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他の女と子供を作ってきて「愛している」はないでしょう 〜婚約破棄から始まる私の人生〜【連載版】  作者: ピラビタ


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13/17

穏やかな日々、そして……

 研究が始まってからもいつもと変わらず季節は巡っていた。


 学園の中庭に植えられた樹々は、芽吹き、葉を広げ、そしてまた色を変えつつある。講義の合間に吹き抜ける風も、どこか湿り気を帯び、遠くで夏の気配を知らせていた。


 私とエドワードの研究は、派手さとは無縁だった。


 成果が出た、という実感よりも、昨日できなかったことが今日はできる、という程度の変化。その繰り返しだ。


「……また、少し安定しましたね」


 書庫の一角。積み重なった資料の間から、エドワードが小さく息をつく。


「ええ。集中の持続時間が伸びています」


 それは彼自身の変化でもあった。


 以前のような戸惑いは薄れ、仮説を立てる言葉にも迷いが少なくなっている。慎重さはそのままに、前へ進む覚悟だけが、静かに育っていた。


 学園内で、私たちの名が話題に上ることも増えた。


 賞賛ではない。

 疑問でもない。


「……最近、あの二人、ずっと一緒よね」


 そんな程度の、ささやき。


 だが、それで十分だった。

 魔導研究は奇跡ではない。日常の延長線にあるべきものだと、私たちは考えていたから。


 エドワードの目的も、変わらない。


 医療への応用。

 誰かを救うための理論。


 村での出来事は、私たちの間で多く語られることはなかった。

 だが、あの時の感覚――触れず、命令せず、ただ流れを整えるという感覚は、確かに研究の芯として残っている。


「……レイナさん」


 ある日の夕刻、研究室を出る直前に、エドワードが呼び止めた。


「この研究、急がなくていいと思うんです」


 珍しく、彼の方からそんな言葉が出た。


「遠回りでも、確実な形で……」


「ええ」


 私は即答した。


 急ぐ理由はない。

 けれど、止まるつもりもなかった。


 その日も、何事もなく終わるはずだった。


 研究室に戻り、資料を整理し、次の講義の準備をして――

 いつも通りの一日。


 だが。


 廊下を歩いている途中、呼び止められた。


「……レイナ」


 聞き覚えのある声。


 振り返ると、そこにいたのはアルヴィン・フェルクだった。

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