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パンデミック~美味しいパンでお腹いっぱい~  作者: 礼生 治暁
第一章 マーブル、それは世界の主食
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続・感染拡大

前話:用意してもらった品に「ジャム2種各1壺」追加しました。

 「先程は申し訳ございませんでした。反省して、心を入れ替えましたので、ご指導宜しくお願いします!」

・・・私は黙ってユリに合図を送る。


つかつかとキリマの元へと歩み寄るユリ、その姿は明るい茶色の髪をシスターのベールのようなものでしまい込み、口を手ぬぐいで覆い、前掛けを身につけている。

顔で唯一出ているグリーンの目で睨まれ、キリマはもはや逃げ腰だ。

うん、多分私も逃げたくなる ってか逃げる。


 「ぐぼぉっ、ぐぇ」

問答無用の鳩尾へのボディーブロー。容赦ありません。沈み込むキリマ。

出会い頭にユリに殴られた傷の他にも、痣とか増えているのだけどあの後いろいろあったのかな。


一応、一言申しますが私は つまみ出せ とだけ指示したつもりです。

今はともかく元日本人ですから、暴力行為とは無縁でしたので…。


またもやガミガミやり始めたユリを止めるべく、私は踏み台から下り二人の元へと向かう。

もちろん私もユリ同様、髪の毛と口元を隠した状態だ。

ただ幼児用の前掛けは無かったんだ、いずれ融通が利きそうなものを作ってもらおう。


 「ユリ説教はそこまでにして、時間の無駄になる。それでキリマ君、何しに来たの。」

「ぉ俺は反省したので その ぉお前の仕事を手伝うことにしたんだ。」

えずきつつ、なんとか言葉を絞り出すキリマ。

「解雇されたくないから、じゃないの?今日これからやることは、今日一日で覚えてもらう必要がある。」

一旦言葉を切り、キリマの顔をジッと見つめると、動揺しているのか目が泳いでいる。


僕はため息をつきつつ

「レコエ支店長には伝えるようにしておくから、今日はもう帰りな。覚悟も意思もないなら今日一日で覚え、明日僕抜きで作業する事なんて出来ないよ。」

教えても今日一日で覚えられないなら、その分ユリにしっかり覚えて貰った方が良い。

無理そうだったら無理だったと、素直に謝って1種減らすなどで許してもらおう。


 作業に戻ろうとする私をユリが引き止める。

「レイルズ様、今日の作業の内力仕事・単純作業等はありますよね?そのような仕事はこのキリマに優先してやらせ、その分私に指導して頂けませんか?」

それは…、有りだな。口元を覆う布の下でほくそ笑む。


 「分かった、雑用として使おう。明日はどうなるかわからないけど、守秘だけは約束してもらおう。」

有無を言わさずキリマを立たせ、身奇麗にするよう細かく指示を出す。

不満そうな表情をしたが、ユリに睨まれ慌てて井戸に向かっていった。


 キリマ用の頭巾と、マスク替わりにする布切れを用意してもらい、作業に戻る。

「残ったマーブルの水洗いはキリマにやらせるとして、次の作業は果実酒からアルコールを飛ばします。」


竈に火を入れてもらい両手持ちの鍋に果実酒を1本全部入れる。補足として一般的な酒瓶の大きさは900ml弱

「この際、蓋はしないこと、アルコールが飛ばないからね。そしてその合間に・・

「済みません。『あるこぅる』ってなんですか?」・ん?」

『アルコール』と言う言葉自体はあるので、通じると思ったんだが・・・。

 「お酒を飲むと『酔う』というのは知っている?」

こくり と頷くユリ

「その『酔う』という状態をもたらすのが『アルコール』でこれが入っているものを『酒』と定義しているんだよ。だからこの作業の時、あまりそばに居ると酔っちゃうから気をつけてね。」

まぁ、余程アルコールに弱くなければ大丈夫だと思う。焼酎などに果実を漬け込んだ『果実酒』とは、別物だしね。

 

「それで次の作業だけど、僕が平らに伸ばしたマーブルを弱火で焼く。すると液状化していくので、完全に液体になるまでヘラでかき混ぜながらじっくり溶かす。かき混ぜながら溶け残っているマーブルがないか、確認してね。」

