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パンデミック~美味しいパンでお腹いっぱい~  作者: 礼生 治暁
第一章 マーブル、それは世界の主食
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ぱん・パン・PAN?

勢いだけで書いてます。とりあえず書いてみたので投稿してみました。

「はじめましてこんにちは」


「…こんにちは?」

 気がついたらいきなり初対面の人と挨拶していた。

 

 うん、現状把握が全くできん。


そっと周囲に目を向けると生活感のないどこぞの会議室といった感じだ。

私はなぜこんな処に居り、目前の人と挨拶を交わしているのだろう。


「あ、私は前田と申します。宜しくお願いします。」


 疑問は尽きないが目の前の人・女性?から意識を背けていても仕方がない。

状況次第だが何か解るかも知れない。


「ご丁寧にどうも、私はエクリックスと申します。」


 綺麗なプラチナゴールドのセミロングが、ワンレンと言えばいいのか綺麗に切り揃えられている。

瞳の色は青くコーカソイドっぽい。やけに流暢な日本語だがどこの国の人だろう。


「本日あなた様をお呼びしたのは、不躾ブシツケながらお願いしたい事があるからです。」


 どうやら私は呼ばれてここに来たらしい。なぜそこに至るまでの経緯を覚えていないかわ不明だが…。


「パンを創って欲しいのです。」

 ん?なにかとても変なことを言われた気が…。ぱん・パン・PAN・パン?


 すぐに思いつくのは食べる「パン」、しかし私はパンなど作った事はない。

小麦粉を練って焼く~、ぐらいの事しか解らない。


「パンとは、食べるパンの事で宜しいのでしょうか?」

私は残念ながらパン職人ではないので、食べるパンなら役に立てそうにない。

選考の時点で外れるだろう。

「はい、コッペパン・クロワッサン等の美味しくて柔らかいパンの事です。」

気持ち、ちからがこもった返答。


 正直に言ってもう帰りたい、素直にパン屋さんに行って欲しい。

なんで私はここにのこのことやってきたのだろう?早く日常に帰りたい。


申し訳ありませんが、私はそのような技術は持ち合わせておりませんので、お役には立てそうにありません。」

正直に言って帰ろう。うん、それがいい帰ったら何しよう…。


ん?私はどこに帰るんだっけ?

家・住居だ。


しかしそれは何処にあるのかどの様な物であったかが思い出せない。

「済みません、最寄りの駅はでしょう?出来ればお暇しようと思うのですが・・・。」

漠然とした喪失・恐怖感を抑え、出来るだけ自然に尋ねる。


「誠に申し訳なく思いますが、お暇されても還る場所はありません、正確には『還れる』ですが。簡単に申しますと此処は貴方様が居られた日本・地球ではございません。とある世界に付随している『精霊界』もしくは『天使界』と便宜上言われています。『神界』からの依頼を果たす者たちが居る世界ですわ。」

意味が判らん。言葉通りに受け止めるならば天使とか精霊とか居る世界?


「還れないとは、どういうことでしょう?」

話が進まないのでひとつづつ聞いて行く事にする。

「単純に帰る場所が無いと言う話です。貴方は役目を果たし地球と云う処から解放されたと言う事です。」

「開放?ですか。寿命を迎えたとかではないんですか?」

不可解であるが、死んだとかでなければ帰れるはず。

「開放、ですね。地球と呼ばれる世界は私たちの認識では流刑所、監視はされているが管理はされていない世界なのです。」


 おぃぃ~地球って、流刑地なの?

管理されてないの?監視されてるの?

話が本当ならすごい事実だ。


「選別所とでもいいましょうか、加護や祝福なしに過ごさせ何を成すか。といった事を参考に次の世界に送るのです。」


 あまりにとんでも話過ぎて、何も言えん。

「すっすみません、少しお待ち頂けますか?その…理解が追いつかないもので」

切実に、切実に帰りたい。

地球が流刑地だという話は置いとこう、そういう認識らしいから。

って、俺犯罪者だったの?いやいやいや、それも今は関係ない。


深呼吸を繰り返す

とりあえず帰れないらしい、でもそれって本当なのかな?今になって猜疑心が芽生える。

しかし、同時に思い出した。

思い出せないことを思い出したのだ。


「前田」と云う苗字は思い出せた、というか自然に出た。でも、名前が思い出せない。

自分が日本人であると自覚はあるが、どこの県民なのかわからない。

何しろ住んでいた場所が思い出せないのだ。


薬物?新手の詐欺宗教?手と足は動く勢いよく走れば逃げ出せるか?

