お好み焼きとユミと夏の時間
☆9〈君といる夏休み〉
・店員が器用に持ってきた、
銀のボールに入ったお好み焼き生地を、
竹崎先生が率先して鉄板に流し、
「こういうことは、
知ってる大人の役目だから」
と言い、皆のお好み焼きを、
焼く係をしてくれた。
恵三は少し自分の分だけは、
自分で焼きたいな、
と思ったが、竹崎先生の好意に、
甘え、お好み焼きが焼きあがるのを、
ぼんやりと見つめることにした。
じゅうぅ!っと勢いよく、
豚玉の生地が焼け、小さく煙が出た。
小麦粉の生地は大きな音を立て、
鉄で出来た鉄板の上で小さく震えた。
隣のユミを見ると、
好奇心いっぱいに目を輝かせて、
「うわー、美味しそー☆」
と小さく漏らしていた。
恵三は今日と言う日が、
部員たちとユミにとっての、
忘れられない思い出になった、
ことを幸せに思うのだった。
(女の子を泣かせたら男じゃない)
幸せな気持ちのまま、
夏を終え、優しい気持ちで別れる──
普通の人なら、
簡単に途切れてしまう、
日々の大切さを、
恵三はユミに出会うことで
教わったのだった。
気の荒くなりがちな思春期を、
優しく穏やかに過ごすには、
〈かけがえのない人との出会い〉、
は欠かすことの出来ない、
《人生のおけるイベント☆》、
なのだろう。
優しさに巡り合う為に、
神は人を、
男と女に分け、
お互いと大切に思うことで、
世界を平和に賢く、
幸せに統治させる為、
愛と心を、
人に授けたのだ。
純粋に目を輝かせる、
ユミを見ていると、
恵三は小学生の時よりも、
自分自身と、
人生について、深く内省した。
ユミを大切にすることは、
恵三自身を大切に、
賢くうまく日々を生きる、
ことに繋がり、
恵三は漠然と〈女の子って偉大だ〉、
と感じた。
竹崎先生は、
けっこう上手にお好み焼きを焼いた。
まだ生焼けじゃないかな、
と恵三が思った、
生地にはきつね色の、
焦げ目がついていた。
「うわー、お好み焼きだー☆」
しっかりと焼けた生地に、
恵三は、
竹崎先生はさすが大人だ、
と思い、箸を持って、
いただきます、
と手を合わせるユミを見て、
すっごい幸せだな、
と思い、
ホクホクとお好み焼きを食べ、
六人で談笑し、
とても楽しい会食を、
過ごしたのだった。
もう一度、
学校に戻り部員を下ろして、
この日はユミと別れた。
お互いにこの日のことを、
幸せに思った二人は、
いつも通り笑顔で手を振り、
車を見送ったのだった。
(いい一日だったな)
この日も恵三の心は、
穏やかに優しかった♪
…………『続く』