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刺青

作者: 白瀧翔子
掲載日:2011/10/11

刺青


 刺青(いれずみ)は古代、魔よけだった。


 宋時代(そうじだい)になるとそれは流行(りゅうこう)となりさまざまな刺青を身体に(ほどこ)すものがあらわれるようになった。


 ()という男がいた。


 彼は科挙(かきょ)に受かりたくて猛勉強するも、いつも地方試験(ちほうしけん)落第(らくだい)ばかり。


 ある七夕(たなばた)、一人の子供が李に声をかけた。


「僕はモホロ――あなたは一生懸命勉強しているのに科挙にうからないね。だから僕が殿試(でんし)までつれていってあげる」


 無邪気にわらう、モホロなる子供は李の足に抱きつとすう…と空に()けた。


 李はおどろいてあたりを探してもモホロはいない。


 けれど子供の笑い声がするので、恐る恐る太ももをみてみると、モホロは刺青になってそこにいた。


 モホロとは七夕に飾られる子供の人形である。


 李は(てん)が自分を選んだのだと思い、喜んで科挙を受けるため地方受験を及第(きゅうだい)し、ついに念願の殿試(でんし)を受けることができた。


 しかし、科挙の問題が全くもって、わからない。


 そのため李は己の太ももに向かって、



どういうことだ!



 そう問いかけてもモホロは答えはしなかった。


 不審に思った監督官は李を捕まえて身体検査をし、太ももにモホロの刺青を見つけた。


「これは私の分身だ!」


 李はヤケクソになってそうさけんだが、


「刺青をしたものが受験をするなど不埒だ」


 刺青が認められていた時代だとはいえ、それは武人階級(ぶじんかいきゅう)のものだけで、知識階級(ちしきかいきゅう)ではまだ忌み嫌われていた時代だった。


 ――結局、李は不合格となった。


 科挙の会場から追い出された李はぼう然と膝を折って天を仰いでいると、宝石を流したような紺天(こんてん)にモホロの声が響いた。


 殿試には連れていってあげるとは言ったけれど、受からせてあげるとはいってないよ――どうしても欲しいものなら最後は自分で未来を(つか)まなきゃダメだよ。たとえば牽牛(けんぎゅう)のようにね。


 アハハハ…、アハハ……、と少年の無邪気な声が李の耳にいつまでも響いていた。

この作品もこえ部でよんでいただきました。

http://koebu.com/topic/%E3%80%90%E8%A9%A9%E3%80%91%E5%A4%A9%E3%81%AB%E8%AA%93%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%80%80%E5%9C%B0%E3%81%AB%E7%A5%88%E3%82%8A


素敵過ぎるボイス!

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