ばれちゃった
ちょろっと戦闘シーン
「これは今日作っているのとは違い、中に刻んだ果物とジャムが入っています。更に、その上からマーブルで包んであります。」
香りがなくとも目に入れば祝福は発動するのか、幼児学習(現実逃避)
それぞれの小皿に1個ずつ載せる。
・・・載せたはずなんだけど、ユリのお皿以外からマーブルクラッカーが消えた。
「・・・ユリも食べるといいよ。」
ユリはなんて偉いのだろう、私感激。
ワンちゃんでさえ『待て』が出来るのに・・・、ユリもギリギリだったのか一瞬で消えた。
私もひとつ取り出し、食べてみる。
さくっとした歯触りは良い、処々果肉の食感がありそこがイマイチ。水分を多く含んでいる所為かぐしゅっと感じる。
混ぜるならやはりドライフルーツだな。
「・・・もうあげないよ?元々そんなにないし。」
3人してがっくりしている。
やっぱり祝福じゃなくて呪いだよね。理性かなり減っているよ。
お茶を飲み一息入れ、
「お祖父様、2人の契約の話ですか?」
ちなみに対外的な物も有り、『おじじ』でなく『お祖父様』と、呼び変えています。
ビエン?彼は家族の中に入っています、気持ち的に。
「うむ、それなのだがどうしたものかのう。ユリはともかくキリマじゃったか、ここには居るがレイルズ付きは納得いかないらしいからのう。」
「そうですね、守秘だけ契約して・・・「ちょっと待て グッ 待って下さい。」何かな?」
ユリに合図し、話を続けさせる。
「さっきも言ったけど、反省してる。今は納得しているから俺も契約する。」
「拒否します。」
間髪入れずぴしゃりと断る。
キリマはびっくりした顔をしているけど、他の二人は当然、といった顔だ。
「お祖父様、今夜にでもレコエ支店長と話せますか?流石にこれは説明頂かないと納得できません。」
ちょっと驚いた顔をしつつ、おじじは頷く。
「ふざけるなっ!」
叫ぶと同時にキリマが、私に向かって手を伸ばしてくる。
おじじ・ユリは咄嗟の事で反応できず座ったままだ。
可能性として予測していた私は、さっと椅子から飛び降り(5歳児には普通の椅子はまだ高い)
マーブルを伸ばすのに使っていた麺棒を掴み、キリマの鳩尾に突きを入れる。
体を丸めるキリマ、下がった顎に横薙ぎに一閃。
硬いものがぶつかり合う音がし、ドサリと崩れ落ちる。
おじじ・ユリ ポカーン
流石に日常の中での急な荒事に、ついてこられなかったかな?
「礼儀知らずって範囲超えましたね。ユリ、キリマって正式採用から1年以上経っているんだよね?」
一応確認。
「はい、私が記憶では見習いでも4年は居ました。基礎学校で礼儀作法は習っているはずなのですが・・・。」
「自分を庇護する訳じゃないけど、5歳児を襲う成人ってどうなの?」
「大問題ですね、大旦那様如何致しましょう。」
「流石にこれは見過ごせんな。手足を縛って、レコエを呼んで来てくれ。」
もぅ、なんでこうなるかな
どうして平和にマーブルクラッカー作れないのか
試作品第3号を枠ごと隅に置き蓋をする。
ゾネンの果実酒が入った鍋も、平らに伸ばしたマーブルも蓋だけしておく。
そしてそっと、麺棒を小脇に抱える。
さてさて、どうなることやら
行儀悪いけど立ったままお茶を飲み干していると、青褪めたレコエがユリを伴いやってきた。
「そこで止まってください、ユリもだよ。さて、どの様に話を聞いていらしたのですか?」
素直に止まり青褪めた顔そのままにキリマを見、おじじを見、私に顔を向ける。
「どうって、キリマが暴れてレイルズ君を襲ったと・・・。」
「それだけですか?」
「あとはレイルズ君が取り押さえたと、聞いたくらいでこちらにすぐ来たので・・・」
ん~、どうも納得できないんだよな~
引退したとは言え、まだまだ元気なおじじが頼んだ事なのにユリはともかく、キリマはこの仕事に回されるのはおかしいのだ。
「お祖父様、レコエ支店長にはどの様な人間を手配するように頼まれたのですか?」
「身元が確かで信用出来、秘密を守れる人間を頼んだ。」
言っていた通りですね、おじじを疑っているわけじゃない。
「キリマは該当しますか?・・・一応お聞かせ下さい。」
いや、わかってはいるのだけどね。
