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1、死に戻り

 ダンジョンには、死がありふれている。


 冒険者に死をもたらす獰猛なモンスター。

 至るところに仕掛けられた致死のトラップ。

 襲い掛かる困難、募る疲労は階を進むごとに蓄積されていく。


 そのどれもが、一攫千金を目指してダンジョン攻略を志し、深く潜りゆく冒険者の心身を蝕む。


 そんなダンジョンの中で、今にも膝を屈しようとする冒険者がいた。

 十代後半の青年だ。

 その表情には苦痛と苦悶が張り付いており、一見して若者だとは分からないが。


「ちくしょう、最低だぜ……っ!」


 悔しそうに歯噛みをしながらいう青年。

 彼の周囲には、鬼のような形相をした筋肉の鎧に覆われた強力なモンスター、オーガがいた。


「くそっ、くそっ。糞ったれ!」


 手にしたダガーナイフを振る。


 その鋭い切っ先は、一体のオーガの心臓に深々と突き刺ささり、命を奪う。

 

 ――が、それだけだった。


 この多勢を押し切るには到底及ばない。


 青年の研ぎ澄まされた聴覚が、聞こえないはずの足音を感じ取っていた。

 ――それは、ゆっくりと背後に忍び寄る、死神の足音だった。


「ちっくしょー!」


 ぶるり、と大きく身震いをする青年。

 それは、死神の握る大鎌の気配を感じたためか。

 単純に血を失い過ぎたためか。

 その判別は、既に出来なかった。


 それでも懸命に抗い、生きることを諦めない青年。

 しかし、オーガは容赦をしない。

 疲れ、動きの鈍くなった青年に対していたぶるように攻撃を加え続け、やがて、身動き一つとれなくなったところに、一斉に攻撃を加え始める。


「ああ……またかよ、糞が」


 目前に迫る死の気配を前にしても、青年は動じない。


 ……そしてもちろん。

 ご都合主義的な助けが来ることもなく。


 ――ぐしゃ


 脳髄に響く音が聞こえ、青年の意識はなくなった。


 こうして。

 青年――ダンジョン冒険者アレンは、無慈悲な死を迎えたのだった。



「くっそおぉぉぉぉぉおお、また死んだああぁぁぁぁぁぁああぁ!!!」



 ……そして。

 ダンジョンで死んだ後、青年はいつも通りに朝の目覚めを迎えるのだった(笑)






 ――これは、世にも奇妙な「死に戻りダンジョン」の攻略する、鬼畜冒険者の英雄譚……なのかもしれない。


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更新再開!!主人公のイケメンを差し置いて、友人キャラの俺がモテまくる!?!
友人キャラの俺がモテまくるわけがないだろ?
ぜひ読んでください(*'ω'*)

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