COAST MAN
漁港で起きた事件から数日後、澤口と藤田と警察は穏やかな潮風に吹かれながら漁港で捜査していた。そこには、瞬の衣服や持ち物があり、藤田のサイコメトリーでどこに逃走したか手掛かりがないか探していた。
「おい、これに触って見てみろ」
澤口の命令で藤田は瞬の衣服に触れる。瞬が漁港で戦闘を始める前、他の誰かと居るのが見えた。しかし、まだハッキリと見えていない為、澤口には言わなかった。情報が足りないと思った藤田は許可を求める。
「もっと情報が入ります。容疑者が現れた方向に行って捜査しても宜しいですか?」
「あぁ、良いだろう。俺も一緒に行く」
2人はサイコメトリーで瞬の足取りを逆に辿り、玲奈と瞬達が隠れていた倉庫の近くに着いた。
「この辺を調べて見ます」
藤田はそう言ってあらゆる場所に触れ、澤口は物的証拠を探す。藤田は少しずつ倉庫の中へと入って過去を見ていく。そして、藤田はこの場に瞬の他に慶太と友美、玲奈が居たことを知る。さらに、この倉庫に隠れ、玲奈と瞬が抱擁とキスをした事も知る。
藤田は玲奈と慶太、友美が3人で逃げた事、その場所で起きた事を見る事が出来た。
「どうだ? 何か見えたか?」
「……いえ、容疑者はここに来てますが、そのまま引き返してます」
「つまり、ここまで来て俺達と戦う覚悟を決めたって事か」
「その可能性が高いかと思います」
「そうか、戻るぞ」
藤田は見た事を言わなかった。瞬の過去を見た藤田は心の中にある思いを抑えられなかった。それは誰にも言う事が出来ない思いがあったからだ。
その後、捜査は行き詰まり、慶太、友美、玲奈があの場に居て、逃走を手伝っていた事はバレる事はなかった。捜査の優先順位が下がり、瞬は能力で海に紛れ、国外に逃走した可能性もあると判断され、国際指名手配となった。
――――半年後――――
とある場所の地下深くにある部屋である男がテレビを見ていた。その男はフードを被り、特殊な繊維で出来たロングコートの様なものを着ていた。
「昨日、観光に来ていた男性2人が足を滑らせ海に落下するという事故がありました。しかし、落下した男性を“水が包み込み”陸上に戻され、ケガもなく無事だったとの事です。この“水が包み込む”という事から先月に初めて確認された“海岸の男・コーストマン”の仕業ではないかと言われています。」
「コーストマンか、会いに行ってみようかな」
そう呟くと男は部屋から一瞬で消え、ある島の砂浜に現れる。そして、一通り周りを見渡すと、海の方を向き、手を広げて叫ぶ。
「おい! 俺はお前の敵じゃない! 姿を現してくれ! コーストマン!!」
すると、フードの男の目の前の海水が浮き上がり、人型になる。液体の状態で顔を明かさずにフードの男に話し掛ける。
「あなたは誰ですか?」
「俺はボスって呼ばれてる! 俺達は無能力者と共存し、繁栄しなければならない。その為に仲間を集めているんだ。俺と一緒に来て、自分の世界を広げてみないか?」
「話を聞いてみたいです」
「そうか。名前は? なんで、こんな所に住んでる?」
「僕は黒田 瞬です。事情があって……僕は海と共に生きています」