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<R15>15歳未満の方は移動してください。

久しぶりに再会した幼馴染の異国の王子様のアプローチがわかりにくくて困惑します。プロポーズの前に決闘を申し込むのは斜め上すぎます

掲載日:2020/10/22

勢いだけで書いてしまったので、読んでいただけたら嬉しいです。

お気に召していただけたらブックマークや評価お願いします

15歳になったから王都の学校へ行きなさい。

シルゥイアは父からそう告げられ、入学の手続きが完了した書類を渡された。


シルゥイアはグスタフ伯爵家の長女。

グスタフ伯爵家はペンサプラベ王国の北側に位置しており、王都からはかなり離れていて辺境伯という地位にある。

父は辺境伯として騎士や軍人達を束ね、国境を守っている。


王都から遠く離れた領地に住むシルゥイアも他のご令嬢と同様に、15歳で王都にある貴族や富裕層向けの学院にいかなければならない。

学園は全寮制でこれから3年間、家族と離れて暮らさなければならないのだ。


シルゥイアは小さい頃から利発だった。お人形や、おままごとには全く興味がなく、それよりも、カエルの卵を眺めたり、木登りをして鳥の巣を見つけたり、不思議な形の石を探したりすることが好きだった。


そんなシルゥイアの宝物は、丸い石や、綺麗な鳥の羽で作ったペン、クローバーの押し花の琹に、青い絵具。

宝物はお気に入りの「ドレイク製菓店」のクッキーの箱に入れてベッドの下に隠していた。


シルゥイア7歳の夏、宝物が入ったクッキーの箱を意地悪な親戚の子供のリックに見つかって、隠されてしまった。

リックはシルゥイアの1歳年上の8歳。夏になるとグスタフ領に避暑に来ていた。


「シル!どこに隠したか知りたい?降参したら教えてあげるけど、俺の言う事を一つ聞けよ!それが嫌なら自分で探してみな。ヒントは、目の中に入れても痛くない、だよ。降参も嫌、自分でも探せない、なら、俺と剣で勝負して勝てたら教えてやる」


と意地悪を言って隠し場所を教えてくれなかった。

シルゥイアは色々な人に聞いた。両親、世話をしてくれるメイド長、騎士団長にグスタフ軍長。隊員にも聞いた。

でも答えは皆同じ。

「目の中に入れても痛くない、のは、シルゥイアですよ」

宝箱は見つからない。

でも降参はしたくなかった。


こんな意地悪をするリックは、黙っていればかわいい子供だった。

シルバーブロンドのストレートの髪と、サファイア色の目。

ニッコリ笑うと誰もが言う事を聞いてあげたくなるが、ニッコリ笑って近づいてくる時は大抵悪戯を仕掛ける時だった。

シルゥイアがトイレに入っていると扉の前に牛を繋がれて出られなくなる悪戯もよくやられた。

その度にリックの祖父が探しに来てくれて、牛をどかし、シルゥイアをトイレから助け出してくれた。


シルゥイアはリックの祖父にも聞いて一生懸命宝箱を探したが見つけられなかった。夏が終わる頃、リックはシルゥイアの宝箱の隠し場所を教えてくれないまま帰ってしまった。



宝箱はとうとう見つからなかった。

どこに隠したか聞こうにもそれ以降、リックが遊びに来る事はなかった。



そして時間が経ち、いつのまにか宝箱のことを忘れてしまった。




「シルゥイア、そろそろ準備はできた?」

シルゥイアの母が部屋を覗いた。


シルゥイアの部屋にはメイド長が持ち込んだ大きなトランクがいくつも並んでいた。


「はい!お母様」

とシルゥイアは笑顔で答えたが、後ろに控えているメイド長は渋い顔をしていた。


「奥様、お嬢様はどうしても鎧と剣と盾は持っていくと聞かないんです。」

メイド長は、シルゥイアの母親であるグスタフ辺境伯夫人に言った。


「まぁ、シル!あなた、15歳にもなって何を言っているんです?あなたが今から行くのは王都の学園、そんな物必要ありません」

メイド長は、うんうん頷いている。


「それよりも必要なのはこれよ!」

と、大きな箱を持ってきて蓋を開けた。大量の武器が入っている。


「そんなゴツゴツした剣はナンセンスよ。やっぱり剣はしなやかで切れ味抜群な方がかっこいいじゃない?あなたが持って行こうとしている剣は、大きいだけで全然素敵じゃないわ!

