警察は慶太達が思っているよりも何倍も早く捜査が進んでいた。慶太は時間の問題かと焦り始めていた。テレビのリモコンを取り、電源を切る。そして、ソファーで背もたれにもたれ掛かって頭を抱えながら呟く。



「ニュースは情報が“遅れてる”。実際はもう……すぐそこまで来てるかもしれない」



 その頃、友美は瞬が通っていた大学の校門である人を待っていた。その大学は生徒が多く校門を出入りする人がかなり多かった為、必死に目を凝らして探している。そして、ある人を見つけた。



「あ、あの人かな? あの! すみません! 玲奈さんですか?」



 その人は瞬の彼女である玲奈だった

 実は慶太と友美は玲奈の力を借りようとしていた。また、瞬の彼女である以上連絡が取れていないので心配で堪らないだろうという同情もあった。慶太は以前SNSを通しての玲奈の顔が写った画像を瞬から送られてきていた為を知っていたのだ。それを友美に送信し、探してもらっていた。



「あ……はい。玲奈ですけど誰ですか?」


「私は瞬の幼馴染の友美って言います。瞬の事で話があるので一緒に来て欲しいんですけど大丈夫ですか?」


「瞬くん!? 瞬くんの事何か知ってるんですか!? 教えて下さい!!」



 玲奈は人目をはばからず、大声で泣きながら言った。友美はあわあわと周りを見て焦り、急いで玲奈をなだめた。その後、友美と玲奈は慶太の家に行き、あの時の事を話した。

 友美と慶太が襲われ、瞬が助け出してくれた事。しかし、瞬は能力者で襲って来た2人組の男を殺してしまった事、そして、警察が殺人事件として捜査を始め、能力者対策本部も動き出した事を。

 1週間の出来事を聞いた玲奈は案の定取り乱す。



「瞬くんが能力者……人を殺した……意味が分からないよ!」


「玲奈さん、俺もその気持ちは分かります。でも、今1番意味が分からないのは瞬です。恐らく自分の能力をまだ受け入れられてないですし、今も1人です」



すると、俯いていた友美が顔を上げてあの時の瞬と金髪男達の会話を思い出した。その事を何か知っているかもしれないと思い、玲奈に話を切り出す。



「あの、玲奈さん。あの時、瞬と襲って来た2人組が1度会った事があるような会話をしていたのですが、何か心当たりはありますか?」



 質問を聞いた玲奈は俯きながら考え込む。

 そして、何かを思い出した様に顔を上げて、友美に質問を返す。



「あの、その2人組って長髪のチャラい感じの人と金髪のホストみたいな人でしたか?」



 それを聞いた友美は「そうです! そうです!」と特徴がかなり合っていた為、驚きながら同じ言葉を2回繰り返す。答えを聞いた玲奈は驚いた様子でまた俯く。十秒程経ち、顔を上げて話し出す。



「多分、その人達には私も会ってます。ちょうどその事件が起こった日です。大学で瞬くんと歩いている時にその2人組に絡まれたんです。……その時は瞬くんが私を守ってくれたんですけど……」



 慶太は玲奈の言葉を聞き、怒りの表情を見せながら言葉を吐く。



「結局はあの2人の自業自得じゃねえか。性欲しかない糞野郎共のせいで瞬の人生がくるうとか、マジでありえねぇ。絶対瞬を助け出してやる」



 その言葉から約1分程の沈黙が続く。その沈黙を破ったのは玲奈だ。



「どうやって瞬くんを助けるんですか? 何かアテがあるんですか?」



 慶太と友美は顔を見合わせる。お互いに新しい情報やいい案が無いことを確認すると少し落ち込んだ様子を見せる。そして、友美が重苦しい空気の中、口を開く。



「実際私達もどうしたらいいか分かりません、玲奈さんは何かないですか?」


「私もアテはないです。瞬くんと連絡は取れないんですか?」


「時々公衆電話から連絡が入ります、ただ、スマホは追跡される可能性があるので使えません。今はここから車で1時間程掛かる所のネットカフェに泊まってるそうです」


「なんでですか? 瞬くんの顔バレてないですよね? 隠れる必要あるんですか?」



 友美は玲奈の質問に言葉を詰まらせる。すると、玲奈と友美の会話を聞いていた慶太が口を挟む。



「実は、何故か対策本部の奴らがもう瞬の家を立ち入り禁止にして捜査してるらしいんです」


「え!? どういう事ですか!?」


「俺達も分からないです。ただ、もしかしたらですけど、能力者対策本部にも能力者が居る可能性があります。そうでもなければ、一般人には公開されていない最新鋭の機械かなんかが投入されてるかです」



 慶太の言葉をキッカケにこの日何度目かの沈黙が訪れる。正直、お手上げ状態だった。

 その時、沈黙を破るピンチが3人を襲う。



 ピンポーンと慶太の部屋のチャイムがなる。慶太の部屋にはこの3人以外訪問してくる人は居ないはず。宗教の勧誘か集金かと思ったその時、玄関から声が聞こえた。



「警察の者です。開けて頂けませんか?」





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