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閉ざされた空間2

「寝ろって言われても素直に寝ないのがセルダスよね、まったく勉強のどこが楽しいのかしら。でもいい加減昼夜問わず勉強しているのに少ない睡眠時間の間にあんなのが毎晩やってきてブツブツ言われ続けていたら絶対体を壊しちゃうわ。はあ…もうこうなったら力ずくでお昼寝させるしかないわね。よ~しやるか!」


レニアは朝食を食べた後、セルダスと別れて自分の部屋に戻ってしばらくはベッドの上でボーっとしていたのだが、急に起き上がり、勢いよく部屋を飛び出した。

勢いよく階段を駆け下りてセルダスの部屋に向かって走っているとノア―ヌが見えた。


「おば様」

「あらレニア姫、どうかなされましたか?」

「おば様、今からセルダスの部屋に行くの?」

「ええ、朝の様子が気になったものだから」

「おば様はお仕事があるのでしょう、私が様子を見てくるわ」


「そう? じゃあお願いしようかしら、セルダスのことだから、寝ていなさいって言ってもきっと本を読んで起きているでしょうからきちんと眠るように言ってくださいませね」


「はい、そのつもりよ」

レニアの言葉にノアーヌは頷きながらほほ笑み返し、セルダスの部屋から離れて行った。


「おば様たちの寝室からは離れているからきっとおば様は気付いていないはずだわ。今の内になんとかしないと」


ようやくセルダスの部屋の前についたレニアは大きく深呼吸をして勢いよく扉を開いた。


「セルダス!」

レニアが勢いよく部屋の扉を開き部屋の中に入ると、ベッドの上に腰かけて本を読んでいいたらしいセルダスが驚いた拍子に持っていた本を話本が宙を舞って床に落ちていた。


「レッレニア姫、どっどうしたの?」


「どうしたのじゃないでしょ? 今は睡眠をとらなきゃだめじゃない」


あわてて床に落ちた本を拾うためにベッドから立ち上がったセルダスよりも早く手に取ろうとしていた本を奪って自分の胸に抱え込んだレニアがセルダスを睨みつけた。


「あっ・・・そうなんだけど、眠るとせっかくの自由な時間がもったいないと思って」


「はぁあああ? そんな疲れた顔して後で倒れたら余計あなたの大好きな勉強ができなくなるわよ。きちんと寝ておかなきゃだめじゃない」


「でもレニア姫、昨日図書室で面白い文献をみつけたんだよ」


そういって本を返してほしいというかのようにレニアの前に自分の手を差し出しているセルダスにレニアはその本を返そうとせず、胸に抱きかけ片手でベッドの上によじ登ると布団の中にもぐりこんだ。


「きちんと昼寝しないと返してあげないわ。さあ、あなたも横になりなさいな。私があんな疫病神がきても追い払ってあげるから」


「疫病神って・・・彼はラデュル神だよ」


「名前なんてどうでもいいわ。自分でできないもんだから私達に頼ろうとしつこいのよ。この城は安全だってランナ先生はおっしゃっていたのに、聖水の効力が消えてきたのかもしれないわ。まったく、私がキューラ城でなんだかおかしいってあれだけ言ったのに、誰も私のいうことを信じてくれないんだもの」


「この間も言っていたね。レニア姫は何がおかしいって思うんだい?」


「何って・・・それがわかったら苦労しないわ。あそこにいても誰かが呼んでいるような気がするんだけどその原因がわからなくて全くスッキリしないのよね。あの城の最下層にある地下室にも入れてくれないし」


「もしかして、君にも聞こえるのかい?」

「ええ、聞こえるわよ。ただ、うっとうしいからキューラ城では耳栓をして眠るようにしているんだけど耳栓忘れてきちゃって」

「・・・」


レニアのあっけらかんとした言葉にセルダスは返す言葉を失っていた。


「レニア姫・・・あの僕は、できるなら」


「あなたは優しいのね。私は正直天に帰りそびれた元神様がどうなろうとどうでもいいんだけど、お母様やアンル先生は神様たちを天に返してあげたいみたいだし、退屈している時は話を聞いてあげるんだけど、あの声を聞いているとネチネチイライラしてくるのよね」


