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パンデミック~美味しいパンでお腹いっぱい~  作者: 礼生 治暁
第二章 学び拡がる世界
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プロローグ 王都への途

プロローグなので短めです。

 「えっ、これが薬草なの?」

これたんぽぽじゃない?西洋タンポポ。

うん、花の下の緑の部分(正式名称は知らない)、ここが反り返っているのは西洋タンポポだったはず。

「そうだよ、これはね空気中の毒に効くんだよ。」

マリッタが木製のスコップで掘り出しながら教えてくれる。

空気中の毒 多分毒ガスの類だろう、すごいなタンポポ。

確か、たんぽぽコーヒーって根っこ使うんだよな・・・。

「根の部分を使うの?」

花は天ぷらだっけかな?小麦粉ないから作れないけど。

「いや、これは根っこの部分を煎じて使うんだ、そういう事も基礎学校で教えてくれるよ。」

やはり根を使うらしい。

基礎学校、学ぶ事が多そうで楽しみだ。


 5歳になると、祝福の儀を受け幼児から子供になる。そして『祝福の儀修了証書』を提示し、基礎学校に通う事が可能となるが入学シーズンは年初なので来年になる。

この『祝福の儀修了証書』、『成人』(15歳)する迄かなり頻度が高い、重要な書類である。

氏名が分かり、発行した年から年齢も分かり、どこの神殿で儀を受けたかで出身国がわかる為身分証明になるのだ。


 今私たちは、王都に向かっての旅の途中、小休止中である。

ずっと座ったままで凝り固まった体を解す為に散策していた所、たまたま見かけ、後学の為にとマリッタが説明と実演をしてくれた。

「薬草と一括りに言っているが、いろいろ種類があり効果も様々だ。採取難度・需要により値段も変わる。」

「たんぽぽ じゃない この薬草は安いの?」

思わず たんぽぽ と言ってしまったが名前はなんだろう。

「タンポポ? この薬草は『ダンデ』と言って難易度はG、一番下だね。需要はそこそこだから20マブル。薪拾いのほうが儲かるから、依頼料がつかない限り取る人は居ないわ。」

はい、上げる と手渡された、たんぽぽ改めダンデ 物悲しくなってしまった。


 しかし、このダンデがあったことから推測出来る事がある。

地球と同じ植物があるということである。

そもそも『プルト』は葡萄だ。

なぜそこに思いつかなかったというと、『異世界』という先入観を持っていたが為だ。少年、うっかりです。

基礎学校では農業の基礎という括りで「植物学」の授業があるらしい。少年、気になります。


 その後の馬車の中ではおじじ・アン・マリッタからいろいろな話を聞いた。(ビエン・ユリは御者台)

薬草は一部の例外を除き、低位品の薬しか作れず、上位のものは魔物素材や鉱物などから作られるらしい。

薬にするには砕いた魔石を入れた水に、『キン』と呼ばれる草の絞り汁を入れ基礎となる液体を作る(通称魔力水)。そこに『ダンデ』等の薬草を処理したものを混ぜ、ひと煮立ちし濾して完成。ダンデは乾燥させた後粉末状にしたものを使う、との事。

薬には飲むタイプと塗る軟膏タイプのものが有り、怪我を治すのは軟膏タイプだとか。

部位欠損等は神殿で直してもらうか、ダンジョンで見つけ出される現状再現不能のポーションでのみ可能とのこと。

基礎学校が楽しみだ、と言うとみんな微笑ましそうにしていた。


 サワヘから四日目、草原でウォードウルフに遭遇。問題なく撃退。

六日目、森でおおねずみの小集団に遭遇。一名軽傷するが撃退。

おおねずみは来る時に遭遇しなかったので、安全確認した後、後学の為に見せてもらう。


3.5ロン程もある大きなねずみだった。死にはしないが怠くなる程度の毒を持っているらしく、軽傷の一名が係ったらしい。運悪く毒消しポーションは瓶が割れて在庫なし。私達の手持ちを譲ることに。事無きを得出発・・・という時に驚愕の事実に!

毒消しポーションが割れていた事を確認した後護衛の一人が薬草を探しに出ていたらしい。

で、戻ってきたら回復していた。薬草そのままでは効果はかなり弱いが効果はある。

・・・・・・生姜じゃね?あれ

急いで掘って来たのか泥が沢山付いていたが、生前よく見ていた生姜にそっくりだ。

おじじにお願いして買い取ってもらい、水で綺麗に洗って端っこをちょっと齧る。

・・・久しぶりに感じるからか、強烈に感じる生姜特有の辛味、間違いない。

思わず上機嫌になる私。天に掲げるように持ち小躍りしてしまい、奇異の目で見られることに(マリッタだけはニコニコ)。

今の所、使い途はないので大事にしまっておく。

ちなみに、生姜は『ヒェンブル』と言い、血管等に入った毒を解毒するポーションの材料に使うらしい。

腐りづらく需要は高いが、栽培が可能で錬金術・薬師ギルドで行っている。栽培方法知りたいな・・・すごく。

一般農家では採算が取れないので、あまり流通には乗らない。


七日目、草原で爪うさぎ・ウォードウルフに連戦で遭遇、マリッタも応戦する。

護衛三人のうち(マリッタ除く)二名負傷。その日は野営となる。

連日の上連戦で疲労が出たのだろうか?


