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第7話 いざ、ハイデルベルグ王国へ!

 ザザ村を出て、数時間後。

 陽は落ちて、俺とモニカは野営の準備をすすめていた。

 といっても、大した準備はない。

 軽く薪を集めて、周囲に魔物がいないか索敵するくらいだ。


 異常がないことを確認して、薪に火をつける。

 モニカと並んで火にあたっていると、モニカが思い出したかのようにクスリと笑った。


「……いい娘と仲良くなったね」


「なんだよ、藪から棒に」


「あれだけ煽れば何か反応するかなーとは思ったけどさ。

 てっきりあたしは、あたしたちのどっちかに攻撃的になるかと思ったんだけどな。

 まさかお弁当作ってくるとは思わなかったよ」


「お前ね。いたいけな少女をからかうんじゃないよ」


「うぅん? いたいけな少女の気持ちを弄んだのは、どなたかしらー?」


「馬鹿。クーチェはそんなんじゃねぇよ。

 身近にいるおっさんに、なんとなく親近感持っただけだろ」


「その視点もアリだとは思うけど、そういうのって父親がいない娘がかかりやすい病なのよね。

 あの娘、そーなの?」


「…………父親は、普通にいるな」


「じゃあ、不治の病かもねー」


 軽い口調で、モニカはクーチェが持たせてくれたパンにかぶりついた。


 クーチェが俺に気がある?

 いやいやないだろ。ないない。成人してるとはいえ、まだ15じゃねぇか。ないだろー。

 …………ないだろうけど、あるというならアリですけどね? 僕ぁ心も守備範囲も広いっすから!


 などとアホな考えを繰り返しながら、俺もモニカと同じようにパンにかぶりつく。んまい。


「おいし。旅先には染みいる美味しさだねー」

 

「だな」


「ところで、話は変わるんだけどさ。

 ロイって年下好き?」


「変わってねぇだろ、それ!?」


「だぁーってぇ、あの娘の反応がさー。

 ロイも、まんざらでもなさそうだったじゃん? 戻ってくるとかなんとか言ってたし。

 それにロイの過去話なんて、あたしだってされた覚えないんだけど?」


「お前の場合、ユエルからさんざん聞いてるだろ。同じ話してどーすんだよ」


「それはそうだけどさ。乙女心は複雑なのよ」


「おい84歳」


「はぁい、24歳でっす♪」


 24でも乙女心って言うの、きわどくない?


「で、あの娘にはどうして話したの?」


「………………思ってた以上に、あいつが子どもじゃなかったからだろ」


「ふぅん」


 モニカは関心があるような、ないような、どちらとも取れる相槌をした。


 クーチェに話した理由ねぇ。

 なんとなく、としか言いようがねぇけど。


 けど。


 ……もしも、あんなことがなけりゃ、ひょっとしたらあいつは今ごろ…………………………………………………………いや。

 それこそ、つまんねぇ話か。




 ◇ ◇ ◇




 ザザ村を出立して3日が過ぎた。

 旅は概ね順調で、運良く乗合馬車で移動することもできた。

 俺たちは、もう半日も歩けばハイデルベルグ王国の首都に着く、というところまで来ていた。

 のだが、何やら遠くの方に何人か集まっているのが見えた。


 近くまで行くと、簡素な防具を装備した兵士が呼び止めてきた。


「すまないが、この先は進めない。

 王都へ行くのであれば、一度戻って、南東方面へ迂回して行ってくれ」


「ええー!? そっちからだと、かなり遠回りになるよ!? 3日はかかるんじゃないの!?」


 モニカが不満を漏らすと、兵士は困ったように苦笑した。

 おそらく、すでに何度もこのやり取りはしたんだろうな。

 少し離れた場所でも、旅人と思わしき連中が兵士に文句言ってるようだし。


「何人か王国の兵士がいるみたいですけど、何かあったんですか?」


 俺が問いかけると、兵士は渋い顔をした。


「この先の街道にグリーンドラゴンがいついてしまってな。

 近くを通りかかった商人の馬車が、護衛ごと襲われて全員食われてしまったらしい。

 一報を受けて、我々が出てきたわけだが…………未だ討伐はできず、仕方なく街道を封鎖しているのだ。

 どうしても行くのであれば止めはしないが、たった3日のために命を張ることもあるまい?」


 俺とモニカは顔を見合わせて、


「じゃあ、行くか」

 

「そうね。よかったー、橋が崩れて通れないとかじゃなくって!」


 今までどおりのペースで歩き始めた。

 は? と止まっていた兵士が、慌てた様子で回り込んでくる。


「ちょ、ちょっと待て!? あんたたちは俺の話を聞いていなかったのか!?

