『人類最強』
短めです、済みません。
「お待ちください。私も行きます。」
誰かと思ったらレコエ支店長。
おじじに目で問いかけると頷くので好きにさせることにした。
「さて、素直に話すのがお互いの為になると思うよ。ビエンあれ出して」
お墨付き紋標を出してもらう。
「これなんだかわかる?分からないんだったら教えてあげるよ?」
流石にこの世界で、マーブルを知らない人はいないと思うんだけど・・・
「偽物をこれみよがしに出しても、無駄だ。そんなもので騙されるものか。」
強気というか話を聞かないというか・・・
その後も紋標が納められている、額縁の神殿の紋章など見せたり色々話してみたのだけど埓があかない。時間ばかりが過ぎていく・・・
扉を叩く音がしてユリの声が聞こえてくる。
「レイルズ様に火急の用との事で、お客様がいらっしゃっています。」
はて?サワヘで訪ねてくる様な知り合いはいないと思うのだが・・・。
「身に覚えがないのだけど、どちら様か伺っている?」
ドアを開け、廊下に体を滑り込ませる。
「その・・・伺っておりませんが、多分間違いないかと・・・英傑アルバート様です。」
は?流石に5歳児でも知っている名前だ。曰く「人類最強の男」
なんでうちに来て私に用事があるの 私退治されちゃうの?エクリックス様への不敬罪?
やっべ 心当たりいっぱいあるよ はい、私死んだね
「ユリ短い間だったけど、とても助かったよ、ありがとう。最後にこれだけは言っておくね、夫になる人に今日みたいな起し方は厳禁、正しいやり方を覚えるように。」
僕は「人類最強」に会いにいく正に抵抗は無駄 せめて痛くない様にしてもらおう。ホント短い人生だったな フラフラとノックをし応接室に入る
「レイルズ・シックフィクト、出頭しました。最後の慈悲だと思って痛くない様お願いします。」
部屋に入るなり、相手の顔も見ずに土下座 だって、痛いの嫌じゃん
・・・・? 部屋間違えた? いや、この部屋にいるよね。
「ゴホンッ、とてもひどい勘違いをされているようだが、私達は君を捕えに来たわけじゃない。」 捕えるって言うか処刑人じゃない? なんかゴニョゴニョ言っている
二人居るようだ
「んじゃ、何しに来た。こっちは忙しんじゃボケェ」
緊張して損した。ってか土下座したのに。土下座したのに!自業自得?知ってるよ!恥じらい隠しじゃ。5歳児ナメンナ
「失礼しました。それでは何用で?先程も申しました通り立て込んでいまして。」
なんか死ぬ覚悟決めたら、細かいことどうでもよくなった 吹っ切れました
説得とか、まどろっこしい事やめて実力行使しよう
お暇をしようと顔を上げると、泣きそうな顔している人と怒った顔した人がソファーに座っていた。多分鎧を着ている人が英傑アルバート。泣きそうな人ね。
大地大神殿所属 神殿騎士 人類最強の男。 通称『英傑』
「英傑様にお会いできるのは大変光栄ですが、何分急なことですし。できれば日を改めて頂ければと・・・。」
「ちょっと待った。急に来たのは確かだ、失礼は重々承知。その上で『火急』なのだ。」
怒っているおじさん、あなたはだあれ?
「私はこの街サワヘの商業ギルドを預かっているブレフト・デッケルという。話を聞いてもらえれば納得できよう。」
ギルド長?なんでまた人類最強と一緒なのか気になるが話を聞く時間位はあるかな
「承知しました。お聞かせ願いますか。」
要約、エクリックス様の前の担当神を信望する集団。便宜上、狂信者と言われる人達がこの街で暗躍。その調査をしているのが「英傑」。
昨日のキリマの一件で尻尾を掴めたので、今は証拠固めに神殿騎士たちが動いているらしい。
そこにエクリックス様の御神託が届く「敵はガリング商会にあり。ついてはシックフィクト商会のレイルズなる子供を訪ね、協力を求めよ」と、
お使いクエスト?リアルであるんだね、神様のお使いクエスト
私も似たようなものか『パン』どうすれば作れるんだろう・・・おっと現実逃避している暇はない。
「わかりました。私に付いて着て頂けますか?」
顎が縦に動くのを確認し、ガリング商会二人を尋問している部屋に行く。
レイルズだけ先に入り、事情説明すると皆一様に驚く。
そうだよね、普通驚くよね?私だけじゃないよね。ちょっと安心できました。
ある意味すごい『人類最強』を前にして「お前なんか偽物だ」の「『人類最強』なんてまやかしだ」とか言える精神。まあ震えていましたが。
で、『人類最強』の鞘と剣、神具・神剣らしい。鞘でつつくとつついたところが麻痺して感覚なくなるんだって。やってみた結果。
恐怖で陥落、ペラペラ喋りました、あっさりと。あれ、ちょっと欲しいな・・・
はい、証拠も揃えやってきました、ガリング商会。あ、もう商業ギルドから登録抹消されたので元ガリング商会ですね。