それに、ほら!

この短剣のセット。スカートの下に忍ばせても全然わからないわ。持っていくならこの箱よ!」

メイド長は、顔色が悪くなった。


「奥様、お嬢様は今年、王都の学園に入学されるのです!武器は必要ありません!

もっと言うと持ち込み禁止でございます!

王族も通う学園にそんな大量の武器を持ち込んだら暗殺計画を練っているのかと疑われますよ」

と、メイド長に言われて渋々持ち物から武器を出す2人。


「シル!もう行ってもまうのか?」

父が顔を出した。


「お父様!」

シルゥイアは父に抱きついた。


「本当は送って行きたいのだが、国境の向こうのカウェルネ国が内戦中で難民が来たり、負傷した兵士が逃げてきたりと気を抜けない。戦争が早く終わってくれればいいのだが…」


カウェルネ国では、長い間病で伏せっていた正室である王妃様が亡くなり、その後すぐに流行病で国王と側室様が亡くなったのだ。

後に残されたのは皇太子とその弟。内戦の原因は、暴利を貪りたい大臣と内政を立て直したい宰相との争いだった。


大臣は側室様の子供でまだ幼い5歳の第3王子を国王に据えようとし、宰相は正室である王妃様の子供で皇太子である18歳の第一王子を国王にしようとしていた。


だが、第一王子は今、国王と同じ流行病で療養中。

その隙をついた戦いで、第一王子が療養していると噂される北部との国境沿いで戦いが起きていた。


「お父様、仕方ないわ。国境を守っているいるお父様って素敵だもん。」

とシルゥイアが言うと父は頭を撫ででくれた。


「さあ行っておいで。お姫様」

そう言って両親と兄弟は送り出してくれた。


グスタフ伯爵家は辺境伯として広大な敷地を治めている。その統治の方法は領地を区画で区切って区画ごとに治める区長をおく。

その区長を治めるのが一族の長になる。

一族の長は長子制ではない。最も優秀な者が後継者になる。性別は関係ない。


グスタフ伯爵家に生まれたものの義務として後継者争いに名乗り出ないといけない。

他の職についた場合は名乗り出なくてもよいが…

シルゥイアは後継者になるべく、武道や領地の統治の方法を学んでいたのだ。


学園に来るまでは自分のやってきた事はどこの家もしていると思っていた。


しかし、入学式でそれは違うと気づいた。

女の子は皆、可愛くておしとやかで、そして何より体力がない。

もしや女の子は剣を握ったことがないのが普通なのだろうか?

もしもの時、どうやって家族を守るんだろう?

儚げなご令嬢を見回しながらシルゥイアは疑問に思った。

とりあえず、皆と同じようにか弱い女性を演じてみよう。軍師になりたければ相手を欺く事も必要だ!

