表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/55

二人を守るために

「わぁぁ……レビリアたん、きれいぃぃ〜〜♡♡」


「うんうん!ほんとにお姫さまみたいだよ、おねえちゃん!」


「……ふふ。ありがと。二人も、本当に似合ってるわよ」


***


その空気を、乱す者がいた。


「ごきげんよう、レビリア様。まさかここで、悪名高き公爵家令嬢に再会するとはね…」


そう言って近づいてきたのは――クラリーチェ。


彼女の声は、会場にちょうどいい大きさで、周囲の視線を集めながら続ける。


「セピア様もリオ様もお元気そうで……ええ、すっかり“お世話係”が板についたわね。

あなたがこの場にいるのは、ただの同伴者? それとも、第三王子の“介護士”かしら?」


場がピリつく。

周囲の貴族たちが、面白がるようにこちらを伺っていた。


セピアは目をぱちくりとさせて、手を握ってきた。


「レビリアたん……?」


私は一瞬、いつものように“笑って流す”か迷った。


けれど。


(……もう、黙ってるだけじゃ、守れない)


私の後ろには、今にも泣きそうなセピアと、手をつなぐリオ。


だから私は、にこりと笑って──一歩、前に出た。


「介護士……ふふ、言い得て妙ね。

でも違うわ、私は彼らの“家族”よ。少なくとも、あなたみたいに見捨てたりはしない」


「……なっ」


「それに、“悪役”って、誰が決めたのかしら?

あなたこそ、セピア様が“普通の王子”だった頃に縋りついて、“アホ”になったとたん切り捨てたんですものね。世間的に見たらどちらが"悪役"かしら?」


クラリーチェの顔から笑みが消えた。


貴族たちがざわめき始める。


「では、あなたは今のセピア様を――」


「大事に思ってるわ。

“王子”だからじゃなくて、“セピア”だから」


その言葉を、セピアがじっと見ていた。


いつもの無邪気な笑顔じゃない。

何か、言葉にならない想いが、その瞳の奥で、わずかに揺れた。


***


「……はて?……」


ポアロが少し離れた位置で、静かに呟いた。


「セピア様……今、少しだけ……“昔の表情”をされました」


***


クラリーチェは唇を噛んでその場を離れ、

ガゼルの元へと戻っていく。


「……やはり、邪魔ね。あの女」


ガゼルは静かに頷いた。


「ならば、“次の一手”を使う時だ」


その“罠”の糸が、ゆっくりとレビリアへ絡み始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