新参エルフはこの世界の神を呪う
私はエルフ。
私の居る場所には、他にもエルフが10ほど。
その中で私は1番新参者だ。
皆、口を揃えて『お前が1番綺麗だ』と言う。
私自身もそう思う。
自惚れではなく、客観的に見てもそうだろう。
私を見た全ての者が、綺麗だ、美しいと言ってくれる。
私の居る場所に1番長く居る長老は見るからにボロボロになっている。
最近はよく『もうガタガタだ。そろそろお役御免になるかもしれないな。』と口にする。
私達エルフは、それぞれ主が居る。
日によってそれぞれの主が交代する事もあるが、主達は皆優しく、私達を労ってくれ、1日の終わりには私達への感謝と共に優しく身体を綺麗な水で流してくれる。
毎日、充分な食事を与えてくれて、身体に変調がないかと優しく、細かに見てくれている。
そんな主達の事を皆、信頼し何があっても良いと、身体を委ねる。
そんな生活に、感謝している。
いつまでも続くことはないが、それが出来るだけ長く続けはよいと思っている。
しかし私達には不満がある。
それは、この世界の神への不満だ。
主達の話では、ついこの間もどこか遠く離れた場所で同胞が、死出の旅へと立ったそうだ。
同胞は身を挺して主の命を守ったそうだが、残された主の人生はめちゃくちゃになったという。
死よりも辛い現実を突きつけられ、沢山の人に責められ続け、廃人のようになったと聞く。
主達はその原因に気付かないらしいが、それはこの世界の神のせいだと私達は知っている。
その界隈では一般的だというが、巻き込まれる私達と主達はたまったもんじゃない。
死んで転生するなら、自己完結してくれ。
自然死でいいじゃないか。
なぜ、私達と主達を巻き込む?
なぜ、主達の意識を奪ったり、私達の身体の自由を奪い、転生させる人間の命の火を消す?
私達は処分され、主達は『人殺し』と罵られ、主達の1番上の主は多額の慰謝料を払い、家族や住む場所を失う。
1人転生させる為に、沢山の心優しい人間が路頭に迷う。
それを、神は容認している。
そんな手法を、神は選ぶ。
『異世界ホイホイ』
---私達はそんな呼ばれ方をしたいわけじゃない。