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パンデミック~美味しいパンでお腹いっぱい~  作者: 礼生 治暁
第一章 マーブル、それは世界の主食
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神とのお茶会

「平穏無事・何事もないのが一番だ。」

何はともあれ祝福の儀式をし、奉納品を納めてお家に帰ろう。


「はじめまして巫女様、紹介は必要ないようなので省きますが、本日は祝福の儀を受けに参りました。どうか宜しくお願い申し上げます。」

右手を腹にあて深くゆっくりと最敬礼。45度腰を曲げ頭を下げる、日本式だけどね。

敬意を示すのが大事だと思う。一拍置いた後、頭を上げる。


「承りました。私に付いて中に参りましょう。案内させて頂きます。」


 「こちらは礼拝堂です。ご家族以外の伴の方はこちらで休憩しながらお待ちください。」

機械のない世界でどうやったらって思うほど、すごい建物だ。話によると傷を付けることは例外(神剣などの神具)を除いて不可能らしい、神様印のプロテクトですね。わかります。


「それではお二人、ですね。参りましょう。」

更に奥に向かって進んでいく・・・途中おじじが戸惑っていたけどなんだろう。




「大神官様、お連れしました。レイルズ様です。」

さま? さっきは『君』だったよね。って、大神官?


大神官が近づいてくる、普通私の方からじゃない?

「レイルズ様よくいらっしゃられました。エクリックス様がお待ちです。奉納品をお持ち下さい。」

やばいね、かなりやばい 事情知っているっぽい しかもエクリックス様が待っているって・・・。どうやって向かうの?そこのサークルに入れと、わかりました。


 放心状態のおじじから奉納品を受け取りサークルの中に入る。

転送装置とかかしら?

空気が抜けるような音と共に景色が変わる。

庭園の東屋?

開き直って周囲を見るとエクリックス様が数人のお供を連れやってくる。

案内してくれた巫女さんも居るんですけど・・・。



 「お久しぶりね前田さん レイルズ君の方が今は聞き慣れているのかしら。」

機嫌良さそうにエクリックス様は奥に座る。

「どうぞ座ってそしてお土産早くちょうだいずっと楽しみにしていたのマーブルがあんなふうになるなんて考えたこともなかったわ早くちょうだい待ってたの早く食べさせて。」

おぉぅ息継ぎ無し、いやそもそも呼吸必要なのか?

「どうぞお納め下さい、エクリックス様」

一番そば近くにいたお供の人・・・巫女さんだった・・・に御預けする。

途端

「キャー」と黄色い声が私以外の全員から上がる。

布が一瞬で剥ぎ取られ、気がついたら文箱もどこかに消え、中にあった箱だけになっていた。

「右がモーントの果実酒で作ったものです。」

疲れているのかな、意識を疑いそうになる。

気が付くと皿が並べられていて、私の分も含めお茶がセットされている。

私を除いて5人?神?柱?どの位階の存在なのか分からないので「人」で遠そう。

5人なので数は足りるようだ、余る分は知らないジャンケンでもして下さい。

喧嘩しないでね。余波とかで死んじゃいそうだから


巫女さんが立ち上がりモーントの箱を開ける。

はい、お約束ですね~。5本の滝が出現しました。

もう慌てないよ、見慣れたもの。

ヨダレを滝の様に垂らしながらも理性を持って、一枚ずつそれぞれのお皿に載せる。

すごいやっぱ精神力とか鍛えているのかな。理性飛ばしてないよ、初めてヨダレに負けない人を見た。

「どうぞご賞味を」

限界だったんですね、はい何も言いません。言い切る前に食べていたけど気が付かなかったです。

はい、幼児嘘つかない。


そしていつものパターン、グルレポ。

これ後の二回もやるのかな。


お茶美味しいな~。天気もいいしお花も綺麗に咲いているな~

「レイルズ君、流石です。あなたを選んで本当に良かった。」

「お気に召して頂けた御様子。そのお言葉だけで感無量でございます。」

うんうん、と上機嫌なエクリックス様。グルレポが終わり放心状態のお供の方々。

「貴方は一端ではありますが、今回私の与えた課題をこなしました。祝福は既に与えているので、気持ちとして普段通りに喋っていいですよ。心の声のままに気楽にしていいよ。」

前はそんなことなかったけど、今は心が覗けるのかな。

「前回、面談した部屋は特別な作りで設定された部屋なのです。そしてここは私に与えられたボフィアのベースキャンプみたいなもの、私の世界ですからすべて把握出来ますよ。」

普段通りの口調もいいけど祝福の拡大を停めて貰うのと、既に持っている人の一連の流れのOFF機能を下さい。

あ、冷や汗かいている。

「祝福の拡大は止められません。私の中から発生した物なので私より上位の存在じゃないと・・・・。OFFまでは出来ませんけど効果を(小)にすることはできますので、それで許して下さい。」

「ご配慮頂き恐悦至極。」

これで作業する度に、動きが止まることは減ると思う。

「それでですね、次のゾネンも合格でしたら戴きたいものがあるのです。」

「聞きしましょう」

「有難うございます。お墨付きが戴きたいと存じます。」

「なるほど・・・約束してもらいたいのですが常に一定以上のものを提供できますか?」

「それは外的要因も含めですか?」

「う~ん、人為的なものは駄目です。一定水準以下は売り出さないというのは、どうでしょう」

「保険という意味で価格が上がってしまうのは問題ですか?」

「暴利でなければ良いでしょう」

「私の管理下である限り一定水準以下は『難有り』としてお断りしてほぼ原価で処理します。恩恵であるマーブルを無駄にはしたくありませんので、また決して利益のみを求めたりしません。」