神逆者なので口座も取引も為替等諸々すべて凍結、手足もがれた状況。
今は元商会館に立てこもり中。
元ガリング商会に登録されている人間の身柄確保に並行して、こうして包囲している状況。
シックフィクト商会同様、潜り込んでいる人間も予測され、言動がおかしい・エクリックス様への誹謗中傷等ちょっと『セイラム魔女裁判』を彷彿とさせる状況になりつつある。
私は告発のあった者も告発した者も等しく乱暴なく安全を名目に保護する事を進言。
明日にでも、大神殿の協力を願い神術魔法『審議』(嘘発見魔法)にて判定するよう依頼し、質問内容等のマニュアル化による標準安定・効率化を求めた。
全く関係無い訳ではないのでしゃしゃり出てしまったが、流石に体力の限界が近くなり自宅に引き上げることになった。
翌朝、ビエンが起こしに来た。優しく肩を揺すり起こしてくれたとてもいい笑顔で「おはよう」と、言えたと思う。
そして奥さんのアンは同じように起こしてくれるのか尋ねたところ・・・。
私とビエンは握手を交わし抱擁し合った、同じ苦しみを味わったものとして。
恐るべき「アンデ」家の女性。
そんな感情的で心温まる日常は元ガリング商会を目に入れるまでだった。
朝食後赴いたのだが・・・3階建てだった建物が1フロア分無くなっており、残っている部分も真ん中に天地を繋ぐ様割れていたり向こう側が見えるような大穴が空いていたりした。
崩壊の恐れがあると警備していた兵士に聞く所によると。
エクリックス様への聞くに耐えない罵詈雑言に、怒り狂った『英傑』がやったらしい。
流石『人類最強』 異世界人パないっす
立て篭っていた者達も抵抗を諦め、投稿したらしい。ただし行方・生死・身元不明多数。
やらかした『人類最強』は現場厳禁・事務所待機、らしい。
やらかしたと言えば、ユリの弟二人、姉を告発。
悪魔が乗り移っているから、あのように起こすのだと大暴走。
ユリに事情を聞いた神官は本気で悪魔付きを疑ったらしい・・・が素であった。
その後遣り過ぎであり虐待とも言えると神官に断言され、泣きながら弟達に謝り、海より深く反省して海より深く・・・凹んだらしい。
ユリ本日欠勤とのこと。一日で浮上するかな・・・。顔出しできるかも心配だ、私の前に。
魔女裁判は予測道理、告発されたが無実の者が多数。本物の狂信者はそこそこ。
そして告発した人の中にも狂信者多数。
今後の人間関係が心配されるが、そこはエクリックス様の威光と神殿の方の頑張りで、何とかして欲しい所だ。
狂信者達だが、どうにも自尊心と劣等感を上手く刺激して、信者たちをコントロールしていたらしい。
神殿及び街の上層部は、未だ全員取り調べが住んでいないが、並行して教信者の身元照会を行っているので、てんやわんやの大騒ぎとの事。ご愁傷様、である。
祝福の儀から数日間、王都に向かうまでの数日感自宅でのんびりしていた。
街全体が騒がしい為、外出を控えるよう言われたのでこれ幸いとの~んびり。
ユリは一日で立ち直り、何事もなかった様に過ごしている。メンタル強いなぁ
ユリが起こしに来ることは無かった。多分頭では理解していても、咄嗟だと出るのだろう。
マッグルを食べた従業員の意見をまとめたり、マリッタに槍術を見せてもらったり麺棒を使ったなんちゃって棒術を見せたりして過ごした。平和っていいねぇ~
そしていよいよサワヘを出発する日になった。
同行者はおじじ・ビエン・アン・ユリ、そしてマリッタ。別口で雇った護衛。
その他にもシックフィクト商会の行商隊、その護衛達と団体ですね。
見送りに『人類最強』やら商業ギルド長が来て、騒然となる場面はあったがなんとか無事出発できた。
ギルド長があの後『祝福持ち』について聞いたので、と跪こうとするのを慌てて止めたり。
なんだか知らないが『人類最強』が私に絡んでくる。
「この街で生活しろ」とか「神官もしくは神殿騎士にならないか」とか・・・。
あの、私まだ5歳児ですから・・・
あの事件の際、『セイラム魔女裁判』の再現を恐れたが為に色々口出したのと、狂信者のひとり(ブビー)を攻撃して捉えたのをマリッタから聞き、興味を引いてしまったらしい。
私は普通の5歳児なので、お家(王都本宅)に帰ります。
お姉さんならまだしも、男に興味をもたれてもねぇ?
にっこり幼児 じゃない にっこりお子様スマイルをかまし「バイバイ」と、手を振って馬車に逃げ込みました。笑顔だけじゃない、動作も入れて効果倍増(だと思ってる)
幼児、改め子供になっても、功夫頑張ります!
これにて一先ず一章完です。
次章は閑話を挟み基礎学校でのお話になる予定です。
狂信者たちとの戦いは『人類最強』のお話です。レイルズは今回巻き込まれただけ、今後話に出てくることはあるかもしれませんが絡みません。 予定では
9/12 マーク⇒紋標 変更しました