表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

後日譚『木崎の遭遇』

木崎のお話です

 ふたりの甥っ子を連れてヒーローショーの会場に向かっていて、あのクソをみつけてしまった。向こうも俺に気づいたようで、ガン見してくる。

 甥っ子の手前、面倒は起こしたくないと思っていると、クソ野郎がひとりでこちらにやって来た。


 俺の前で止まり、険しい顔で甥っ子たちを見る。

「あんた」とクソ野郎。「ずいぶん大きな子供がいるんだな。結婚してるのか? それともシングル?」

 ああ、そうか。誤解しているらしい。

「こいつらは甥だが?」

「――なんだ」


 クソが表情を緩めた。


「『同期の木崎』」とクソが続ける。「覚えてるよ。莉音がよく話してた。とんでもなくイヤなヤツで、反りが合わない。世界で一番ムカつくヤツだって。なのに、庇いあうような仲になったんだな」

「悔しがれ」

 クソがはっと笑う。

「マジで性格悪い」

「お前ほどじゃねえよ」


 クソは視線を逸らした。

「――ま、良かった。莉音が不倫なんかするはずはないとは、思ったんだがな」

 なんだそれ。


「じゃあな」

 そう言ってクソ野郎が去る。行く先にはヤツを待つ家族。


 まさかクソはクソなりに宮本を案じた、ということなのか?

 もしかしたら、未練があるのか?


 だが、それがどうした。

 あのクソが宮本を傷つけたことは許さない。彼女には二度と近づけさせない。




「あの人、莉音ちゃんの知り合い?」

と、甥っ子が訊いた。

「いや。違うリオンの話だ」

「ふうん。それより爽真、早く!」

 甥っ子たちが俺の手をひっぱる。

「ああ、悪かった。行こう」



 宮本を守るのも隣に立つのも、俺だ。


「――ん。そう考えると、あいつが別れてくれたのは、俺にとっては良かったのか」

「爽真、何の話?」

「どうせ莉音ちゃんのことだよ。ママが『爽真は莉音ちゃんのことばっかり!』って言ってたもん」

「莉音ちゃん、可愛いもんね」

「そうだぞ、あいつは可愛いいんだ」


 可愛い可愛いと騒ぐ甥っ子たちと会場に向かう。

 もうクズ野郎の姿は見えなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