episode1;グァテマラⅠ
日々の日常に疲れ果ててきた会社員、太田雄也。
そんな中、不思議なカフェ、シエスタ」に出会う・・・
その日は、うざったいくらいに爽やかな天気だった。
彼、太田雄也は酷くいらついていた。会社員3年目にして、初の部下。はじめは喜んでいたものの、それも次第に笑えない環境に追い込まれていった。
思うように動いてくれない部下に再三の説明。理不尽な上からの圧力。部下の責任はすなわち上司の責任。上から言われたままに動いていた太田にとって、自分で人を動かすこと、そのうえ責任を負うことなど捌けるはずもなかった。
「もう、やめちまおうかな・・・」
徹夜明け、昼前になんとか帰ってこれた太田は自分の近所をぶらついていた。近所といっても、ただ家と会社を行き来する毎日。改めて町を見渡すのは久しぶりだった。
着替えるのも面倒だし、着替えといっても寝巻きくらいのものだ。
そう思った太田は、とりあえずスーツのまま町を歩くことにした。下手な格好よりもずっと真面目そうに見えるからだ。
「こんな店、あったか・・・?」
カフェ:シエスタ おいしいコーヒーでお待ちしてます
カフェ、シエスタ。こんな店、あったっけな。
自分の知らない、はたまた覚えていない店に興味がわいたのか、徹夜の影響の眠気を取りたかったのか、懐を確認した上でシエスタのドアをあけた。
「・・・・・お好きな席にどうぞ」
それが、太田の人生をささやかに変えるきっかけになったのだった。