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第64話 騒乱の終結

 くそ……。

 くそくそくそくそくそくそがあああああああああああああああああああああああああああ!!!!


 この俺がぁ!! 魔王たるこの俺がぁ!!!

 二度も、人間などに、勇者などに敗れるなどぉぉぉぉぉ!!!!! 

 この屈辱、忘れん!!! 忘れはせんぞ!!! 

 次こそはあの女を!!! 八つ裂きに!!! 消し炭に!!!!! あぁぁぁあああああ、いかなる方法をもってしても葬り去ってくれる!!!!!


 ……だが、そのためには、新しい身体を探さねばならん!

 ブラックドラゴンよりも強い身体か…………くそ、すぐには思い至らんな。

 まずは、適当な身体を探すとしよう。力を蓄え、より強い身体、より強い力を手に入れる!!


 そして必ずあの女を、この俺に歯向かったことを悔やませ、絶望の淵へと叩き落としてくれる!!!

 あの女と共にいた者たちも同罪だ!!! ただ一人とて許すものか!!!!

 絶対に殺す!! 殺して殺して殺し尽くしてくれる!!!! 奴らに生まれてきたことを後悔させて……




 ◇ ◇ ◇




「長、よろしいのですか? 奴を放っておいて」


「同族を殺し、意のままに操り、さらには幼子を略取し理の外れた存在へと変貌させたのだ。到底許せはせんだろう。

 ……だが、死んでしまった者はどうにもできん」


「確かに奴は、勇者に首をはねられました。死んだのでしょう。

 しかし、奴は精神体となって逃げることができるのでは? それによって、同胞の身体を奪ったのではないですか?」


「それも含めて、終わったということよ」


「……では、奴はもう?」


「そうだ。すでに、終わったことだ。

 もうここに用はない。引き上げるぞ」


「は」


 人化を解いたレッドドラゴンが飛び立つ。

 

「……あれが、勇者。そして、魔を斬り伏せる者か」


 老人は顔を向けたまま思案し、やがて人化を解いてブラックドラゴンの姿となり飛び去っていった。




 ◇ ◇ ◇




 手ごたえあったような気がするけど、どうだろな?

 たぶん斬ったとは思うんだが、もしも失敗してたらしょうがない。魔王の割には小物っぽいところがあったし、どうせ逆恨み節全開で向こうからやってくるだろう。そのときまでに返り討ちにできるくらいに強くなっておけばいいか。


「よっと」


 俺は空へ投擲した剣をキャッチして鞘に収めた。


「どうしたの、ロイ?

 剣なんて投げて」


「後顧の憂いを断っておこうと思ってな。

 上手くいけば面倒ごとが減るかもしれないぞ」


「ふぅん? まぁいいわ。あたしたちも早く行くよ!

 とっととこの馬鹿な戦いを終わらせないとね!!」


 そんな簡単に終わらせられるか? って思ったけど、そういやなんでか戦場にハイデルベルグ王いるんだっけ。

 帝国軍も王国軍も魔王たちにやられた被害は深刻だった。

 両軍とも動揺が激しそうだし、ゾギマスも魔王にぶっ倒されてたし。今なら混乱に乗じた勢いで、なんとかなるかも?


 そしてそのとおり、ハイデルベルグ王国とゼギレム帝国の戦いはあっさりと終結した。

 ゾギマスは魔王によって瀕死の重傷となっており、戦場での最高指揮官を失った帝国指揮本部は動くべき指針を失っていた。

 そこへ、王国の頂点たるハイデルベルグ王が現れたのだ。

 居合わせた帝国の将軍は度肝を抜かれ、ハイデルベルグ王の手腕のもと、早々に戦いは終わりを告げたのだった。


 さらにハイデルベルグ王は、数十名の部下を連れ帝都へ向かい、なし崩し的に皇帝と会談を果たした。

 電撃戦のようなハイデルベルグ王の動きに帝都側の貴族連中は泡を吹いたらしいが、皇帝だけは堂々たる態度をしていたとのことだ。

 王と皇帝の両首脳が会談した結果、本当の意味で戦争は終結となった。


 そしてゾギマスは重傷から一命を取り留めたものの、この戦争の責任を問われる形となり、極刑が課されることとなった。



 と、そんなことがあったらしいが、俺たちはとっとと王都へと戻ってきていた。

 国同士の話し合いなんざに巻き込まれても面倒なだけだ。それよりも、はよ快適なところで休みたいと満場一致で結論が下されたのだ。

 そんなわけで、俺たちは王国軍と共に王都ミレハイムへ帰還した。

 王都の城下町は、すでに戦争終結の知らせが届いていたらしくお祭り騒ぎの様相となっていた。

 出立したときはそれほど悲観的な感じはしなかったが、今考えるとやはりどこかしら影が差していたように思える。軍同士の戦いなら直接的には民にとって関係ないが、やはり気分が沈んでくる話なのだろう。

 

 ハイデルベルグ王一行も、すでに皇帝との会談を済ませて帝都を出発しており、数日で王都に戻ってきた。

 そしてその夜に、王城では戦争終結のパーティが開かれることとなったのだった。

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