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他の女と子供を作ってきて「愛している」はないでしょう 〜婚約破棄から始まる私の人生〜【連載版】  作者: ピラビタ


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3/16

歩く道に花は咲く

 学園に正式な通達が届いたのは、それから一週間後のことだった。

 フェルク家とヴァルディア家の婚約は、双方合意のもとで解消された――

 表向きは、そう記されている。


 だが、事情を知る者は皆分かっていた。

 これは“穏便な形を取った断罪”だと。


 アルヴィン・フェルクは、教室で完全に孤立していた。


 これまで彼を取り巻いていた友人たちは、いつの間にか距離を取り、話しかける者もいない。

 かつて誇らしげに語っていた家柄も、今では重荷でしかなかった。


 「……違うんだ」


 すれ違いざま、彼はレイナに縋るような声を投げかけた。


 「全部、俺が悪いわけじゃない。家が、周りが……」


 レイナは足を止めた。


 一瞬、胸の奥にかすかな痛みが走る。

 けれどそれは、情ではなく、過去への名残だった。


 「アルヴィン様」


 静かに振り返り、はっきりと告げる。


 「誰のせいかを考える前に、向き合うべきことがございますでしょう」


 それ以上、言葉はなかった。


 彼女はもう、説明を求めていない。

 理解も、期待も、すでに手放していた。


 一方、マリエ・ルフォールの転落は、より鮮烈だった。


 「どういうことですの!? 話が違うではありませんか!」


 学園の談話室で声を荒げる姿を、多くの生徒が目撃している。


 「私はフェルク家に迎えられるはずだった!

 この子だって――」


 だが、周囲の視線は冷ややかだった。


 彼女が“選ばれた存在”ではなく、

 “問題の象徴”として見られていることに、マリエ自身が気づいていない。


 貴族社会は残酷だ。

 同情よりも、評価を優先する。


 未婚で身籠ったこと。

 それを誇示し、他者を踏みつけるように振る舞ったこと。


 そのすべてが、彼女自身の首を絞めていた。


 「……ルフォール家は、当面社交を控えるそうですわ」


 囁かれる噂に、レイナは表情を変えなかった。


 ただ、静かに受け止める。


 そして迎えた、最後の場面。


 婚約解消後の正式な挨拶の場で、レイナはフェルク家当主と向き合っていた。


 「……息子の不始末、誠に申し訳ない」


 深く頭を下げられ、彼女は一瞬戸惑う。


 だが、すぐに背筋を伸ばした。


 「いえ」


 凛とした声で、はっきりと。


 「学ばせていただきました。

 自分の立場と、守るべきものを」


 その言葉に、当主は静かに目を伏せた。


 帰り道、学園の庭園を歩きながら、レイナは空を見上げた。


 朝と同じ場所。

 けれど、感じる空気はまるで違う。


 もう視線を避ける必要はない。

 花壇の脇を選ばずとも、堂々と歩ける。


 「……大丈夫」


 小さく呟いた言葉は、自分自身へのものだった。


 控えめであることは、弱さではない。

 黙っていたからといって、何も考えていなかったわけではない。


 ただ、声を上げるべき時を、待っていただけ。


 レイナ・ヴァルディアは、ゆっくりと前を向いた。


 失ったものよりも、

 これから選び取る未来のほうが、ずっと大切だと知ったから。


 朝の光は、変わらず彼女を照らしている。


 けれど今度は、

 その中を、胸を張って歩いていける――。

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