イクメンパパ達のラグビー部
あーっ!やっぱり汗を流すのは気持ちがいいや。
「へいっ!パスパス」
「シュートシュート!」
俺達イクメンラグビー部はだーれもラグビーのルールなんか知らない。ボールを投げて蹴ってラインを越えたり叩きつけたりバーを越えたりすればポイントなんだろなーとかなんかその程度の知識。元は野球部。そしてサッカー部だったんだけどラグビーが一番面白い。俺達は皆知識は無いけどパワーはあるので道具がすぐにダメになっちまう。
「くらえっ!殺人タックル!」
「うげぇっ!」
吉田さんのタックルで真山さんがぶっ飛んだ。真山さんもかなり体格はいいけど230センチの吉田さんには敵わない。ボールは地面に落ちて真山さんと吉田さんの下敷きになってパンっと割れた。
「ボールが潰れた!残り時間がないのにっ!」
「プレーを止めないで!ほい!これが替えのボールね!ゲーム再開!」
「あっ!ズルいすよ!」
新しいボールをカゴから取り出した俺は全速力で走った。まだ皆。壊れたボールの方に意識が行ってる。大逆転のチャンスだ!
「うらー!」
「こんのぉっ!」
「負けるかぁ!」
足にタックルされようが頭から衝突しても構うもんか!俺は止まらない!育児のストレスも今だけは忘れられる!俺は風になってるぞ!
食事作り!見送り!お出迎え!掃除!寝かしつけ!夜泣き!育児はストレスの連続だよチキショウ!あのガキ!子供だからって調子のりやがって!
「あれ?秀明じゃん?」
新しい「ボール」は俺の息子のシュウメイだった。
ちょうどいいや。お前に怒ってんだよ俺は。うるせぇ!ボールが泣くな!しかし便利な世の中になったもんだ。どれだけ傷付けようが細胞が残っていれば復元できる。医学の進歩のおかげで俺達はこうしてラグビーで汗を流せる。
「トラーーーーイ!!」
俺は秀明の頭を両手で掴んで地面に思い切り叩きつけた。大逆転勝利!あー汗と血が混ざって気持ちいーや!