シルゥイアはおしとやかに振る舞うよう努力した。



三ヶ月もすると、それまで頑張って被っていたご令嬢の皮が若干剥がれ、隠れて剣術の練習をする様になった。

剣はないから、学園の庭園に落ちている木で練習していた。

それから更に一ヶ月もしないうちに自分より強い同級生はほとんどいないと気づいた。

剣を合わせなくとも見ていればわかる…。


シルゥイアは女子から人気があった。

「シルゥイア様より見目麗しい方はなかなかいない」

と言われ、ご令嬢から囲まれる毎日を過ごしていた。


ご令息からは

シルゥイアは剣術クラスの授業を取らず、剣術クラスの先生のところで個人授業をしてもらっているらしい。

父は辺境伯だろうが所詮はご令嬢。男に敵うはずがないのに、などと嫌味を言われることもしばしば。


その理由は剣術クラスのカルディア先生のせいだった。


剣術クラスの先生はシルゥイアの従兄弟で25歳のカルディア。

カルディアは王宮騎士団に所属しており、3年の任期でこの学園にいる。

「シルは子供の頃から強かったけどさ。そろそろ、ご令嬢としてのマナーや社交も学ばないと。辺境伯になりたいなら結婚は必須条件だぞ」

と言われ、いつもお見合いを持ちかけられていた。

シルゥイアとしてはお見合い話が面倒なのでカルディアにはあまり会いたくないが、学園内でシルゥイアを見つけたら、

「指導室にくるように」

と強制してきて、指導室に入ると、沢山のお見合い写真を見せてくる。


「辺境伯と親戚になりたい奴は多いんだよ。なんせ、軍隊を貸してもらえるし、領土は豊かだからなにかと融通してもらえるだろ?

だからさ、俺のところにお前宛の見合い写真が沢山くるんだよ」

とカルディア。


「こうやって公私混同するから、個人レッスンを受けてる、なんて変な噂が流れるのよ。

もう!!!」


「シルは女子から人気があるんだから、いっそのこと嫁でももらえば?そしたら見合い話はこなくなるよ?」

とカルディア。


「バカじゃないの?

そうだ!いっそカルディアが私の婿になる?」


「それは遠慮したい。俺はもっとこう、はちきれんばかりの膨らみが2つある…」


「手をいやらしく動かさない!」


「男のロマンは大切だ!」


「今時は男でも女でも最高のふくらみを手に入れることができるらしいよ。

聞くところによると胸に柔らかい人工物を入れて…」


カルディアは白い目でシルゥイアを見た。


「あまりにもお見合いの話を持ってくると、次から人工物を入れた豊満な人ばかり紹介するからね!」

とシルゥイアは文句を言って部屋を出て行った。


そう言って牽制しているのに、やっぱりシルゥイアを呼び止めてはお見合い話を持ってくる。

もうかなりの件数を断ったのに…

と不満ばかりいうシルゥイア。


カルディアがお見合いの話ばかりするのには理由があった。

その理由とはシルゥイアは今婚約して卒業とともに結婚しないと宮廷騎士団に入らねばならなくなるからだ。


辺境伯と名乗る伯爵家は、東西南北と4家あるが、どの家も男女問わず強い。


強い女性は、女性王族の警護につかされて一生独身で終わるパターンが多い。

女性王族の専属の騎士になれるほど強くて血筋のしっかりした者は限られる。そのため常に王室に呼ばれる。

男性の方が騎士は多いし、強いから男性に警護を任せればいいではないかという意見もあった。

しかし女性王族に男性警護者をつけるのは王族から嫌がられる。


シルゥイアは入学前から王室に目をつけられていた。

この事は機密事項のため、カルディアはしきりにお見合いを進めるしかないのであった。


そうしてお見合いを断り続ける日々が続いた。


しかし学園に入学して一年が経った頃、シルゥイアにどうしても断れないお見合い話が来た。


カウェルネ国は内戦が終わりを迎えペンサプラベ国と通商条約を結んだ。その友好の証としてペンサプラベ国王からカウェルネ国へ嫁ぐ令嬢を探すために、カウェルネ国の第二王子がやってくるのだ。


第二王子とのお見合いは伯爵家以上の爵位を持つ、婚約者のいない令嬢全員の参加が義務付けられた。


お見合いに興味がないシルゥイアだったが、

「行かないと後でグスタフ伯爵が国王に呼ばれて怒られる!それくらい今回のお見合いは全員参加!」

と念をおされたので渋々参加することにした。


メイド長から

「伯爵家のお嬢様たる者、手持ちのドレスで参加するとご両親の顔に泥を塗ることになりますよ!