多分混乱している頭を宥め戦略的?撤退を選択するが・・・。

 

「あれ、出入り口はどこですか?」

ドアも窓もないよこの部屋。

電灯もないのに明るいよ、なんで?


「あぁ、私専門じゃないのでいろいろ配慮が足りてないみたいですね。ちょっとマニュアル通りに一回説明しますのでひとまず聞いて下さい。」


パソコンに例えられた説明を受けたが、なんとなくは分かる。私はあまりパソコンに詳しくないみたいだ。

『人型生物が繁栄している世界』フォルダの中にある『地球』フォルダから、『前田』というデータを『地球』から抜き出して、違う世界のフォルダにそのまま突っ込むのは『異世界転移』、拡張子変えるのが『異世界転生』らしい。

うん、なんとなく分かった 気がしてる 


神様とかもっと上位の存在の話は割愛します、関係なさそうなんで



聞いてみた結果、エクリックスさん大精霊。

現地では神様として祀られている、大地神で主神。

”様”付けたほうがいいのかしら?

信徒からの願いで食文化の向上を進めたい。

まずは主食からって事で『パン』


全然関係のない経歴を持つであろう私が選ばれた理由は、

優秀なパン職人はもっと上位の世界に招かれるのでエクリックス様の世界には呼べず、過去そこそこの職人を招いてみたが、道具も何もない世界で情熱もなくなり、全く関係ない事をして過ごしたらしい。

聞けば小麦も大麦も無いらしい、さもありなん。

ならば逆転の発想で素人にお願いしてみよう、という話。

で、なぜ私なのかとの答えは

「食べるのお好きですよね?料理漫画とかかなり読んでますよね?」


…いや、記憶ないんですけど、むちゃぶりって知ってますか?


説明によると”私が料理漫画を読んだ”という記憶は読んだ時の感情などを含め消えている。

だけど”読んだ漫画の内容”は記憶に残っているらしい。

記憶を探ると和食・中華/ラーメン・洋食/フレンチの料理漫画の記憶がある、記憶っていうか記録だねこれは。

だけど手順が思い浮かぶ料理は和食・中華・洋食が細部まで、ラーメン・フレンチはかなり怪しい。

再現できるのは和食・中華・洋食だろう。

ムニエル・ポワレは作れるけどテリーヌは無理っぽい、そんな感じだ。


なんとか気を取り直し、私は改めてエクリックス様に尋ねる。

「それでどうすれば宜しいのでしょうか?」

 

「まず私が担当している世界に転生していただきます。

 勿論今の記憶は保持したままでです。

 貴方個人に関する記憶は消えていますが、それ以外は残っているはずです。」

さっき確かめました。


「次に今回の依頼を遂行するのに必要と思われるスキルとして『調理』・『錬金術』を与えます。」

スキルなんてあるのか、錬金術ってよくわからないけど貰えるものは貰っておこう。

必要らしいしね。


「ほかに何か必要なものはありますか?」

「確認なのですが、パンを作るだけでいいのですか?作り上げた後の人生はどうすればいいのですか?」

そんなに簡単な事ではないと思うけど10代半ばで出来てしまった場合、残った死ぬまでの時間は自由にしていいのだろうか?

「そうですね…、パンが作れたとしたらほかにもなにか作れそうですか?」

え、ここに来て課題追加?


ん~、小麦の代わりになる物を手に入れなきゃいけない訳だから、それさえ手に入るなら他にも作れる料理はあるけど…。

「そうですね、パンが作れるとしたら『麺』を作ってみたいですね。『うどん』になるかもしれませんが」


中華麺って、『かん水』とかいうの必要じゃなかったっけ?

