刺客
慶太達3人は息を切らし、「ゼェ…ゼェ…」と肩を揺らしながら膝に手をつく。瞬は大きく目を見開き、我が目を疑う。
「なんでお前らが!? どうやって!?」
3人の姿を見ると警戒心が解かれ、身体が液状から元に戻る。Tシャツは警察に取られた為、上半身が裸の状態だった。
すると、慶太と友美が無事に瞬に会えた安堵から言葉を漏らす
「めちゃくちゃ大変だったんだぞ! 俺マジで死ぬかと思った!」
「私も本当に死ぬかと思った! 流れ弾飛んでくるかと思って大変だったんだからね!」
慶太達は銃声が聞こえた時、警察の視線が民宿に集まったのを見て移動していたのだ。その後も瞬が飛び出して警察に取り囲まれていた時に、警察の視線が瞬に向いていたのを見て移動し、瞬の後を追い掛けていた。
その際に特殊部隊が発砲していた為、流れ弾が当たるのではないかと思いつつ走り抜けていた。
そして、玲奈が瞬の元に走り出す。
「瞬くん!!」
そのまま、勢い良く瞬に抱き着いて号泣する。
「ずっと心配だったんだよ!!」
瞬は胸に飛び込んで来た玲奈を強く抱き締めて涙を流す。そして、玲奈の耳元でこう言った。
「ごめんな……こんな事になるなんて……でも、会えて良かった!」
しばらく2人は抱き合った。その後、慶太の一言で身体を離す。
「おい! とりあえず早く逃げるぞ!」
我に返った2人は気まずそうに下を向き、顔を赤らめる。顔を振って気分を切り替えた瞬は慶太の方を向き、質問する。
「で、この後どうするか考えてるのか?」
「詳しくは決まってない。でも、俺の車まで逃げられたら何とかなると思う!」
「でも、アイツらかなりの大人数だぞ」
その場が少し沈黙すると、友美が口を挟み、瞬に案を出す。
「瞬の能力で何とかならないかな?」
「うーん、あまり期待するな、俺もまだ能力を使いこなせてない。とりあえず、逃げながら考えよう!」
意見が一致し、瞬が走り出そうとした時、慶太が瞬に強く言葉を掛けた。
「瞬!! 俺達は瞬の為なら絶対諦めない! だから、お前も諦めるな!」
少し驚くが、それを聞いた瞬はまた泣きそうになりながら力強く頷いた。そして、慶太達は瞬を含めた4人で移動を開始した。
移動中、友美が気になっていた事を瞬に聞く。
「ねぇ、さっき撃たれてたけど当たらなかったの?」
「当たったぞ。でも、その時は全身が液体化しててダメージが無かった」
慶太が目を光らせながら反応し、同様に気になっていた事を聞く。
「お前最強だな! てか、なんで上半身裸なんだ?」
「液体化の状態で服引っ張られたんだ、そしたら服がすり抜けて脱げた。俺にもよく分からん」
玲奈は会話を聞いていただけだが、ある事に気付き、再び顔を赤らめていた。
「(さっきは気付かなかったけど、なにげに瞬の裸初めて見た……)」
その後は追手の事もある為、逃げる事に専念し、周りや死角に注意を払いなが慎重に進んでいった。漁港にはコンテナや建物がかなり多い為、順調に警察の追っ手を撒いて逃げる事が出来ていた。
しかし、4人がそう思ったのは束の間だけだった。それは突然の出来事だった。慶太の後ろで電気がバチバチと流れる様な音が鳴り、一番後ろを走っていた慶太が倒れた。
「ゔゔっ!!?」
突然の電気の音と慶太の声に驚嘆する3人は後ろを振り返る。
「慶太!?」
そこには、倒れる慶太と灰色のツナギを着ている女性が立っていた。その女性はスタンガンを持っており、肩ほどまであるボサボサの髪を風が揺らしている。目は瞬達を睨んでおり、この世の物ではないような目をしていた。しかし、それとは裏腹に手元は震えており、何かの迷いも感じ取れた。