グスタフ伯爵家はご令嬢にドレスを買うお金もないのか、なんて有る事無い事、悪意ある噂話が広がるので、絶対にドレスは新調します」

と言われ、早速、仕立屋がうちに来た。


そしてあっという間に当日。

別に王子様には興味がないからダンスを楽しめたらいいなと思いながら支度をする。


実家のパーティーでは、皆、騎士や軍人なので、ダンスはアクロバティックだった。


「シル。他所様のダンスでは宙返りしたり、クルクル回りすぎたり、回しすぎてはいけませんよ?あくまで教科書通りにね」

とお母様に念をおされた。


言われなくてもわかっている。

アクロバティックなダンスをするならもう少し動きやすい服がいい。


いつもは動きやすいドレスというよりはキュロットのような服に低めのヒールだ。そんな軽装で、アクロバティックに踊る。

得意は2回転半!


しかし今日はシルゥイアのない胸を少しは盛るためだろうかマーメイドスタイルの碧色のドレスにピンヒール。

メイクはシルゥイアの大きな翠色の目と長い睫毛を目立たせるために、目元に綺麗にグラデーションを入れ、ぽってりした唇にピンクのルージュを塗る。

シルゥイアの艶のある真っ黒な髪はハーフアップに結われ、ダイヤモンドのネックレスとイヤリングをつけた。


この格好では流石にいつものようにクルクルとは宙返りできないから、いつものダンスは封印か…と考えながら馬車に乗った。


予定では、

今回招待されたご令嬢は皆着席して、王子を待つ。

見合い相手である第二王子は、ご令嬢が6人ずつ座る円卓を回り、皆と言葉を交わす。

場所はサロン。

サロンでお見合いをした後、そのまま舞踏会に移行すると書いてあった。


会場に着くと、席は決められていた。

今回参加するご令嬢は120人。

円卓は20卓ある。

確かに印象に残ったご令嬢を指名するためには必要なことである。


自分の名前が書いてある席に行くと、丸い石のペーパーウエイトが名札の上に置いてあった。


席についてからしばらくでお見合いは始まった。


王子についてきた執事が王子のプロフィールを話していた。第二王子は、座っているので姿が見えない。


カウェルネ王国の第二王子のフレデリック様はシルゥイアの一つ年上で17歳。病に伏せっていた第一王子を支えながら、一緒に歩んでいけるお嬢様をご所望。

うん、私には無縁だわ。なんせお婿さんをもらって、後継者争いに名乗りをあげるつもりだから…。

シルゥイアはそう思ってあまり話を聞いていなかった。

どうせ円卓に来るんだから、その時に顔を見ればいいわと考えて、上の空で過ごしていた。


まず、ハーブティが振る舞われた。

王都では珍しい生のハーブを使ったレモングラスティー。


グスタフ領では毎日飲んでいたが、領地を出てから初めて飲んだ。

他のご令嬢は珍しそうにしている。


その次に、綺麗な青いお皿に取り分けられて出てきたのは、ドレイク製菓店のクッキーとオレンジのフィナンシェ。


ドレイク製菓店はカウェルネ国に本店がある。

領地が接しているグスタフ領では一般的だが、ペンサプラベ王国には支店がないので皆、珍しそうに食べていた。


フィナンシェを食べ終わると気づいた。

皆のお皿のフィナンシェの下にしおりが置いてある。

琹は8種類ほどあり、シルゥイアの琹は四つ葉のクローバーだった。


王子は20卓のテーブルを回っている。


琹を手に取って眺めようとしたところで、王子がシルゥイアの座る円卓にやってきた。

カウェルネ国の第二王子フレデリック王子は、優雅に挨拶をして全員の名前を聞いた。


