夏の終わり 二人の約束
☆21〈君といる夏休み〉
・しばし沈黙して、
二人で願った後、
恵三はまだ祈り続けている、
ユミの肩をたたき、
自分が願い事を終えたことを、
教えた。
気付いたユミの目は、
寂しげだった。
かけるべき言葉を選び、
恵三は、
「ユミちゃんも、
この夏が終わること、
不安なんだね……」
と言った。
ユミの目が一瞬、
泣いてしまいそうになるほど、
潤んだ。
とても切ない気持ちになった、
恵三は思わず、右手でユミの頭を、
優しく撫でていた。
恵三の目も潤み、
一瞬返すべき言葉を、
見失ったが、
恵三は言った。
「もう、
離れられないよね。
気持ちを伝えるよ──
出会った瞬間からずっと、
ユミちゃんのことが、
大好きだよ」
ユミの目は激しく潤んで、
本当に目を拭った。
「私も思う。
もう離れられないし、
離れたくないって……
本当はずっとずっと、
竹崎先生経由で、
一緒にいたいって──」
まだ中学一年生の恵三だったが、
幼い彼にもわかる。
二人ははぐれたら、
もう二度と幸せになり得ない、
運命的な番であることを。
恵三は、
ずっと押し殺していた、
気持ちが出て、
思わずユミを優しく、
抱いていた。
ユミの小さい頭を、
優しく腫れ物に触るように、
そっと包んだ。
ユミはぼんやりと顔を上げ、
恵三を見つめた……。
口に出た言葉は、
「私も好きだよ……」
だった。
気持ちに素直になったユミは、
恵三の肩に手を回し、
優しく包むように抱いた。
恵三は思わず、
目から涙を出し、
声を出して泣いた。
普段あまり感情を出さない、
ユミも泣いていた。
一言恵三は言った。
「俺も大好き……」
少し力を入れて、
ユミの頭を強く包んだ。
お互いの目から、
とめどなく涙が流れた。
(もう離れられないよね──)
思わず泣いている、
ユミの片目に、
恵三の人差し指が、
優しくそっと労わるように、
ユミの涙をなぞった……
二人は境内に、
願い事をしに来た、
他の客の目も気にせず、
泣いて、
お互いの自分たちが、
決して替えの効かない、
唯一無二の尊い、
存在であることを、
確かめた。
けっこう長い間、
二人で泣き、
ユミを見つめて恵三は、
言った。
「お腹空かない?
お好み焼き一緒に食べよう??
お互い食べて、
元気を取り戻そう」
恵三の言葉を聞いたユミは、
笑い、元気に、
「うん!
私もお腹空いた☆
一緒にお好み焼き食べて、
素敵な思い出を、
作って……、
幸せになりたい」
と言った、
ユミは泣き笑いのように、
目と顔を歪めたが、
気持ちはお互いに前だけを、
向いていた──
忘れられない夏になった。
一緒にお好み焼きを食べた二人は、
いつも通り柔らかく優しく、
会話をして、縁日を見て回り、
別れ際に、
持ってきたメモ帳に、
お互いの家の住所と電話番号、
ユミのいる施設の住所と電話番号と、
ユミの居住する部屋番号を、
メモ帳をちぎり、
渡し合った。
恵三はいつか、
二人の気持ちを、
竹崎先生に言わなくちゃ、
と思った。
夕闇の近づく、
18:30分過ぎ、
とても切なく大切な気持ちで、
二人は学校の駐車場から、
別れた。
車から出た恵三は、
もう泣いていなかった。
優しく微笑み、
ユミに「またね」と、
手を振った。
もう二人は戻ることなど、
出来ないだろう。
お互いを思い合う二人は、
高校卒業後、
二十五歳まで働き、
両親の承諾を得、
幸せな結婚をしたのであった──fine




