その日は突然に
☆6〈君といる夏休み〉
・その日は唐突に訪れた。
次の日のプールでの練習時間、
部員四人とユミはいつもどうり、
基本練習を続けていた。
ユミは竹崎先生の指導で、
一度部員全員が、
プールから上がった時、
一瞬だけ恵三を見て、
柔らかく優しく笑った。
──(?)
頭の中で言葉にしなかったが、
可愛いな、と思い、
ビックリしたのが強くて、
ユミの笑顔の意味については、
考えなかった。
練習が終わり、同級生の西宮誠二は、
恵三の肩に腕を回すと、
「恵三。お前皆でお好み焼きを、
食べに行くのを企画した、
言い出しっぺだってな。
ユミちゃんを誘うなんて、
隅に置けない水泳部の、
危険なチューボーだな☆!!!
聞かされてなかったみたいだけど、
先生の急な都合で、
今日になったんだぜ、
お好み焼きの会食☆☆☆」
恵三はそのことを、
全く聞いていなかったので、
もの凄く驚き、
腕を伸ばし、「やったー!」、
と小躍りして喜んだ。
部長の松永美香は、
恵三に「ナイスアシスト☆」
と言い、宮前さなは、
「ケイちゃんって、
けっこう野獣なんだね(笑)☆」
と言って、
恵三の意外な一面を見て、
少し照れていた。
男子更衣室で学生服に着替え、
部長が扉に鍵をかけ、
グラウンドに出ると竹崎先生が、
皆の前で言った。
「今回は大胆な恵三君の提案で、
急に市内のお好み焼き店で、
皆で会食することになりました☆
時間の都合とか考えたら、
今日しか無くて、
事前に通知できなかったけど、
まあ、楽しい会にしましょう♪♪♪!!!
一緒に学校の駐車場に行って、
先生のアルファードに、乗って今すぐ移動★
時間は回ってるから、急いで急いで☆
すぐ発車するからね☆♪」
それだけを伝えると、先生は、
「駆け足☆」と言って、
部員全員とユミと学校の職員の駐車場へと、
ダッシュで駆けていった。
野球部の練習と、
ブラスバンドの金管楽器の音──
グラウンドを駆ける、
水泳部の面々と竹崎先生。
抜けるようにカラッと暑い広い青空に、
青空の隅にそびえる大きな入道雲。
まぶしく明るく心地いい日の長い夏の日。
恵三は、中学一年目の新しい夏休みを、
快く楽しく幸せに思っていた。
…………『続く』