表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

フォーチュナ劇場の宝石姫

巻き込まれた職員

作者: 夜乃桜
掲載日:2026/04/16

辺境都市にあるハンターギルドの早朝。宿直室の窓から差し込む朝日で目を覚ました男、ハンターギルド職員は、寝ぼけまなこで起き上がる。

ハンターギルドではもしもの時のために、職員が交代で宿直している。昨夜の宿直当番であった職員は身支度を整え、パンにチーズやハムなどを適当に挟んだ朝ごはんを終える。

ハンターギルドを開く前に、簡単な掃除と郵便物の確認をしなくてはならない。職員は掃除用のバケツを持って、水場とポストがあるハンターギルド裏口の扉を開けた。

そして固まった。


「……何、しているんですか?……ソウスケ氏」


ハンターギルド裏口で座り込んでいる宗助に、職員は声を掛ける。宗助は閉じていた目を開けて一言。


「気にするな」


気にするわ、の言葉を職員は飲み込んだ。

聞きたいことはあるが、相手はA級ハンター。へたな事をして怒らせる訳にはいかない。

全力で気にしないようにする職員は、裏口の水場から水を汲んでポストを確認。


「ん?フォーチュナ劇場?」


郵便物を確認していた職員は、珍しい差出人の手紙を見つける。

フォーチュナ劇場はハンターギルドのお得意様だ。辺境都市のイベントとなどで劇場以外の場所で公演をする際に、ハンターギルドに警護や護衛の依頼をしてくれたりする。依頼料をケチったりしないところもいい。

その依頼の際には、フォーチュナ劇場はわざわざハンターギルドに訪れにくる。今まで手紙を送ってくることは無かった。


「俺宛てか?」

「うわぁ!」


いつの間にか、疑問に思う職員の手元を宗助が覗き込んでいた。

そういえば、ポストの郵便物を確認している時、こっちをガン見していたような気がする。


「フォーチュナ劇場からの俺宛ての手紙だな」


圧が凄い。職員が冷や汗を流す。


「いや、あの……すぐに確認しますので!」


A級ハンター、宗助の威圧に負けた職員は、その場でフォーチュナ劇場からの手紙を開封。

職員が開封したフォーチュナ劇場からの手紙の中には、またしても白い封筒と紙が一枚。紙には「A級ハンターの宗助に渡してください」と書かれていた。白い封筒の表には「A級ハンターの宗助様へ」、裏には「フォーチュナ劇場団員、綾音より」と書かれていた。


「……確かにソウスケ氏宛ての手紙みたいですね」


職員は宗助のプロポーズ騒動の噂は聞いていたが、詳細は知らない。これはどういうことなのだろうかと好奇心が疼くが。


「そうか、ありがとう」


手を差し出し、早く寄越せと威圧する宗助に聞く覚悟は、職員にはなかった。



定時通りにハンターギルドが開き、依頼の手続きをするハンター達の対応が引いた時間帯。

依頼達成の報告をしに来たニールは、受付の机に頭を突っ伏す職員の姿を見てしまった。何があったのだろうか。馴染みの職員にニールは尋ねた。


「あの馬鹿、ギルドでもやったのか」

「どういうことですか?」


職員から朝の出来事を聞いたニールはあきれ顔。職員は首を傾げる。

文通から始めることになった綾音と宗助。最初、綾音は宗助の泊まる宿屋に手紙を送った。初めて綾音から手紙が来た時の宗助は、感動して何度も読み返していた。そこまでは微笑ましかった。

返事を書いた宗助は郵便ギルドを使わず、自分の足でフォーチュナ劇場に手紙を届けに行った。そして早朝から宿屋のポスト前で、綾音からの手紙を待つようになった。

早朝の宿屋前、A級ハンターがポスト前で待機。想像した職員の顔がなんともいえない。

その光景を目撃した他の宿泊客から、びっくりした、ちょっと恐いなどの苦情。そのため、宿屋の女将が宗助に注意、一応関係者であるローランド達も宗助の説得に当たった。

宗助が駄々こねた結果、宿屋からハンターギルドに郵便先を変更することになった。

ハンターは拠点を持たずに自由に居場所を変えたりする。なので、ハンターギルドがそのハンター宛ての手紙や荷物などを預かったりすることもある。それを利用することにした。

余談だが、このことをフォーチュナ劇場に伝えにいった際に、モンドは大笑いで呼吸困難。綾音はわかりました、とちょっと困り顔の微笑で了承。コーデリアは引いていた。


「……そういうことだったんですね」


早朝の出来事の理由に安心してよいのか、郵便先が変わってしまったことに嘆くべきか。職員はなんともいえなくなった。目撃してしまった職員に、ニールは同情。


「ちなみに、ソウスケ氏とエメラルド姫は今どんな感じなんですか?」


プロポーズ騒動の実態に興味津々の職員が前のめりで聞く。

余談だが、A級ハンターの宗助がフォーチュナ劇場、エメラルの宝石姫にプロポーズしたことは、ハンターギルドだけではなく、辺境都市全体に広まっていた。

宗助と綾音は文通から始めることになったが、それだけで宗助が大人しく出来る訳ではない。現にひと騒動を起こしてくれた。それはまぁひとまず置いておこう。

宗助は文通だけではなく、フォーチュナ劇場、綾音に会いたいと熱烈に希望した。そんな宗助の希望に、綾音は拒まなかった。

しかし、フォーチュナ劇場の宝石姫である綾音は、色々と忙しい身だ。そんな綾音に毎日会いに行く訳にはいかないし、毎晩フォーチュナ劇場の客として行く訳にはいかない。

綾音の迷惑になることはしたくないと宗助は自重した。そこまでの常識はあったかとローランド達は安心した。

団長代理、コーデリアを交えた話し合いの結果、宗助がフォーチュナ劇場に訪れるのは三日に一回と決まった。ちなみにフォーチュナ劇場の客として訪れるのもカウントされる。

今のところ、個人的に宗助と綾音が会うことはなく、フォーチュナ劇場の客として宗助は訪れていた。フォーチュナ劇場の営業は夕方からだが、その前の時間帯から、フォーチュナ劇場の入り口前で待機する宗助の姿は、有名になりつつある。

余談だが、宗助がフォーチュナ劇場の裏手、寮に手紙を届けることはカウント外になっている。運がよければ、綾音に会えて世間話程度の会話が出来た。


「……ソウスケ氏って、その健気っていうか、粘着っていうか……」

「本人達が納得してるならいいんじゃないか。じゃないとユニコーンに蹴られるよ」


宗助の行動に引く職員、ニールはもう諦めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