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01

1話目です。


 とある森の中、一軒の家が建っていた。

 それほど大きくもないそれは、ログハウスに近い造りで、木で建てられている。家の周り、庭と思われる場所には、ハーブや薬草とわかる草花などが植えられており、よくわからない不気味な植物も端の方に生えている。


 その家の中の一室、そこで鍋の中の毒々しい紫色の液体をかき混ぜている娘がいた。

 鍋は火にかけられており、中の液体は沸々と煮立っている。


「よし、こんなものかな」

 そういって娘はかき混ぜるのをやめて、鍋の下の火種のない魔術の炎を消すと、傍に準備していたどろりとした黒い液体を加えてさらにかき混ぜる。


 そして……


 

「風邪薬の出来上がりっと。それにしてもこの風邪薬、なんで作る最中は毒々しいんだろ。いや、完成する時色が変わるところ見るのちょっと楽しいけどさ……」


 毒々しい紫色だった液体がスウッと綺麗な薄紫色の透明な液体に変わったのを見て、風邪薬を作っていた娘、サラは言った。







 秋月沙羅、改めサラ・トルティッシュです。

 森の中で今日も魔女やってます。

 

 この世界での魔女というのは魔術師と薬師の中間の魔術とちゃんとした専門職だ。魔術師は魔術を主に扱い、薬師は薬を扱う。魔女は魔術と薬に加え、魔法薬も扱う。

 ただ、魔女は何故だか、社交的でない者が多く、また、魔法薬を作っている時にはたから見ると不気味なことがあるため、怪しげなことをしている、と周りから気味悪がられることがよくある。

 たとえば今作っていた風邪薬とか。そんなに変なものを材料にしているわけでもないのに、何故か製作途中の色が何とも言えない毒々しい色をしている。



 魔女の中で本当に恐ろしげなことをしているのはごく一部だ。

 ちなみに師匠は私を造ったらしいが、それは魔術や魔女としての腕がすさまじかったからで、法に触れることはそんなにしていなかったそうな。

「そんなに」ってところがちょっと気になるけど……



 

「こんにちはー!サラ姉いるー?」



 トントンと戸を叩く音のあと、少年の声が聞こえたので、「はーい、いるよ!」と答えて、風邪薬の入った鍋をとりあえず作業台に移して、家の入口のドアを開ける。


 ドアの前には私が住んでいる森の傍の村の少年が立っていた。

 蜂蜜色で少し長めな髪の彼は大きめの籠を肩にさげている。


「はい。これ、うちの母さんから。野菜のおすそ分けだってさ」

 そういって少年、カルロは持っていた籠を渡してくる。

 受け取ると、中には立派に育った野菜が沢山入っていた。


「うわ、こんなにも!重かったでしょ、いつもごめんね」


「いいんだって、これ位軽いよ! それに、サラ姉の薬は良く効く薬をいっつもくれるしさ。母さんや近所のおばさんたちもサラ姉がくれた手荒れの薬が良く効いたって喜んでたよ」


「ふふっ、ありがとう。マリーさん(カルロの母)にもお礼言っといて。あ、そうだ、今日は木苺のタルトがあるから一緒にお茶にしよう。入って?」

 まだ外で話していることに気が付いたので、カルロをうちの中に誘う。


「やった!サラ姉のタルトっておいしいんだよね!」

 そう言って綺麗な青色の瞳を煌めかせて元気にはしゃぐカルロと一緒に家に入った。




 数年前、師匠が亡くなってから少し経って籠っていた森を出た時、始めに入ってみた村でカルロが病気にかかっているところに偶々出くわして助けたことが切っ掛けで、村の人々と知り合い、魔女だけどまったく気味悪がられなかったため、今でもカルロの村、そして元気になったカルロとその一家とは交流がずっと続いている。


 そんなわけで私は世間一般では気味悪がられることのある魔女だけど、基本的には気味悪がられることもなくカルロの村の傍の森の中でほのぼのと魔女をしているのでした。



 説明ばっかりですみません。

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