8月31日
☆19〈君といる夏休み〉
・その日は来た──
8月31日、
昼過ぎの練習が終わり、
この日は学校を出発する、
16:45までの間、
恵三たち水泳部とユミは、
普段は鍵がかかって開かない、
視聴覚室を特別に使わせてもらい、
冷房の効いた部屋で、
一時待機、と言うことに、
なった。
恵三はユミを見ると、
元気がなく寂しそうにしていた。
何か気まずいな……、
と思ったので、
恵三は機転を効かし、
「ユミちゃんと一緒に、
お好み焼き食べたいな。
境内も見て回って、
お賽銭入れて、
一緒に願い事もしたい☆
楽しい思い出にしよう」
と言った。
ユミは笑顔になり、
「うん!
私もケイちゃんと、
楽しい思い出作りたい♪
一緒に行こう☆」
と元気に言った。
それきり視聴覚室では、
お互い話すことはなかったが、
気持ちを確認できたことは、
恵三にもユミにも、
気持ちを前向きに明るくさせる、
効果があった。
時間が来て、
竹崎先生が視聴覚室に、
入って来て言った。
「もう学校を出るから、
準備して、持ってきたお小遣いを、
確認して校庭に出るように。
この年の夏は、
濃い一年になった気がするよ。
楽しい思い出いっぱい出来たな。
最後まで楽しもうって、
気持ちで人生生きた方が、
その後の人生で得するから、
素敵な一日にしよう☆
じゃっ視聴覚室を退出ー」
先生は、
皆が視聴覚室を出た後、
鍵をかけて、
別行動で職員玄関の方へと、
歩いて行った。
恵三は緊張して、
押し黙って学生用のロッカー、
へと歩いた。
カラ元気でユミに、
「一緒に楽しもうね」
と笑った。
ユミは元気に、「うん!」
と言って笑顔になった。
先生のアルファードには、
いつもの配置で、
一番後ろの後部座席に、
ユミと並んだ。
見つめるとやっぱりユミの、
元気がなく、恵三は、
元気を出してもらうために、
「きっと来年も会えるし、
絶対会おう」
と言った。
ユミは優しく寂しげに、
うん、と首を振った。
恵三はそれを見て、
いたたまれない気持ちになって、
思わず口に出してしまった。
「ユミちゃん、
今日はすごく大事な話が、
あるから、それを今日、
伝えようと思っているんだ……」
恵三はその言葉を口に出すと、
切なくなって、目頭が熱くなった。
このタイミングで、
泣いてしまいそうになった──
(大切な夏にしよう……)
先生のアルファードは、
境内の側の大型駐車場に着き、
水泳部の面々とユミは、
人でごった返す、
夏祭りの美味しそうな匂いと、
明るい賑わいの中の、
縁日の屋台の道へと歩き出した。




