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白い梟が舞う空に  作者: NESULU
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名も無き猛禽の物語2

 1年前 旧ロシア連邦 ベルベク空軍基地


 キィイイイイイイイイイン

 大量の航空機が並べられたエプロン地区に甲高いタービン音が響き渡る。

 ズラリと並んだ戦闘機のカラーリングは、薄い青に淡い灰色が入ったものも有れば、濃い青に水色、灰色の細かいピクセルが入ったものまで実に様々だ。機種も1つや2つではない。胴体と一体化した大型の主翼に双尾翼、二基のエアインテークの上に沿うようにスラリと延びた機首が、異様な威圧感を放つ制空戦闘機、Su-27ジュラーヴリク、それよりも一回り程小さな、MiG-29ラーストチェカ、様々だ。

 それぞれの翼の下で、整備兵達が昼間から酒を呑んでいる。とても他の空軍なら信じられない光景だと思う。だが、そんな彼らも私が側を通りかかった瞬間、笑顔が消えた。


«SIDE とある整備兵»

 ここ、クリミア半島、ベルベク空軍基地は黒海に面している。つまりサミィ。とてもじゃねぇが、アルコール入ってねぇと、やってらんねぇ。整備が大丈夫か、だ?ー変な心配は要らねぇ。アクロ前にウォッカ開けてるパイロット共だって居るんだぜ?しかもウォッカなんて高くて飲む機会そんなにねぇし。たかがビールだ。俺たちロシア人には大したこたねぇ。

 このクリミア半島には、かつてウクライナ人共も住んでいた。正確に言えば、かつてウクライナの一部だった時期があったんだが、少し前、俺達の過去の大統領がこの半島を併合、ロシア連邦の一部になった。ーだが、去年の事だ。ロシア連邦陸軍の参謀の一人がクーデターおっ始めやがった。どんなツテがあったかは知らねぇ。瞬く間にロシア軍全勢力の40パーセント掌握しちまった。それも精鋭部隊メインにな。その上、ウクライナ軍、アゼルバイジャン軍、グルジア(ジョージア)軍、国際世論では遠い東の果て、日本なんかも味方に付けたらしい。南クリール諸島と引き換えにな。

 このクーデターおっ始めた奴は、帝政時代の王族の生き残りらしい。「ロシア帝国」の復興を狙ってんだとよ。だから俺達は今、「ロシア帝国軍」と呼ばれている。ーまぁ、んなこたぁ、どーでも良い。待遇が良くなり、酒がうめぇ。なんの不満もねぇ。実に居心地が良い。それだけさ。ーさぁて、しばらくダベったら、ギア周りの点検でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?ー危ねぇ、危ねぇ・・・危うく欠礼するところだったぜ。この空を、どれだけ血に染めたかもわかんねえ、「吸血鬼」様がお戻りになられたようだ。


«SIDE 「吸血鬼」»


 私が側を通りかかった瞬間、彼らの笑顔が消え、立ち上がると同時に敬礼を向けてくる。ー別に、そんなの求めたわけでもないし、嬉しくもない。ただ、周囲が一斉に向けてくる視線と、その視線の中に、時折、恐怖や警戒心、私に対する畏れを込めた視線が混じってる。それが嫌い。

 ああ、いい加減言い忘れたかな。私の名はイーリス。イーリス・アリイェーヴァ空軍中尉。空の上では、「イルビス」とも呼ばれてる。

 多数の視線の中、ズラリと並べられた戦闘機の列の一角を目指す。

 青いSu-27の列の端に、暗い灰色の機体が鎮座している。ー私の愛機だ。Su-27と、とてもよく似ている。戦闘機に詳しくないなら見分けは付かないと思う。でも全く別物と言って良い。Su-35SフランカーE。ステルス戦闘機以外なら最強と呼んで良いと思う。私にとって、手足であり、大切な友達・・・そう、信じてるよ。

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