アーリーフ王国では、馬車の一日の走行距離を考慮し、宿場町を拓いているのでアクシデントがない限り毎日宿屋で休めるのだ。

お陰で荷物も少なく移動出来るのであるが、偶にこういう事もあるので最低限の用意はある。


怪我人は薬を塗って包帯を巻いておけば一晩で治る程度との事、結構深く抉られていた気がしたけど・・・。異世界の薬パないっす。


行きを含めて初めての野営、ビエンもユリも武装して警戒している。

私は子供なのでサイズの合う防具はない、棒を一本携えるだけです。私とおじじ、アンは馬車の中で大人しくしています。

そう言えばこの世界の馬は、そんなに背は高くないけどごつくて骨太です。

地球のサラブレッドを記憶に残す私には、不格好に見えますが優しい目をして大人しく、餌のマーブルを上げると喜んで食べてくれる。毛色は薄墨色。


 ふふふ、野営での食事。まさかこんなにも早く試せるとは。少年、歓喜。

ウォードウルフは食用に向かなく、毛皮のみ剥いでいたが爪うさぎ、これはちょっと大きめのうさぎで前足の横に鋭く硬い物が生えており、これで攻撃してくるらしい。爪か骨なのかは知らん。

そんなことよりも爪うさぎは食用可能、ここ大事。

さほど多くない脂肪を集め、お湯に投入、油を抽出、次にヒェンブル(生姜)を小さめにスライスして多めに入れる、塩で味を調え串焼きにした爪うさぎに塗り、炙る。

ぱくっもぐむぐ、にやぁー うまい、うまいですぞー。

ふぉ、気が付けば、か・囲まれちょる。そしてヨダレリターン!発動条件は何?


同じ作業を繰り返し、皆に提供する。そして始まるグルレポ×5。

「今まで何度も食べた事のある爪うさぎの肉、それなりに旨いとは思っていたが、これを食べるとなんとも味気なくなる。

これは何だ、爪うさぎの肉だ、そのはずなのに塩気の他に甘味と辛味を感じる。

塩により油の甘味を引き立たて、ヒェンブルの辛味が、肉自体の旨みと甘味・塩気をさらに一段引き立てる。うまい、これはうまい、革命だ、肉料理の革命だ。」byおじじ

護衛の方は守秘契約していないから、食べさせられません。ごめんなさい。距離開けていたから、大丈夫だと思うけどね


あ、今まではフルーツソースの甘酸っぱいのか、塩味が主流でした。

醤油欲しいけど、大豆ないんだよね・・・。魚醤は匂いが製造に関して問題だ。

きっと何処かで作ってくれている事を期待しても赦されると思う位、臭う。そういう意味で製造困難。他人にやらせるには良心が痛む。

まあ、いずれ決断する時が来るかもしれないが、来ない事を切実に祈る。


そんな事をつらつら考えつつ、ヒェンブルソースを小さい壺に差し替え確保する。

基礎学校が終わり、その上の上級学校で学んだ後は、冒険者やりつつ国内に始まり各国廻ろうかな、未知の食材とか沢山ありそうだ。ほら、魚醤って川魚でも作るから、世界各地を確認しないとね。うんうん、必要だ

食事を済ませ、それぞれ夜を過ごす。生姜って体温あげるから程よい眠気が・・・。

それでは、おやすみなさい。


 開けて翌日、朝食を食べながら何気なくマリッタに「ほかに辛い食べ物知らない?」と聞いた所・・・またしても驚愕。

「干したマーブルは辛くなる。一回干すとスープで茹でても爆発しない。」

おじじに目を向ける、横に首を振るおじじ。

よく考えると、かなり特殊な状況でないと必要性を感じないのだ、『干したマーブル』というものは。

そもそもマーブル自体、保存性が高い。ヘタを取らねば一年間持つのだ。

つまり長期間身軽に活動する必要がなければ考えることもない。

マリッタがなぜそれを知っているかは、冒険者の中では常識、程度の推測しかできない。

しかしそれにしてもなんともマーブルは不思議食物だなと。異世界パないっす。


玉ねぎのように火を入れると甘みが出る、というのは想像できる。

しかし、干すと辛味が出るのか…。マーブル自体も研究が必要だ。

蒸したり、凍らせたり色々方法は思いつくが、結果どうなるか不明。

『蒸す』という『料理法』はないらしい。肉まん食べたいな…、小麦粉無いから駄目だった。

幸い寿命は長く戴いているのだし、気長にやるしかない。

パンを作るのが当座の目標で、子供の自分ではいろいろ無理があるし、知識も足りない。

取り敢えず、ふんわり膨らませる方法がわからないのが問題だ。


マッグルを粉末にすること迄はできたが、熱を加えるとどうなるかも解らない。

爆発して危険かも知れないから、大きめの盾を構えることが出来るように成りたい。

思考する分には馬車旅行も悪くないね。




 その後は王都に近づくにつれ交通量も増え、魔物の対応も楽になり無事王都についた。






 王都よ、私は帰ってきた!




お読み頂き有難うございます。

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