24、死の権化
オーガのいなくなったフロアを、マギカと探索し、そして階段を見つけた。
この先に進めば、とうとう未踏の26階層だ。
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
ここまで予定通りに進んだからと言って、この先が油断ができるわけはない。
「……このフロアのオーガを倒したイリヤは、もういません。アレン、この先出るモンスターは、一体何なんですか? この階層よりもさらに多くのオーガが待ち構えている? それとも、もっと狂暴で凶悪なモンスターが? 教えてください」
真っすぐに俺を見つめて、マギカが問う。
怯えも不安もあるのだろうが、俺に対する信頼の方が勝っているようだ。
その瞳は、この先の階層の攻略を見据え、静かに燃えていた。本当にこいつはチョロい。
「そうだな。俺も実際に対峙をしたことはないんだが……知識としては知っている。攻略の前に、情報の共有は必要だろう」
マギカがうんうんと頷いたのを見て、俺は続けて言う。
「まず、26層にいるモンスターは……一体だけだ」
俺の言葉に、マギカは少し表情を緩めた。
「一体だけなら「何とかなるとでも思っているのか?」……!?」
彼女が言い終わらない内に、俺は言葉をかぶせた。
「そんなわけないだろ。ダンジョン攻略者の多くが、最下層のモンスターこそが、最も手ごわかったという。……そう、何十体ものオーガよりも、そのモンスター一体のことを、だ」
また聞きの話ではあるのだが、それでも油断するマギカに、俺は脅しをかける様に言った。
「あれほどのオーガよりもなお……? 教えてください、アレン。そのモンスターの名前を」
俺は彼女をまっすぐに見据えて、答える。
「そのモンスターの名は――」
☆
異形
そう呼ぶにふさわしい姿をした怪物が今、26階層へとたどり着いた俺とマギカの前に立ちはだかっていた。
オーガすら超える強靭な肉体。
鋼のような筋肉に覆われた四肢。
涎を零す口元からは、鋭い牙がのぞいている。
何よりも異様なのは、まるで牛のようなその頭。
牛頭人身の巨体が、異様な雰囲気を増していた。
手にした武器は、俺の身の丈を優に超える大きさの斧だ。
圧倒的な存在感。
そして――。
ゴオォォォォォォォォオオオオオオオオオッツ!!!
威嚇の雄叫び。
全身が震える。
否応なく思い知らされる。
生命としての格の違いを。
そして、自らに近寄ってくる――死神の足音を。
死に戻りに慣れ、いつの間にか薄れていたそれを、俺ははっきりと思い出す。
根源的な感情――死への恐怖。
俺は今一度、対峙する死の権化を睨みつけて、呟いた。
これが――
「――迷宮の王……っ!」