「ブッ! ネチネチって、あはははは」


急に笑い出したセルダスにレニアは驚いて持っていた本を膝の上に落としてしまった。


「もう、、そんなに笑うことないでしょ」

「ごめんごめん、膝大丈夫?」

レニアの膝の上に落ちた本を拾い上げながらセルダスもベッドにのぼって、レニアに向き合うように座った。


「平気よ、でもあなたもそう思うでしょ。ラデュル神もなくしものを探して欲しいならそう言えばいいのに、願いをかなえてやるとか、恨めだの憎めだの大きなお世話だっての、腹立つ相手がいたら、神様の力なんて借りなくても自分の力でやり返すわよ」


「君ならそうだろうね。でも僕は・・・」


急に笑うのを止めたセルダスが表情を曇らせた。


「あら、セルダスは腹立つ相手がいるの? 誰? そんなやつがいるなら私が代わりに殴ってあげるわ」


「ふっ、いないよ。僕の周りにはみんないい人ばかりだからね」


「そう? それならいいけど・・・何か嫌なことがあったら言ってね。とりあえず! さあ、セルダス今から少し眠りましょ」


レニアはベッドの上の枕の上にセルダスを押し倒した。


「うわっ、ちょっとレニア、僕は別に・・・」

セルダスは仰向けにベッドに倒れ込んだ。


「やせ我慢はしないの! あの疫病神の独り言を聞いてあげるのはあなたの好きにすればいいけど、自分の睡眠を削り過ぎるのはよくないわよ。夜は同じ部屋にいるのは無理だけど、今なら問題ないわよ。あなたが寝ている間見張っていてあげるから安心して寝なさい。起きたら、地下の探検に行きましょう」


レニアはセルダスの隣にすわりなおし彼に向かって言った。


「レニア姫、僕は本当に大丈夫だよ」

起き上がろうとするセルダスにレニアがセルダスの上にまたがった。


「くどい! 私ね、コソコソ陰湿に言い寄るやつって大っ嫌いなのよね。どうせその辺にいるんでしょラデュル・フォンデ・アリューサ神、でてきなさいよ。今なら私が話を聞いてあげるわよ」


「なっ何を言っているんだ。ちょっとレニア姫、君はラデュル神の怖さを知らないから。早く僕の部屋から出て行くんだ」


慌てた様子でレニアをベッドの横に押しのけながら言った。


「知らないわよ、あったことないし、私にぶいとこあるからあなたの限界がどのへんまで来ているのかなんてわかんない。だけど、寝不足なのは本当みたいだから、私心配なんだもん。私なら大丈夫よ、私はお母様の娘よ。闇になんかに負けたりしないわ」


じっと顔を見つめ返してくるレニアにセルダスは顔を赤らめたかと思うとすぐに青い顔をして下を向いてしまった。


「レニア姫・・・ごめん」

「その顔よ」


「え?」

「私、大っ嫌いなのよ。すぐにその全部諦めてますって顔」

「レニア姫」


「もう、どうして助けてって言わないのよ。苦しいなら苦しいって泣き叫べばいいじゃない。私はあなたの助けにならない?」

「僕は・・・」


「あああ~もういい、ごめん私が性急すぎたわ。今は何も言わない。どうせ、あの爺は私の体をのっとることなんかできないんだし。よし、今はとりあえず一緒に寝よう。ふあ~ほんというと私も寝不足なのよね。もう今は闇なんてどうでもいいのよね」


レニアはそういうとセルダスの腕に自分の腕をからめるとベッドに引き倒すと意識を手放してすぐにスヤスヤと寝息をたて始めた。


そのやすらかな寝息を聞いていたセルダスも知らず知らずのうちに寝息をたて始めた。


ベッドの下から黒い靄がでてきたかと思うと窓の外に再び消えるのにも気付かないで


そうして二人は昼に目を覚ますことなく、夜も眠り続け、目を覚ましたのは翌朝の早朝だった。





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