王子は、優しくにこやかに微笑み、当たり障りのない会話をする。

恐ろしく綺麗な顔に、無駄のない優雅な所作。

綺麗な銀髪にサファイアのような目。

にこやかに笑う頬には笑窪があった。


王子の後ろには先ほどの執事が、綺麗な羽ペンで、ご令嬢達の返事をメモしていた。

きっと後でどこのご令嬢の返事が素晴らしかったのか調べるためだわ。

120人もいたら一回のお見合いでは難しいものね。


どのご令嬢にもお菓子やお茶の感想を聞いている。

もちろん、シルゥイアにも聞いてきた。


「大好きなドレイク製菓店のお菓子はやはり美味ですわ。そしてレモングラスティーは香りが良く、ほっこり落ち着きます。本日は楽しいお時間をいただきありがとうございます」

シルゥイアは王子に向かって挨拶をすると、王子はニッコリ笑った。


その後は何事もなくお見合いは終わり、そのまま舞踏会へと移行していく。


サロンから大広間へ続く扉を開けると、すでに沢山の貴族が待機していた。


国王様が今回の舞踏会の挨拶をし、カウェルネ国との友好を祝った。

そして今回、大使としてペンサプラベ王国に来ている第二王子とともに通商条約の条文の調印式を行った。


調印式が終わると、バイオリンの音色を合図にオーケストラが音楽を奏ではじめた。

ペンサプラベ王国の王族が、パートナーや婚約者とダンスを踊り始める。

それを合図に周りの貴族達がダンスを始めた。


会場の護衛には従兄弟のカルディアがいた。

王族が一堂に介しているので、護衛の数が多い。


先ほど隣国の第二王子と見合いを終えた120人のご令嬢は会場に散らばった。

中には自国の婚約者のいないご令息から声をかけられるのを待っているご令嬢のグループも見える。


シルゥイアは壁の花になろうかと、目立たない位置を探そうとしたら声をかけられた。


相手は、先ほどのまでお見合いをしていたカウェルネ王国の第二王子フレデリック様だった。


「シルゥイア嬢、是非、ファーストダンスを」

と手をとられ、ダンスホールに連れ出された。


普段なら豪快に踊るところを、このピンヒールのせいで、おしとやかに踊らないと転んでしまいそうである。


ぎこちない踊りになりそうなのをなんとかやり過ごす。


「おや、シルゥイア嬢は、ダンスは苦手なのですか?噂ではかなり運動神経がいいと聞きましたが」

とフレデリック王子。

「ダンスは好きなんですが…ほほほ」

笑ってごまかすシルゥイア。

その時、小さな声でフレデリック王子が何か呟いた。

シルゥイアには

「気づかないか…」

と聞こえた。


曲が終わると、

「シルゥイア嬢、ファーストダンスを踊れて楽しかったです。それでは失礼します」

とフレデリック王子は言い、他のご令嬢からダンスを求められてシルゥイアとフレデリックは離れた。


「シルゥイア様、今、フレデリック殿下とダンスを踊られているのを見ておりましたわ!ステキでしたわ」

と同じクラスの女子に囲まれて女子会状態になってしまった。


ダンスホールでは相変わらず沢山の人がダンスをしている。

シルゥイアの両親もダンスをしていたが、お母様は軽快すぎるステップでお父様を飛び越え、お父様はそんなお母様を高く投げてひねりの効いたジャンプを見せていた。3回転半だ!


慣れない靴で疲れたシルゥイアは休む事にして化粧室へ向かう。


化粧室の中で、慣れないピンヒールに疲れてた足をゆっくり休ませた後、出ようとすると扉が開かない!


シルゥイアは騎士志望。気配は感じるはずなのに、全くわからなかった。

プロの仕業なのかしら?だとしたら王族が狙われているのかも!


