じフレ
この小説には、自殺などの言葉が出てきます。心身に不安を感じる方などは控えることをお勧めします。
またフィクションであり、自殺を教唆するものではないことをご理解くださることをお願い申し上げます。
また今後、改変する可能性があります
夜の散歩を人に伝えるとき、それは生存本能が限りなく低下したものだと彼女は言った。それが死んでいい理由になるかは後で議論するとして、さて、彼女が僕に求めていることは何なのだろうか?彼女の行い、つまり彼女がしようとしていることは僕が止めるべきなのか?飛び降りは辛いだけというべきか、死なないでと言うべきか、とにかく目の前に投身自殺をしようとしている人がいたらそう言うべきなのだろう。だがあいにく僕も常時自殺願望がある者、人をどうこう言う資格は無い。さてどうしたものか...
夜の散歩とは聞こえがいいものだがそれは深夜徘徊なのではないかと言われたらそうですねとしか言えない。そんな夜の散歩を始めたのは家庭環境とか日頃の鬱憤とか、物語的な小説を作れるような理由なんかなくただ夜の不安定さを肌で感じていたいとか意味の分からない理由しかない。ただほんの少し眠りが良くなるというメリットは夜の散歩を毎日する理由としては十分すぎるものだった。とはいってもどこか知らない場所に行ったりするような冒険とかはせず、ただコンビニへの道を往復するだけの道だった。僕が住んでるところは田舎なので誰も咎める人がいない、まして警官なんているわけもないところなのでこの僕のちょっとした非行は誰の耳にも目にさえも入らなかった。あの日は特に何にもない日だった。ただいつもは素通りするコンビニで飲み物を買ってみただけの微かなイレギュラーをした。僕を含めて二人。こんな田舎町でしかもちょっと着飾ったようなこんな夜中には見ないような人がいた。まぁそこで何かあるわけもなく飲み物を手に取り素早く会計を済ませ、店を出た。その時には彼女の顔も思い出せないくらいには僕にとっては何ともない出来事だった。
翌日。僕は多少の鬱屈を抱えながらの深夜散歩になった。学校の先生に呼び出され将来の夢やら進路がどうのこうの。今思えば笑える話だな。だって明日生きてる保証がない人間に将来のビジョンなんてあるわけないじゃんか。まぁ、そんなつまらないことをうじうじと悩んでいても仕方がないので、今日はコンビニでたい焼きでも買って帰ろうか、そんなことを考えていると昨日の女の子がいた。屋上に。僕の近所にある廃ビル。昔に作られて危ないかなんかで立ち入り禁止の看板が置かれている場所である。僕はふらっとそこへ踏み入ってしまった。
屋上につく前に落ちているんじゃないかという考えは杞憂に終わりそこには、昨日の雰囲気とはまるで違う女の人がいた。よく見たら20代後半くらいだった。
「死ぬんですか?」
「おぁ、君はさっきコンビニのとこにいた少年か。そうだね、死ぬつもりでここに来たけどなんとなく考えちゃって。さすがに少年の前で死ぬわけにはいかないからね」
「そうしてください。もし今ここから飛び降りたら僕も死ぬので」
「ははっ、少年。あんまりそういう冗談は言わない方がいいよ」
「嘘は言わないですよ。僕も日常的に自殺願望がある人なんですから」
「…ネットで見た子供の自殺ってのはこんなのなんだな。なおさら死ぬ気が失せたよ。少年も帰りな。年はいくつ?」
「17です。」
「君、高校生か。親に迷惑かける前に帰りなよ。」
「いえ、心配する親はもう死んでますので、お構いなく」
「あぁ…ごめん」
「別に今更のことです。そう言えばなんで自殺しようと思ったんですか?」
「まぁ、袖振り合うも他生の縁ってやつかな。あんまいい話じゃないけど話すか」
そういって彼女はぽつりと話し始めた。
最初の違和感は小学生かな。昔の私は、ひどい片頭痛持ちでね一か月に何回かガンガン頭が割れるような感じになることがあって、とにかく痛みから逃げたくてその度に保健室に行く日々を過ごしてたんだ。ある日、その日はいつもの頭痛より痛みが強くて、いつもみたいに落ち着いたら授業に戻るみたいなのが出来なくて仕方なく早退することにしたんだ。お母さんが迎えに来て、申し訳ないな、仕事中にごめんって思ってたら保健室の先生がねこう言ったんだよ。
“風香さん、一か月に何回も片頭痛で仮病してるんです。お母さんも家に帰ったら話して下さい”って
私はその時気づいてしまったんだ。人の優しさは偽物だし、信用した人ほど馬鹿を見る世界なんだって。帰った後も親になんか言われた気がするけど何一つ頭に入らなかった。次の日から私は保健室に近づかなかった。体調が悪くても怪我しても保健室には行かなかった。どんな病気よりもどんな痛みよりも黒く染まった人の心の方がよっぽど私にとっては辛かった。初めは保健室の先生が苦手だったのが親、クラスメート、先生、同性、異性と日に日に苦手なものが増えていって気づけば学校に通う高橋 風香というキャラを演じるようになっていった。そして孤立していった。そうして生活しているとね、ふと思うようになってくるの。自分は死んでるんじゃないかって。何をするにしてもそこに自分の意思はないし、人を信用できないそんな自分は生きてる人としてカウントしていいのかってそうして感情はやがて一つの答えに行きつくの。
“自殺したい”
そうして何回も試みたけどいつも直前で体が動かなくなるの。本能ってやつなのか、心のどかにまだ死にたくないって感情があるのか。そうしてできないまま気づけば大学生になっていた。そのころにはもう無意識でも演じれるくらい自分じゃなくなっていた。そうしたある日、一人の男性から声をかけられた。顔も声も分からない人。そいつはかわいいだのどうのこうの言ってたけどまぁ私としたいがために声かけてきたんだなってすぐに分かった。よくいる上っ面だけの奴。でも、ふと思ったの。快楽があるのならばそれは少なからず生きてる人なしえているんじゃないかって。それで昨日、あぁそういえば君がいたね。ゴムを買って臨んでみたの。結果はね自分でも面白かったよ。快楽なんて何一つない。痛み、不快この世の悪い言葉たくさん詰め込んでも表せなかったくらい苦痛でしかなかった。あぁ身体さえも拒絶してるんだって。それでまた自殺しようって思ったの。
で、いつもしてた縊死じゃなくて今回は投身にしようって、その方があの最後の恐怖が少しは無くなるかなって。そんなときの君さ。運がいいのか悪いのか。とにかく死ぬ気が失せちゃった。
「そうですか。まぁその方がここら近辺が自殺騒ぎにならずに済むし、何より心霊スポットにならなくて済むので僕はありがたいですね。」
「はは、あくまで自殺は止めないんだね。」
「えぇ、生きるか死ぬかの権限なんて僕にはありません。その人自身の人生に介入できるほどできた人じゃないですし。」
「あはは、なんかくそ笑えてくるな。ここには誰一人、生きることを肯定しない。小説にでもしたら炎上しそう。君とは友達になれそうだよ、いや自殺フレンド略してじフレってとこかな」
「まぁ、僕も自分以外で自殺したいって人にはであったことがないですからね。どうせいつかは死ぬ身。じフレ..なんかいいですね。今日からよろしくお願いします。」
「うん、よろしく」
そうして僕らは帰路についた。じフレ…不思議な関係が世界に生まれた。
もう少しだけ、死ぬのは先になりそうだ。