あぁ、時間がどんどん過ぎていく。テンション下がるわ~。
「身元はともかく、信用できんし秘密もどうだろうな。さっきの話だけでもかなり自分本位の人間だと思ったぞ、こやつは」
「との事ですが、どの様なつもりで彼を私に押し付けたのですか?対外的に解雇したかったと言うなら、朝の時点で可能でしたよね?お祖父様は時間が足りない・一日で仕事を覚えるなど言っておりませんでしたか?それともほかに人がいなかったのですか?或いは子供のお遊びに付ける人員がもったいないと感じたのですか?ボケ老人が孫バカでおバカな孫が言ったことを本気にしただけだとでも思いましたか?」
一気にまくし立てる、なんかもうムカムカして来た。
なんのつもりで私の邪魔をするのかはっきりして貰おう。
おじじの服を引っ張る。私は疲れたかの様に麺棒に寄りかかるように立つ。
「レコエ、答えろ。納得が出来るようにな。」
今日一日で培ったアイコンタクトで、ユリに少し移動するように合図する。
「他には回せる人間が居りませんでしたので・・・」
「ユリ?」
「そんな事はあるはずがありません。私と同い年の中にも該当する人はいます。」
「どれだけ失望させれば気が済むのだ・・・」
本当だよ、見苦しいってこの事だよ。
「いや、本人たちの希望もありましたので・・・」
「それも嘘です。私以外にも本家の役に立てるなら、子供のお守りでも喜んでする人はいます。」
おぉい、私遊んでたんじゃないのだけど。なにそんなつもりで来ていたの?
絶望した、幼児絶望。ZE・TU・BO・Uだよ なんか違う気がする それは置いといて
「素直に言ったほうがいいと思うけどな~。ネリーとシアーでしたよね、お父さん明日から無職で再就職も難しく、この街を出て行かなきゃならないなんて、可愛そうだな~。」
必殺!情落とし 「お母さんが泣いているぞー」ってやつです。
効き目はどうだ?
「いくら大旦那の言葉と言え、祝福も受けていない子供が商品開発など馬鹿げている。私だって売上を上げる為に商品開発は考えた、だけどそんなに簡単じゃなかった。商売は子供の遊びじゃないのだ。どうせ三男坊なんて外に出ていくだけだ、適当に遊ばせておけばいいんだっ」
効果は抜群だ!
「祝福なら受けているよ?」
三者三様に『え?』って、顔している。 あ、やばい、テンション下がって気が緩んでいた。
そーっと、後ろに下がりフェードアウトし ガシッ 頭掴まれた。
おじじを見上げる。にっこり笑って幼児スルースマイル発動っ。
通じませんでした。幼児無念&大失敗。
明日大神殿で行うのはあくまで儀式・儀礼的な祝福。
対して私が頂いている祝福はかなり希で、凄い事らしい。
本来なら国を挙げての大事になるのだけど、それぞれの祝福を頂いた理由次第で対応は変わるらしい。ケースバイケースですね、わかります。
おおっぴらにされると困る場合もあるものね
そして私の場合は、まだ大神殿にて証明されていないのでひとまず保留。
私の場合・・・、エクリックス様が天ぷら食べたいからとか・・・違った『パン』ですね。覚えていますよ?ホントダヨ?
国に囲われると、国の思惑に左右される可能性があるのでパス。
貴族とか面倒臭そうだもの
特に身近にいるのが、最悪に近いから不信感パない。
パンを広めるのに別にこの国でなければ駄目、という事もないので出国しても問題ない。
この国だと広めるのが楽なだけだもの。必要なら外国にも行きますよ?私は。
そしてもう一つ大事な事、能力です。
目的に沿った能力を持っていることが多い。
戦闘前提なら戦闘能力
農業・林業・漁業など知識系
物造りなら鍛冶・建築・船大工などなど様々。
私は物造り方面ですね。 調理は今までいないらしい。 あれ?パン職人は?
あと、戦闘でも知識系・物造りでも若い時代が長く、普通の人の倍は長く生きるらしい。
平均120年・最長180年。
5歳児には想像できません。
前世が何歳まで生きたのか記憶が消えているので覚えてないけど、前世分足しても足りないと思うの。
日本最年長だったとしても、無理だよね?
お読み頂き有難うございます。
キリマはレギュラーキャラの予定だったのにどうしてこうなった・・・。
とばっちりのレコエさん南無