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本音

一連の出来事が収まり、国にも平穏が訪れた。

セピアは父である国王のもとを訪れ、胸の内を打ち明ける。


「父上、私、記憶を取り戻しました。そして、王位を継ぐつもりはありません。」

「なんだと?」国王は目を見開いた。

「私はただ、幸せな家庭を築き、平穏に生きたいだけです。もちろん、王族に生まれた以上、務めは果たします。しかし、私よりも王としてふさわしい人がいるはずです。」


国王はしばらく沈黙した後、問いかける。

「ならば、お主は誰が良いと思う?」

「そうですね……エルヴィン兄さんです。あの人は優秀で、視野も広い。そして、帝王学をよく一番理解しています。次期国王として最もふさわしい方だと思います。」


国王は小さく頷く。

「そうか…。まぁ、そのことは後々考えるとする。それより、記憶が戻り、国のために尽くすなら、離宮ではなく本殿へ戻ってこい。もちろん、レビリア嬢とリオも一緒にな。」

「ありがとうございます、父上。」


セピアは深く頭を下げ、胸の奥に温かい決意を刻んだ。家族と大切な人を守るため、そして国を正しい形で導くための新たな一歩を、今踏み出したのだった。


***


離宮の庭を抜け、セピアは慎重に歩を進めた。腕にはまだ包帯を巻いたままのレビリアを抱え、リオの小さな手を握る。


「おねえちゃん、痛くない?」リオの瞳は心配そうに潤んでいた。

「大丈夫よ、リオ。セピア様が一緒にいてくれるから」と、微笑みながらレビリアは答える。


本殿の扉をくぐると、廊下の静けさに包まれ、日常の温もりが二人を迎えた。セピアはレビリアをそっとベッドに寝かせ、その横に座る。


セピアはレビリアの手をそっと握り返し、優しく言った。

「ねえ、レビリアたん。もう痛いのは終わりだよ。ここにいる僕たちが、ちゃんと守るから。」

レビリアは微笑みながらセピアの手に自分の手を重ねた。

「ありがとう、セピア様。こうしてあなたがいてくれるだけで、安心できるわ…。」


リオは二人の手に両手を重ね、にこにこと笑う。

「僕もおねえちゃんもセピア様も大好き!」

「私もよ、リオ。私たちは家族だから」とレビリアはリオを抱きしめる。


セピアはその光景を見つめ、心の底から安堵を感じた。

——守りたいものはここにある。家族、仲間、大切な人たち。もう二度と、誰にも奪わせはしない。


その夜、窓から差し込む柔らかな月光の下、三人は寄り添い、静かな時間を過ごした。セピアはレビリアの肩に手を添え、リオの頭を優しく撫でる。


「これからも、ずっとこうして一緒にいようね」とセピアがささやくと、レビリアは小さく頷き、リオも満面の笑みで同意する。


暗闇の中で、穏やかな寝息だけが響き、家族の絆は再び確かに結ばれたのだった。

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