そう思い、化粧室の扉を蹴破ろうとしたら、ノックの音が聞こえた。

「お嬢様、大丈夫ですか?今、扉を開けますよ」

心配して声をかけてくれる男性の声がした。

足を休めるために30分ほど化粧室にこもっていたので、気分が悪くなったと勘違いされ誰かが心配してきてくれたのだろうか?とシルゥイアは考えて、大人しく扉が開くのを待った。


何かを動かす重たい音が聞こえて、ゆっくり扉が開いた。


そこにいたのはカウェルネ国第二王子の執事。

「何事もなくてよかったです」

と執事は微笑みかけてきた。


化粧室を出るとそこにあったのは大きな牛の置物。


これを動かしていたのね。

なんでまたこんなところに牛の置物が?

これがあったら誰もトイレには入れないわ

第一、気配を消してどうやってコレを置いたのか…


謎は深まるばかり。


そこへフレデリック第二王子が現れた。

「シルゥイア嬢、まだ降参しない?」

笑顔で聞いてくる。


「?」

シルゥイアはなんのことかわからない。


微笑んでやり過ごそうと決めてカーテシーをし退散しようとすると腕を掴まれた。

「これでもわからない?降参しない?」

フレデリックはそういいながら、ドレイク製菓店の箱を渡してきた。


箱を開けるとそこには、


先ほど見合いの席で見たペーパーウエイトがわりの丸い石。

第二王子の後ろにいた執事が持っていた綺麗な羽ペン。

お菓子が載せてあった青い皿。

そしてお菓子の下にあったクローバーの押し花の琹。


「これって…」

シルゥイアはフレデリック王子の顔を見て、執事の顔を見る。


「…私の宝物みたい。

なんで今まで忘れていたんだろう。

このお皿なんて、私がいつも青い絵具をお皿に入れてお水を入れた時とそっくり…」

シルゥイアは懐かしそうに箱の中身を眺めた。


「で。降参する?」

悪戯っぽくフレデリックが聞いてきた。


「もしかして…リック?」


「そうだよ!俺はリック。やっと気づいた?シルは鈍いな」

とフレデリックは答える。


「リック様、このようなやり方では気づかないと申したではありませんか!」


と執事はフレデリック王子に声をかけた後、シルゥイアの方を向き


「シル様も大きくなられて、聡明で美しいお嬢様になりましたね。

あの頃、シル様は私の帽子にカエルを入れるのが大好きでした」

と言って微笑んだ。


「もしかしてリックのお祖父ちゃん?」


「あの頃は、祖父のふりをして過ごしておりましたね」

と懐かしそうに微笑む。


「さあシル!あの頃の勝負はまだ終わっちゃいない!ここで決着をつけよう!さあ、ダンスホールへ向かうぞ」

とリックは言い、シルゥイアの手を取り、ダンスホールへ連れ出した。


ダンスホールでは音楽が鳴り止み、ホールの二階に沢山の人がいた。

皆、ホールを覗き込むように囲んでいる。

ホールの真ん中は広々と空いており、そこには宮廷騎士団の団員数名と、グスタフ辺境伯夫妻が壁際にいた。


ホールの真ん中に連れ出されたシルゥイアは、フレデリックと向かい合うように立った。

先ほどまでダンスホールにいた人達は皆、上から2人を見下ろしている。


「カウェルネ国第二王子フレデリックの希望により、今から剣術の試合を行う。双方、剣を取れ」

国王様の宣言で今から何が始まるのかやっとわかったシルゥイア。


シルゥイアとフレデリックには木刀が渡された。


シルゥイアは無言で片手を上げて、ホールの真ん中から両親の元に走った。

ピンヒールを脱ぐために。

脱いだピンヒールの靴は母に預けた。

母はキラキラした目で楽しそうに受け取ってくれた。


そして裸足でホールに戻った。


「はじめ!」

開始の合図で2人は木刀をかまえる。


「宝箱まだ見つかってないみたいだけど、どこに隠したか知りたい?

降参する?そしたら俺の言う事を何でも一つ聞かなきゃならないんだよ?

