日が昇らなければ
「今日は月が綺麗ですね。あなたの所はどうか知りませんがここはとても静かです。夜風も気持ちいい。」
彼からのメッセージだ。ずっと待っていた。日が沈むのを。
「そうですね。あなたに言われるまで気づきもしませんでした。」
確かに月が綺麗だ。今夜は満月かもしれない。
「知っていましたか、月が綺麗というのは
I love youの日本語的意訳で、夏目漱石による訳と言われているんですよ。ロマンチックですね。」
彼からのメッセージが届く。
わかってはいた。でも、少し期待してしまった。彼からの告白を。でも、そういう意味で言ったのではないのだろう。
暑くなった頭を夜風がさます。
ああ、また彼からのメッセージだ。
「こんな訳し方ができるなんて素敵ですよね。あなたならなんて訳しますか?」
ああ、きっと彼は私に対してなにも思ってないのだろう。夜風が冷たい。月が雲に隠れた。
「考えもしませんでした。でも、私ならきっとこういうでしょう。日が昇らなければ」
嗚呼、日が昇らなければ…