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1-0: よくわからないままに重なったモノ

「どうだった?」


「うん……」


 適切な感想が思い付かないが無反応もどうかと思った俺は、所在なく腰掛けたベッドで質問に背を向けたまま言葉にならない言葉を返した。


「『そんなもん』なのよ、結局ね」


 たしかに、それは事実であるのかもしれない。


 ただ、だからと言って俺が「そうだね」と返すのはどうにも間違いのような気がして、結局今度は黙ることにした。


 事が終わった直後に俺の下からすり抜けていった()()()()は何事もなかったように早々に身支度を調えながら言う。事も無げに言い放つ。遊び慣れているということではないだろうが、その感情の持ち方は明らかに先ほどまで童貞だった俺とは違っていた。


「あの……」


「何?」


 数時間前から今に至るまで、この調子も変わらない。


「その、……この後って」


「うん? 別のところでヤる? それとも延長する?」


 キャメルのプリーツスカートを翻しながら問うてくる。


「ああ、いや。その、そういうことじゃなくて……」


 もう出ないということは一切ないが、今はそういうことを訊いたわけじゃない。たしかに俺だけが満足したという事実から逃れることはできないのだが。


「とりあえず、あの、……ココの代金とか」


「ああ」


 カノジョが先払いした分の金額は覚えていたが、こっちが少し配分高めになるようにする。完全割り勘にするのは違う気がした。


「お釣りは要らないから」


「そういうの、逆に要らないけど」


「……あー、いや、いろいろあるというか。とにかく気にしないで」


「そ」


 折れてくれて助かる。


「あとその、連絡先とか、交換、……とか、その」


 絵に描いたようなしどろもどろを繰り返す。我ながらダサすぎる。


 でも仕方ないだろう。この次を考えてるような雰囲気は、コチラ側には全然漂ってきていないし。


 ただひとつだけ、どうしても気にかかることがあったから。


 だからこそ俺は思わず、ダメ元でこんなことを言ってしまったんだと思う。


「……ああ」


 俺が言い淀んでいる数秒間であっという間に支度を終わらせたカノジョは、思い出したようにスマホを取り出す。


 あれ? 良いのか。


 交換して良いのか、連絡先。


 ――マジか。


「ハイ」


「……ども」


 無事にID交換完了。こんなことすらも呆気ないのかと、さながらカルチャーショックのようなものを受けてしまう。


「シたいなら別に、いつでもイイから。どうせ同じ学校だし」


「あー、……うん」


 ――むしろやりづらさみたいなことがあるんだけどな、コッチとしては。


 そういうためだけに声をかけたわけではないんだけどな、一応は。


 とはいえ、最初に思っていた方向性とは全く違うのだけれど、今後がないわけではなくなったのは良かった――のかもしれなかった。



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