子供が二人いるのは気のせいですか?
「はーい、セピア様。スプーンはこっちですよ〜」
「わぁ〜い! たべる〜!」
「上手上手、えらいね〜」
……うん。
えーっと。
リオくん、保育士ですか?
だって今、明らかに王子をしつけてる側よね!?
どっちが4歳なんですか? ってくらい、しっかりしてる。
「おねーちゃん、セピア様のこと、ちゃんと見ててあげてね?」
「えっ、あ、うん……」
(あれ? 私、子供に指導されてる?)
テーブルの上では、セピアが一生懸命スープを飲んでいる。
それだけで、リオは拍手して笑顔。
その笑顔が……もう、あまりに可愛すぎて胸が苦しい。
(この子、反則……)
リオくんはまるで、天使がそのまま実体化したような存在だった。
瞳がきらきらしていて、声もやわらかくて、
人見知りもしないし、話し方が穏やかで丁寧で、
何より、セピアのことをちゃんと「見捨てない」子。
それがわかってしまって、余計に心を打たれる。
だけど──
「おねーちゃん! あーんして?」
「えっ、私!?」
唐突に、セピアが私のスプーンに手を伸ばす。
「……ちょっ、ダメ! これは私の……っ、やめっ、あーもう!」
そして取り返す前に、自分の口に突っ込んだ。
「おいし〜! レビリアたんのごはん、すっき〜!」
「誰が“たん”よ、“たん”て!!」
(このアホ、ほんとに22歳なの……!?)
私はスプーンを持ちながら、改めて考えた。
──これ、子供が二人いるわけじゃなくて?
否、リオはともかく、セピアのこの精神年齢は……保育対象……。
「はぁ……なんか私、政略結婚のはずが保育士に戻ってる気がする……」
「ん〜? レビリアたん、なにブツブツしてるの〜?」
「うるさい。黙ってスープ飲んでなさい」
「は〜い!」
素直だけど、完全に子供。
……でも不思議と、セピアの笑顔を見ると、胸がちくりとする。
元の彼がどんな人だったのか、私は知らない。
けど、リオがこれだけ懐いているのなら、悪い人ではなかったんだろう。
「……はぁ。ほんと、私、なんでこんな役回りに……」
でも、リオの小さな手が、私の袖を引いた。
「でもね、セピア様、ほんとはすっごくやさしいんだよ?」
そう言って笑うその顔に、私はまた、撃沈しかける。
やばい。この子……沼かもしれない。




