転校してきた天使
学校に登校した俺は時間を見る。するといつも単語テストの日についている時間よりだいぶ遅れていた。
「すまん、遅れた。」
「おう、佑樹か。お前、珍しく遅かったじゃねぇか。今回は余裕があるのか?」
そう言って俺の前の席で単語を勉強しているのは俺の幼馴染で親友の茂原累だ。
茶髪の爽やかイケメンで学校での人気も高い。
でも本人はあまり恋愛に興味がないらしく、彼女はいない。めちゃくちゃ勿体無いと思う。
「いや、ちょっと朝用事があってな。だから、正直やばいかもしれん。」
「今からやって10分で暗記か。…まぁ、追試頑張れ」
「勝手に諦めるな!」
うちの高校は単語テストに追試がある。受からないと帰宅部の貴重な放課後がなくなってしまうため。俺らはいつも合格できるように必死なのである。
ん?なぜ家でやらないのかって?
真の帰宅部は学校で学校の勉強を終えるのだ。
流石にテスト前は勉強するがな。
「そういえば、あの噂知ってるか?」
「ああ、あれだろ。中学生時代の呼び名が「天使」って呼ばれているやつが転校してくるってやつ」
「そうそう。なんかそいつうちのクラスに転校してくるらしいぜ」
「えっ、まじで?」
「あぁ、もしかしたら、ワンチャンお前にもチャンスがあるかもな」
「いやいや、流石に俺もそのレベルの高嶺の花に手を出す度胸はないって。」
「ていうか、反応した俺も悪いけど、俺今回の単語テストがやばいんやって。話しかけないで頼むから。」
「悪い悪い。まあ、でも佑樹。もう手遅れだぞ」
「え?」
ーーキーンコーンカーンコーンー
「あっ……」
****
「では、転校生を紹介します。と、いってもみなさん知ってるみたいですけどね。」
今話しているのはうちの担任の加藤先生だ。
とてもしっかりとした先生でいつもはとても優しい。男性人気も女性人気もある先生だ。
あんな素敵な女性なのに独身らしいぜ。信じられるか?いっそのこと俺がもらいたいぐらいだ。
ん?なんだ。単語テストはどうなったって?
……察せよ。
「では、天宮さんどうぞこちらへ」
「はい」
そう言って明るい声で入ってきたのは銀髪の髪でとても整った顔、そして綺麗な体をしているとても見覚えのある少女だった。
「おぉ〜!」
「可愛い!!」
「まじで天使だ」
クラスから歓声が沸く。
恋愛に興味のない塁でさえも声に出してないだけでめちゃくちゃ興奮しているようだ。
いや塁だけでない、普段騒がないような奴も含め、うちのクラス全員が騒いでた。
……俺以外の。
「みなさん、静かに。では、天宮さん自己紹介をお願いします」
「はい、みなさんこんにちわ。天宮望です。
親の都合でここに転校してきました。
分からないことがあったら教えてください。お願いします」
彼女は礼儀正しくお辞儀をして笑顔を向けた。クラスのうちの何人かが「ぐはっ」と言っていたのが聞こえた。
みんなが祝福ムードである中、俺は1人だけ頭をめぐらせていた。
彼女、天宮はおそらく朝あった子に違いないと思う。しかし、あまりにもキャラが違いすぎている。一瞬、人違いも疑ったがあの容姿を間違えるわけがない。
朝のあれが寝ぼけていただけという可能性もあるが、おそらく素の状態だったと思う。
だから、今の状態が仮面をかぶっていると思われるが仮面をかぶっただけでここまで変わるのかという疑問もある。
「では、天宮さんは藤井くんの隣の席ということで。」
「……え?」
そう俺が思慮を巡らせているうちに彼女が俺の隣に座ることになった。
周りからは嫉妬や妬み一部では恨みの視線を向けられた。
正直、怖いからやめてほしい。
「よろしくね、藤井くん。」
「おう、よろしく」
天宮は俺に挨拶をしたあと自分の席に座った。そんな彼女の横顔を眺めながらやっぱり彼女は朝の人物と同じだと感じる。
しかし、雰囲気というかなんというか何か壁のようなものを感じる。
そうして、考えながら彼女に見惚れていると
「おい、佑樹。お前なに見惚れてんだ。授業始まるぞ」
「おお、悪い悪い。」
俺は塁に声をかけられたことで現実世界に意識を戻した。
まぁ、考えていても分からないものは分からなし、どうせ彼女との付き合いも隣の席としての付き合いぐらいだろうと思い考えるのをやめた。
ちなみに、朝のことを言いふらすつもりはない。
明らかに性格が変わっているのには何か理由があると感じたからだ。
「で、あるからここは……」
授業を受けていて気づいたことは、彼女は頭がとてもいいということだ。
先生に当てられてもスラスラと答えるし、
クラスの子が分からないところを聞いたら
とてもわかりやすく教えていた。
そして、もう1つ分かったことは天宮の今の雰囲気である。
朝あった彼女は、どちらかというと小動物的な可愛さで” 守ってあげたい”と思う感じだった。
しかし、今の彼女は漫画に出てくるような慈愛に溢れたとても優しい天使のようで俺も何回か見惚れてしまっていた。
そんな様子なので、昼休みにはもうみんなから「天使」と呼ばれるようになっていた。
「いやー、まじで可愛いよな。天宮さん。」
「仕草の一つ一つが天使のように美しく、性格もいい。まじで最高だわ」
今まで10回以上告白されても、なびくこともなかった。塁ですら若干惚れかけているように見えるのだから彼女の魅力は「悪魔」と称すこともできるかも知れない。
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放課後、俺は学校の宿題を教室でやっていた。帰宅部たるもの早く帰った方がいいという派が多いが、俺は家での時間を大切にしたい派なので学校で宿題をある程度やってからいつも帰っている。
ちなみに塁は家でやるタイプなので俺は基本1人でやっている。
やる場所に関しては図書館がほとんどである。とても静かで教室よりも玄関から近いためよく使っているのだ。
気分次第では今日のように教室でやることや普通に家に帰ることもたまにある。
「そろそろ帰るか」
俺は今やっている宿題にある程度目処をつけて帰ろうとした。今日は単語テストの追試もあり少し遅くなってしまった。
俺は家に帰ってから何を食べるかを考えながら片付けをしていた。
「へぇ、君は思ったよりも真面目なのね」
後ろから聞き覚えのある声がして俺は後ろを振り向いた。
するとそこにはまた違う仮面を被っている天使がいた。