見た目持ち手のある中華なべに、5枚ほど重ならないように並べ、火にかけ溶かしていく。


実はこの作業が一番神経を使うのだ、いつ爆発するかわからないのですごく怖い。

液状化したマーブルに通常の固体のマーブルを入れると爆発するらしいのだ。

「ここでの注意点は、必ず『平ら』にしたマーブルを『弱火』で溶かしていく事。じゃないと爆発しちゃうから、十分気をつけてね。」

真剣な顔で はい と返事をするのを確認し、次の説明に移ろうという処でキリマが戻って来たようだ。




 頭や顔・首・肘から先の腕を洗い、服も着替えてきたらしい。

頭巾とマスク代わりの手拭・前掛けを渡し、身に付けてもらうと早速マーブルの水洗いに 30個ほど残っている 回ってもらう。

マーブルのヘタの付近はちょっと固くなっているので切り落とし、細かいゴミを洗い流してもらうのだ。異物混入はNGです。


 沸騰し始めた果実酒に慌てて向かい、場所を移してもらって違う鍋をセットして1回目とは違う果実酒を入れる。

ちなみに一回目のお酒は試作品第2号で使ったモーントの果実酒で、今入れたのは『ゾネン』という果実を使ったお酒だ。


ゾネンは鋭いトゲがいっぱい生えていてまん丸で中々攻撃的な見た目だ。この刺をひねって引っ張るとズルッと果肉が取れ、食べることが出来る。

果肉は緑色で小さな粒が集まっていて、柑橘系の果肉にそっくりで酸味があるが熟成させると甘みが増す。

香りも柑橘系で爽やかな香りだ。

これを使ったお酒なので色は緑色、香りも爽やかな柑橘系だ。


 モーントに戻り味見をしながら匙で砂糖を加えていく、16杯入れたところでストップ。

「モーントに入れるのは砂糖をこの匙で16杯、覚えてね。味見もして味自体も覚えておいて欲しい。ほんのり甘みを感じるまでにするのがポイントだよ。」


続いてマーブルの鍋を覗くと完全に溶けきっていたので、モーントの鍋の中身を入れ混ぜる。

幼児は力が足りないのでユリにやってもらったが・・・。

徐々に水分が減っていくのを眺めつつ、ゆっくりレードルで混ぜてもらっている間に、型枠をセットする。


 枠の大きさは縦2ロン(24cm)・横3ロン(36cm)・高さ3セロン(3.6cm)。枠・仕切りが大体0.4セロン(約5mm)なので、一枠は約、縦1ロン(12cm)・横2セロン(2.4cm)となる。これが2セットあり、追加で作れることも確認している。


 ユリの側まで枠を持ってゆき、ゆっくりレードルで2杯流し込んでもらう。

少し足りないくらいだったが、4杯で使い切れた。

「これで後は冷めて固まるのを待つだけ。とりあえず一息入れよう。」

あ、キリマは水洗い終わったらマーブルを平らに伸ばす作業をやってもらっている。

ゾネンも火から離し、砂糖を混ぜ(18杯)味を確認してもらっておく。




 花茶を煎れて貰い、3人で休憩する。

あ、そうだ昨日のあれ、出してみるか。

「ちょっと待っていてね、すぐ戻るからっ。」


一言断ってから、てけてけてーっと自室に向かう。

箱を持ち出し自室の入口で左右確認、再度走って厨に向かう。

無事帰還。

おぅ、おじじが居る。

「どうしたレイ、顔を出すと言っておいただろう?」

はい、言っていましたね。聞いていましたよ。

ただタイミング良すぎじゃありませんか?


「ユリ、お祖父様にもお茶を」

はい 返事をすると素早くお茶を入れる。

「して、その箱はなんじゃ?」

スルーしたのに、あれか「○○からは逃げられない」って状況かっ。

箱を持ったまま、小皿を用意し席に着く。

おじじにお茶を用意した時に、自分たちのお茶を片付け席から離れ後ろに控える二人。

キリマは後ろ首掴まれて、引きずられていたのはスルーしよう。

「お祖父様、二人も同席させていいですか?」

私をジッと見つめた後、二人をちらっと見

「よかろう、席に着きなさい。」

と、許可する。


 二人が自分のお茶を持って、席に着いた所で私は小皿をそれぞれの前に置き、小箱のふたを開ける。




 はい、お約束です。この世界のルールです。そして私は予測済みです。

だから慌てないし動じない。

例えそれが3本だったとしてもっ。ホント祝福の大安売りだよね。

私、功夫かなり積みました。


 そして私はひとつ決心をする、礼拝に行ったら『ヨダレ神の祝福』効果のON/OFF機能追加してもらおうと。


お読み頂き有難うございます。

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