「商売上手ですね、ご祝儀として認めましょう。けれどあなたの管理から外れているもの・『難あり品』にお墨付きの証を付けた場合は文字通りの『神罰』を与えます。夢々忘れないよう周知し指導なさい。」

「肝に銘じます。」

ふぅ~、神様相手に商談とか寿命減るわ

「あなたの寿命は200年くらいあるから減っても誤差。」

そうでしたね~、忘れていました。ナチュラルに心の声拾ってきますね


 「如何でございましょう。」

「これも合格。さっきの件は後で細かくね」

にっこり笑って目礼を返す


「最後の白木の箱が本日一番の自信作です。自信作ではありますが苦手な方も居られると思います。かなり個性が強くなりますのでご了承ください。」


ヨダレリターン、ゾネンでは(小)効果が出ていたのに再びの決壊状態。

華麗にスルーしよう。


 まだ作っていない果実酒の『プルト』・花茶の『ハビワ』は試作したら奉納すべきなのだろうな。

「当然持ってきなさい。」

わかりました


 『プルト』まんま葡萄だ。ただし日本で食べていた葡萄より酸味が強い。品種改良と云う概念が無いのだから原種に近いのだろう。作ったらアメシストかレッドスピネルの様な色合いになるだろう。

『プルト』の白ワインは見たことない。

流石に酒造までは手が廻らないだろう、機会があったら話だけでもしてみようと思う。


『ハビワ』太くならない細い木で白く小さな花が咲く。

お茶としては、ほんのり白くかすかに甘みがある。香りは甘い花蜜の香りがする。

これには『ズバイリン』のジャムを使うつもりだ。

ハビワは今のノセウの形になると思う。上と下の二枚にハビワ内側にジャムを塗り、真ん中にシンプルマーブルを挟む形だ。

ズバイリンは紅色のジャムで、甘みが強く適度に酸味がある。香りは甘酸っぱい。

樹木としては、背の高い樹に生り果実の皮は黄色で中の果肉は紅色でちょっと硬い。

白い花茶を白いマーブルに混ぜるので少しさみしい印象をズバイリンの紅色で景気よく見せるつもりだ。


今回の奉納にあたって、作った3種のスイーツ。ノセウをもう少し一般的に落としたものとして『シンプル>ジャム>ノセウ>ジャム>シンプル』と香りが強いことを逆に利用して真ん中だけノセウにすれば、客層の幅も広がるし、今回のタイプは特別な品としてプレミアム感を出すことにも利用出来そうだ。


 「終わりました?それで今日このように御会いできるとは望外でしたが、最後にひとつご相談が御座いまして。」

「仕方がないですね~、今日は機嫌がいいので特別ですよ。」

深く頭を下げ続ける

「このマーブルを原料とした、お菓子・スイーツの名前で御座います。」

今まで適当にマーブルクラッカーと、食感だけでそう呼んでいたが、甘いのだからクッキーでいいのかも?とも思い始め、今まで正式な名前を決めていなかった。

それで今日こうしてエクリックス様に直に会い、問答することが出来ているのだからひとつ相談しようと思い至った。

「あなたが作ったのだから『レイルズ』とでも名付ける?」

ご冗談を にっっこり笑顔を向ける。

「幼児のくせに怖い笑顔ね。輝石はパイロキシン でも花茶が・・マーブル・・・茄子・・・エッグプラント 『マッグル』はどう。」

ん~主食がマーブル 通貨がマブル お菓子がマッグル 憶えやすそうだし良いかも

「『かも』じゃなくて良いの。なんでこういう時だけ敬わないのかしら。決めた、あなたが将来マッグルを売るお店はジュエリーボックスから『ジュエリック』にする。決定事項ね。」


どこから宝石箱って来た。もしかして・・・

「あの時ほど降りられない事を悔やんだ時はない。しかもあのおじさんの「グルレポ」だっけ?聞いていただけで悔し涙とヨダレがね、わかるでしょ。」

分かりたくないです、わかるけれど。

この四年間、全く接触が無かったので覗かれているとは思わなかった。

「私も暇じゃないから、そんなに頻繁には見ていないわよ。あなたが祝福の儀に来ると聞いて偶々覗いたの。」

なるほど、タイミングが良い悪いは兎も角ピンポイントであの場面だったのか。

「それで今回のこのお茶会に至ると、そういえばあの巫女さんは分体とかアバターってやつですか?」

エクリックス様ソックリなんだけど

「説明すると長くなるから簡単に言うと、神殿の中でのみ生きる『使徒』。特別な力とかはないのだけどね。あなたが来た時はあの子が担当するからそのつもりで」

結婚できないから惚れちゃダメよ、冗談めかしそんな事を言う。

よく分からないけど、分からない方がいい気がする

そういうものだと思っていた方が身の為だ、と根拠なく思う。


 「それと一応紹介しておく、私以外でボフィアの神とされている者たちだ。上位精霊でもある。」

風『ゼフィール』・水『シュウスイ』・火『ユシュク』の三神がそれぞれ挨拶してくる。

「奉納品は数が多い方が良いが4の倍数「いえ、5の倍数で」にす・・・」

巫女さんが割って入ってきた・・・

「中に入っておるなボッコス・・・地の担当上位精霊『ボッコス』『ゼフィール』達と同格の者だ。」ため息をつきつつ「5の倍数で」と力なく呟いた。


 その後細かい話をし、再び巫女さんに案内され私は現世に戻った。


お読み頂き有難うございます。

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