 この先にはグリーンドラゴンがいるんだぞ!?

 その格好からして、あんたたちは冒険者なんだろうが、馬に乗っていようが簡単に逃げられる相手じゃないんだぞ!?

 それを徒歩で行くなんて、死にに行くようなもんだ!!」


「大丈夫ですよ。

 レッドドラゴンやブラックドラゴンなら話は別だけど、グリーンドラゴンならA級冒険者でも倒せるじゃないですか」 


「馬鹿な!? まさか、あんた達、たった二人で挑むってのか!?

 A級冒険者がグリーンドラゴンを倒すって言ったって、いくつかのパーティが束になってかかればどうにかってところだろ!?

 命知らずにもほどがあるぞ!!!」


「大丈夫、だいじょーぶー。

 私たちー、こう見えて勇者と一緒に旅してたんだからー」


「…………」


 モニカの言葉に、兵士は呆れたように大きなため息をついた。


「……わかった。ならば、もう何も言わん。

 向こうにいる本隊に、迷惑だけはかけないでくれよ……」




 ◇ ◇ ◇




 本隊(と言っても40人程度の小隊だったが)と、もう一度似たようなやり取りをしてから、俺とモニカは街道を進み、ようやくグリーンドラゴンと対峙していた。


「グルルルルッルルアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


「おーおー、本当にグリーンドラゴンじゃねぇか。

 魔王領か霊山くらいにしかいないはずなのに、なーんでこんなところにいるんだろうなぁ?」


「迷子にでもなっちゃったんじゃない?」


 ぱっと見たところ、10メートル級で普通に成体だろうし、迷ったりするほどアホじゃないだろ。

 ドラゴンによっては人語を解したり、人よりもよっぽど高度な魔法知識を持ってる者もいるしな。


「おーい! 悪いけどさー、そこから移動してもらえねーかー?

 今どっか行けば、お前のことは見なかったことにするからさー!!」


 俺の呼びかけに、グリーンドラゴンは鼻で嗤った。


 ……言葉はわかるけど、話せはしないってところか?

 それとも、自分より下級の生き物だと思っている人間と話す言葉はないってことなのかね。


 どちらにせよ、説得は失敗したらしい。

 グリーンドラゴンはこちらに向けて大口を開けた。

 ブレスを放とうとしているんだろう。


 モニカが、のんびりした口調で聞いてきた。


「ドラゴンの中では最弱とはいえ、一応相手はドラゴン。

 支援魔法かけよっか?」


「余計な心配だな」


 軽く答えて、俺は抜剣して走り出す。

 グリーンドラゴンは俺に狙いを定めて炎のブレスを放ってきた。

 灼熱の炎を、俺は大きく横に飛んで躱すが、ドラゴンはブレスを吐きながら顔を動かし再度俺を狙う。


「ほっ!!」


 俺は大きく跳躍し、空中へと躍り出た。

 ジャンプするとは思っていなかったのか、ドラゴンは一瞬動きを止めてブレスがやむ。が、すぐにニタリと嗤って、再度ブレスを放ってきた。

 空中で自慢のブレスを躱されることはないと思っているのだろうが、それは油断というものだ。


風嵐絶華(ふうらんぜっか)ッ!!!」


 俺は剣で、ブレスを迫る端からたたっ斬り、かき消していく。

 俺の持つ漆黒の魔剣、レーヴェルスフィアは魔法だろうが霊体だろうが、問答無用で斬り捨てることができる。ドラゴンのブレスも例外ではない。


「……グルル?」


 目の前の光景が信じられないのか、ドラゴンは首を傾げるような動作をした。

 俺は跳躍した勢いのまま接近して、


「次は、もうちょっとおとなしく生きろよ」


 横一文字に剣を振りきり、グリーンドラゴンの首を飛ばした。

 絶命し、派手な音を立ててぶっ倒れるドラゴン。


 俺はドラゴンに近づいて、額にある一枚のウロコを剣で外した。


 この部分のウロコは、他の場所のと比べて質が段違いにいい。

 当然稀少だから、価値もあるし持っておいて損はない。

 できるなら、一匹まるまる持っていきたいけど、さすがに搬送方法を持たない状況ではどうしようもないしな。


 ウロコを懐に入れると、モニカがパチパチパチと拍手していた。


「よっ! さっすが剣聖、一級品の剣の腕ね。モニカ、惚れ直しちゃう♪」


「はいはい。あんがとさん」


 あ~あ~。

 どうせなら、襲われてる貴族の令嬢とか商人の女がいるとか、そういうナイスタイミングに居合わせればよかったのになぁ。

 観客がモニカだけとか、誰得ですかねぇ。

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