それとも俺と剣で勝負して勝ち、ありかを聞く?」

笑顔でフレデリックは聞いてきた。


シルゥイアは斬りかかりながら答える。


「リック!私と勝負するなんていい度胸ね!私は

もしも学園に入らなければお父様の部下になってグスタフ軍の騎士になっていたはずなのよ!」


木刀がぶつかる音が何度も響いた。


振り下ろされる木刀を色々な角度から防いだり、攻撃をもってかわしたり、2人は互角だった。


事の成り行きを見守っている騎士達ですら息を飲む試合になった。


だんだんと、フレデリックが優勢になってきた。


シルゥイアは壁際に追い詰められそうになると、壁を駆け上がってフレデリックの後ろに回った。

足元を狙おうとすると、フレデリックは、シルゥイアの肩を踏み、高く飛び上がる。

そしてシルゥイアの木刀を叩いた。


ギャラリーの息を飲む音や、叫びそうになる声を我慢するご令嬢のくぐもった声がする。


シルゥイアの木刀が飛び丸腰になるシルゥイア。


シルゥイアは壁際に寄せられたテーブルに走っていくとフォークを取り、武器として木刀が振り下ろされるのを阻止する。


フォークと木刀での攻防戦は続き、とうとうフォークも木刀によって封印されてしまった。


追い詰められるシルゥイア。

「…降参です…」

シルゥイアの声を聞いて、二階にいた貴族達は大きな拍手や歓声を上げた。


はじめ、ご令嬢に決闘のようなものを申し込んだ他国の王子をバカにしたり、所詮はご令嬢だからすぐ降参すると笑っていた貴族の男性陣だったが、途中から、「流石に辺境伯の長女だ!」とか褒め言葉に変わっていった。


学園内でシルゥイアの事を、剣術の先生の個人レッスンを受けているなんて鼻で笑っていたご令息達は、

「見ろよ、王族の護衛の騎士ですら目が釘付けだぞ。あの剣に敵う奴は学園の中にはいないかもしれない」

などと口々に言い


学園のご令嬢達は早速明日からシルゥイア様親衛隊を作ろうと意気込んでいた。


「勝者、フレデリック!

フレデリック殿は言いたいことがあるとか?」

と国王は問いかける。


「はい」

とペンサプラベ国王に返事をしてからシルゥイアの方を向いた。


「シル、降参したからには俺の言う事を聞いてもらうよ?」

とフレデリック


「はい」

とシルゥイア。


フレデリックは跪き、ジュエリーボックスを開けた。

中には大きなサファイアの指輪が入っている。


「シル!私と結婚してください」

大きな声でフレデリックは言った。そして


「ヒントの『目の中に入れても痛くない』は、屋敷の玄関にある騎士の鎧。

鎧兜の目の部分を開けて中に入れたよ」


ギャラリーは何のことかわからないが、シルゥイアの答えを待った。


「はい!リック」

と、シルゥイアはリックの手を取った。

リックは立ち上がると、シルゥイアを抱きしめた。


「子供の頃さんざん意地悪してごめん。あの頃からシルゥイアが好きだったんだ」

とフレデリック。


「リックはたまに意地悪だったけど、幼い妹や弟には優しかったし、そんなリックの事を嫌いになれなくて。

むしろ好きだったから意地悪されても一緒に遊んでたんだよ?」

とシルゥイア。



その後、会場にいた沢山の貴族から祝福された。

そして国王は婚約を宣言をし舞踏会は無事終了した。


一年後、シルゥイアはカウェルネ国の第二王子、フレデリック様と結婚し、カウェルネ国に嫁いだ。


グスタフ領のシルゥイアの実家の玄関横の騎士の兜からはドレイク製菓店の箱に入ったシルゥイアの宝物が見つかった。

兜の中って誰も覗かないものなんだね…家族で感心した。



それから数年間、好きな子の宝箱を隠して、隠された子が最後まで見つけられなかったら幸せな結婚ができるという不思議なおまじないが流行った









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