得心
瑠美は図書委員の当番で図書室にいた。今日は当番が終わったら恵衣と学校近くのアイスクリーム屋へ新作のアイスを食べに行く約束をしている。さっさと仕事を終わらせて、秋限定のパンプキン&スイートポテトアイスを食べに行かなくては。
手際よく当番の仕事を終え、軽い足取りで教室へ戻ると、恵衣が誰かと会話をしているのが聞こえた。
……兄だ。あの二人が会話をしているなんて珍しい。このあいだの保健室の時みたく、空気が凍りつくような会話をしているんだろうか……。そう考えると、何となく気まずくて教室に入って行けず、本意ではないが盗み聞きをするような形になってしまった。とは言っても、何を話しているのかはほとんど聞こえない。
どのタイミングで入ろうかな……と思案していると、ガタっと椅子の動く音がした。
「(帰るのかな?)」
様子を伺おうとこっそり中を覗いてみると、予想に反して目に飛び込んできたのは、恵衣の胸ぐらを掴む兄の姿だった。驚きのあまり硬直する瑠美。
「(何をしているの……?)」
瑠美の心臓がドク……と低く嫌な音を立てた。頭の奥に血液が集まりぐらぐらと揺れている。
「(おこ、りそう)」
動揺と怒りとがごちゃ混ぜになってどうしていいかわからずにいると、兄が上体を屈め、恵衣の首筋に顔を埋めようとした。
「(何で? やめて、やめて、やめて……!)」
この時の、心臓の嫌な音。心臓を直接殴られたような痛みと苦しさがあった。親友を手に掛けられそうになった怒りはもちろんだが、それだけではない気がする。
兄が私以外の女子に触れている。兄が私以外の血を吸おうとしている。今まで私だけが特別だと思っていたのに――。
私以外に触れないでほしい。私以外の血を吸わないでほしい。私だけを特別に見てほしい。
これは。この気持ちは。
――嫉妬。
私は…………。
お兄ちゃんに恋をしているんだ。