あ~、無理っぽい。

うどん万歳、たしか塩だけで作れたはず。

「あとは、揚げ物ですね、副食・おがずになりますが『天ぷら』・『フリッター』パン粉を使った『フライ』も作れると思います。他にも『クッキー』は作れるかな?」

思いつくまま言い並べる。

 

あれ?エクリックス様、宙を凝視したままヨダレ垂らしてる。

いや、床に垂れてるよ。

流石神様、大精霊だっけ?

とにかく凄い量垂れてる、威厳吹き飛んだけど。

思わず感心したまま、眺めてしまう。




5分ほどそのまま待ってたけどエクリックス様は、未だ中空を眺めている。

「あの~、それでどうしましょうか?パンを作るのは大前提として他に思いつく料理も出来るだけ再現するって事でよろしいでしょうか?」

「是非お願いします。」

はい、お願いされちゃいました。

課題追加です。


「それでですね、実際料理をするとなったら気になるのは衛生と食材管理です。なにか有効なスキルってないでしょうか?」

別にヨダレ見たからじゃないよ?

神様のヨダレだもの多分きれいだよ?

一瞬で床に垂れたヨダレ池が綺麗に無くなったの見て思いついた訳じゃないよ?

本当だよ?


「そうですね、『生活魔法』が十分に使えるように『魔法適性』・『魔法力増大』を与えましょう。

 これで竈の火付けや掃除、食材管理も楽になるでしょう。

 後は『鑑定』・『毒物感知』・『毒無効』も与えましょう。」

おぉ~、大盤振る舞いじゃね?


「それで再現できた料理を提供する場所も作って欲しいのです。」

「は?」

「再現した料理を提供する場所も作って欲しいのです。」

二度言ったよこの神様。大事なのか?

しかもドヤ顔だよ、別に良い事言ってないよね?


「でしたら、ある程度財力のある商家などに転生させていただけますか?後継ではなく3番目くらいでいいので。」

長男だと後継で好き勝手出来ないだろうし次男坊も念のため避けておきたい、よって三男坊あたりがグット、だと思う。


「分かりました、その様に計らいましょう。それで、再現出来たら神殿に奉納して欲しいのです。」

なんか要求どんどん増えてね?

いや、私も遠慮なく要求したけどさ。


ちょっと整理してみよう。

課題・要求

 パンを創る。

 再現出来そうな料理を作る。

 再現した料理を提供する場所(料理屋)を作る。

 再現できたら神殿に奉納する。


私の要求

 衛生・食材管理に有効なスキル

 転生先の希望


私もっと要求したほうがいいのかしら?

まぁ、スキルいっぱい頂けたし自重しとこう。

「委細承知いたしました。私の次生、なるだけの料理を作りましょう。」

「期待しています。貴方の次の人生に幸多からん事を祈りましょう。」

ポーンという音と共に”『エクリックスの祝福』を得ました。”とメッセージが浮かんだ。

なんか祝福を頂けたらしい。


真面目に頑張ろりますかね。


「ところでエクリックス様って女性ですか?」

女物のスーツ着てるんだよね。

真っ平らだけど

女神様だったらテンション上がるんだけどな~。

「現地では女神として祀られていますが私は精霊です。生殖活動をしないので性別はありません。」

残念、感謝の気持ちは変わらないけどね。



少しづつぼやけていく視界、多分転生するんだろう。

さてさて、小麦がないなら米を食えばいいじゃない、と気楽に考えていた時期が在りました。




「往きましたね、是非とも再現して欲しいものです。

 天ぷら・とんかつ・ラーメン・うどん、どれもこれも素晴らしい。

 クッキーも食べたい。おっと、またヨダレが。」

地球の食文化に魅了されたエクリックス。

称号に『喰いしん坊』・『ヨダレ神』が増えている事には気がついていない。

「あ、ホットケーキって美味しそう、前田さん作ってくれないかな。」



しばらく、かなりしばらく気がつかない。

「ケーキって何これ、なんで私の世界小麦ないのよ。」






お読み頂き有難うございます

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