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Blood for  作者: 椎井 慧
第2章
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駆け抜けて 青春①

 麗らかな陽射しと、吹き抜ける爽やかな風。そう、今日は――。



「絶ッ好の! 体育祭日和ーッ!!」



 張り切る恵衣を横目に気の重い表情の瑠美。運動は苦手だ。からきし動けない。一方の恵衣はまさに水を得た魚。クラスの女子の中で一番運動が出来る彼女は、この日を一年で最も楽しみにしていた。

「恵衣さんは何に出るんだっけ」

「選抜リレー! 瑠美は借り物競争だよね? 頑張ろー!」

 眩しい。笑顔が果てしなく眩しい。一瞬でも「体育祭 めんどうくさい 休みたい」と俳句風に考えていた自分が申し訳ない。この俳句はお蔵入りだ。



「おはよー。いやぁ、晴れたなー」

 声を掛けられ振り向くと、こちらに手を振る相澤がいた。普段、体育の授業は男女別々で受けているので間近で体操着姿を見ると、ちょっと雰囲気が違う。相澤から少し遅れるようにして兄がこちらにやってきた。

「おはよう。豊島さん、今日は選抜リレー頑張ろうね」

「う……うん」

 恵衣と同じくクラスで一番運動神経の良い兄は選抜リレーに、それもアンカーで出場することになっていた。

 兄に敵対心を抱いている恵衣からすれば、同じ競技に出るなんてまっぴらごめんというところだろうが、そこはクラスの勝利の為にぐっと我慢したようだ。恵衣らしい。

「じゃあ、あたしは実行委員の仕事があるから行くね。またあとで」

「うん、頑張ってね。恵衣さん」



 開会式を終えて、まずは百メートル走。これには相澤が出場するらしい。瑠美と兄はこれを近くの観客席で応援することにした。

「相澤くんて足速いの?」

「うん、速い方だと思うよ」

「みんな運動出来ていいねぇ……」

「あ、いや、瑠美には瑠美の良いところが……。ほら、今日の瑠美のお弁当楽しみだな! 早く昼にならないかな!」

「お弁当は競技と関係ないし……」

 どんよりする瑠美と一生懸命に励ます兄。そうこうしているうちに、相澤の走順が回ってきた。

「相澤くん、頑張れ……!」

 位置につく相澤を固唾を飲んで見守る。

パン! というスタートの合図と共に疾風の如く飛び出す相澤。速い、速い。瑠美たちの前をあっという間に駆け抜け、一番でゴールテープを切った。

「よっしゃー!」

 相澤は嬉しそうに両腕をあげて咆哮する。それを見て瑠美は感嘆の声をあげた。

「すごい……!」

 兄は目をきらめかせる瑠美を見て、口をへの字に結びジト目で前を見つめる。そんな兄の様子に気付いた瑠美が首を傾げる。

「……? 何で変顔してるの?」

「変顔じゃないし」

 なぜ兄がむくれているのかよくわからなかったが、相澤が「1」と書かれた旗の元で「おーい」とこちらに向かって手を大きく振っていたので、一旦兄のことは置いておき、瑠美も大きく振り返した。

「すごいなぁ、相澤くん」

「そうだね」

 またジト目。兄がこんな変な顔をするのは珍しい。太陽が眩しいからかな……? そんなことを考えていると、恵衣が後ろからぽんぽんと肩を叩いてきた。

「いたいた、瑠美。そろそろ借り物競争の出場者、集合だよ」

「うげぇ、もうかぁ」

「ほらほら行くよ」

 渋々と腰をあげた瑠美は連行されるように集合場所へと向かった。




 百メートル走を終えて相澤が観客席に戻ってきた。兄の姿を見つけて隣に座る。

「あれ? 瑠美ちゃんは?」

「借り物競争行ったよ」

「そっか」

 相澤はふう、と息をつきながら水を飲む。それを横目で見ながら兄が労う。

「お疲れ。速かったな」

「ん? あぁ、ちょっと頑張っちゃった」

「瑠美がしきりに『すごい』って言ってたよ」

「えっ、まじで? 頑張った甲斐があったわ」

 身を乗り出して嬉しそうに目を輝かせる相澤の表情を見て、兄は何か言おうと口を開いたがすぐにそれを飲み込んだ。相澤はそれを見て少しの間黙考していたが、真っ直ぐ兄の目を見据えて言った。




「オレさ、瑠美ちゃんのことが好きだ」

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