海へ行こう
☆11
・竹崎先生の車で、
市内の海辺に行く日は、
練習が休みになる、
日曜日になった。
が竹崎先生は、
他の部員も誘おうと、
日曜日の、
都合のいいメンバーにも、
呼びかけた。
三年生の部長は、
今年受験であることから、
先生の呼びかけを辞退したが、
さなと誠二はノリ気で、
二人もユミとの、
思い出を作ることを、
喜んで楽しくやっている、
ようだった。
二人が来ることは、
ユミと恵三にとっては、
想定外の出来事だったが、
恵三は、
(思い出が増えることは、
いいことだ)
と深くそのことについて、
考えないことにした。
日曜日──、
その日は14:00に、
学校集合と言う予定になっていた。
気持ちが落ち着かなかった。
テレビを見ていても、
好きなCDを聞いていても、
心がいつもよりフワフワした。
母が作る昼ご飯を食べ、
13:45ごろに家を出た。
夏の太陽は正午を過ぎ、
空の真上で容赦なく照り付けた。
学校に到着すると、
先生もユミもさなも誠二も、
職員用の駐車場で待っていた。
「遅いー」「おせぇよ」「ギリギリだね」
皆口々に恵三を悪く言ったが、
ユミは少し困ったような目をして、
「やっと来た。待ってたんだよ、
ケイちゃん」
と言って笑った。
恵三は皆を待たせたこと、
思慮なくユミを寂しがらせた、
ことを後悔した。
アルファードの後部座席には、
この前と同じで、
ユミと一緒に並んだ。
今回はユミと対面しても、
アガらなかった。
時間ギリギリに来たことを、
皆とユミに謝ると、
恵三はユミに、
「海好きなの?」
と短く訊いてみた。
ユミは、
「うん!夏って言えば、
海かなぁって思って、
潮騒とか白波とか、
やっぱり素敵だし、
楽しい思い出をいっぱい、
作りたくて☆」
ユミは明るく、
キラキラと笑った。
恵三は改めて、
ユミのことを素敵な子だなぁ、
と思い、胸を高揚させるのだった。
(やっぱりユミちゃんは可愛いな)
この前と同じで、
12歳の恵三はユミの近くで、
終始、赤面し落ち着かなかった。
キラキラした特別な時間が、
流れていく──
大切な思い出にして、
夏を過ぎた後もずっと忘れず、
ユミとこの夏のことを思い起こそう。
そう再び出会い、
あの日々のことを語り合い、
幸せに思う為に……
人は日々の切実さを、
大切に丁寧に優しく扱うなら、
また再び人に出会い、
幸せな時間を共有できるから──
…………『続く』