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第29話 VSレッドドラゴン 2

 ギィィィンっと、まるで金属同士がぶつかり合ったような音が響き、レッドドラゴンの目が見開かれる。

 

「馬鹿な……我が魔力による防護を、斬っただと……!?」


 俺の剣を受け止めたレッドドラゴンの腕からは血が流れ、地を濡らしていた。


「貴様、なんだその剣は!? 単なる魔剣ではあるまい!? 一体どこで手に入れた!?」


「さてね。ンなこと親切に教えてやる義理はないと思うが?」


「……人間がぁッ!!!」


 憎悪に歪んだレッドドラゴンが、凶悪な威力の拳を力任せに振り回してくる。

 直撃すれば骨が砕けるのは確実だ。あたりどころが悪けりゃそのまま遥か遠くへと旅立てそうだが、あいにく俺にその予定はない。


「オッサン、攻撃が雑だぜ?」


「ぬぅああ!?」


 炎を纏った大ぶりの拳をかいくぐり、ガラ空きの喉に突きを入れる。

 貫通とまではいかないが、切っ先がめり込み僅かにレッドドラゴンの身体を浮かせた。


「このぉッッ!!!」


 レッドドラゴンが剣を両手で掴み、身体を振って切っ先から逃れる。

 ただの人間や並みのモンスターがンなことすれば素早く剣を引いて指を両断してやるどころだが、さすがはレッドドラゴン、俺の力ではびくともしない。


「はっ!! 所詮は人間よ!! 優れた魔剣を持っていようと、我らが種には到底及ばん!!!」


「俺はそうは思わんけどね」


「馬鹿が!! 確かに貴様の魔剣は強力だが、もはやこの魔剣を我が放すことはありえん!!

 魔剣のない貴様なぞ、ただの……」


羅刹迅肘打らせつじんちゅうだ!!」


 ペラペラと御高説を述べていたようだが、聞く耳持たずに全身の体重を乗せた肘打ちを脇腹にお見舞いしてやる。

 ただの肘打ちとあなどるなかれ。一応これも剣が無い状態での技のひとつだ。練られた気を身体で直接ぶちかます分、剣よりもよっぽど衝撃が抜けていく。

 

 レッドドラゴンは、ごふっと息を吐いて身体をくの字に曲げた。


豹嵐塵芥掌ひょうらんじんかいしょう!!」


「んぐぅぅ!?」


 下がってきた顎に掌底をぶちかます。

 先ほど喉を剣で突いたときよりも、よっぽど苦しそうだ。

 フィニッシュに回し蹴りを側頭部にお見舞いしてやる。

 レッドドラゴンはボールのように吹き飛んで、ゴロゴロと地面を転がった。

 わぁ、泥だらけ。ばっちぃ。


「ただの、なんだって?」


 レッドドラゴンが放した剣を拾って、俺は手の中でクルクルと回してやる。


「そ、そなた、格闘術も出来たのか?」


 女の傍らに移動していたエッタが、驚いたように口を開けていた。


「いつも剣があるわけじゃないからな。

 護身用みたいなもんだが、剣を習ったとき、剣技の他にいくつか打撃技も教わったんだよ」


「護身用…………この威力でか?」


「格闘術は剣技から応用できたし、直接打撃を加える分、剣よりも力を乗せやすいからな。ただ、奴には見た目ほどダメージは入ってないぞ。

 所詮俺のは付け焼刃だし、相手が相手だしな」


 達人なら魔力防護も抜けて衝撃を与えるっていうし、レッドドラゴン相手でも直撃させれば骨折させたり内蔵にダメージ与えたりできるのかもしれないけどなぁ。

 極めてみたい気持ちもあるけど、そんなことやってるくらいなら俺は剣技鍛えた方がいいや。


「貴様……」

 

 レッドドラゴンがゆっくりと起き上がった。目は完全にすわっており、ただならぬ空気を感じさせる。

 右の掌を俺へと向けて何事かを小さく呟くと、掌が一瞬燃え上がり紅弾が発射された。


「うぉっと!?」


 顔面へと迫っていた紅弾を、顔を振ってすんでのところで躱すと後方で爆発音。視線を向けると、数メートル級の穴が空いていた。直撃したらかなりヤバげだ。

 と、断続的に紅弾が俺へと発射される。


「貴様は、殺す」


 次々とレッドドラゴンが紅弾を打ち続けてくる。絶え間ない遠距離攻撃ってのは剣士にとっては非常に面倒な戦闘方法だ。

 しかし、攻撃方法を切り替えったってことは、勝負どころになったってことだ。


「ちまちまやってんじゃねぇよ!! そろそろ本気でやってやるぜ、赤トカゲ野郎!!」


 降り注ぐ紅弾をステップで躱しながら、俺はレッドドラゴンへと接近していく。

 レッドドラゴンに僅かに焦りの表情が浮かぶが、それでもレッドドラゴンは紅弾を打ち続けてくる。

 距離が近くなり、紅弾を躱しきれずかすっていくこともあるが、直撃だけは避けてレッドドラゴンへ向かっていく。


「人間にしてはやるようだ。しかし……」


 至近距離で紅弾を躱した瞬間、レッドドラゴンの顔が愉悦に歪んだ。

 訝しむ間もなく、すぐさま新たな紅弾が俺へと迫る。今までとは明らかに異なる攻撃のタイミングに、俺の身体は反応しきれない。

 レッドドラゴンが右手だけでなく、左手からも紅弾をうってきたのだ。

 成すすべもなく俺の腹に紅弾が直撃し爆裂した。


「ロイ!?」


「我に勝てるはずもなし。人間にしてはよくやった」


「そりゃどうも」


 土埃が舞う中から跳躍した俺を見て、レッドドラゴンが驚愕する。


「き、貴様!? なぜ生きて……!?」


翔麓岩砕撃しょうれいがんさいげき!!」


 隙だらけのレッドドラゴンの頭上から、俺の最大威力の剣技を叩き込む。

 振り下ろした剣はレッドドラゴンの左手を容易に切断し、勢いのまま地を砕いて大穴をあけた。

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