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君に託す幸福 1

 ジャスの逃亡から一日たち、城下町は国属騎士による警備が強化された。

 月夜の中、小さな明かりを持った騎士たちが巡回している。

 町の人々は家を出ることを許されず、水をくみに外へ出ようものなら、騎士から厳しい取り調べを受けることになる。

 窓から外を覗く者は、怯えて眠りにつくことすら出来ない。

 数分に一度は騎士たちの怒号が聞こえ、町は重い空気に包まれている。


 その町の入口に、二人の国属騎士が見張りとして立っていた。

 二人は若く、町で見張りをしている年のいった騎士たちが何を考えているのか理解していない。

 怒号が聞こえてくるたびに眉をよせ、そこまでする必要が果たしてあるのかと首をかしげる。


「ジャス殿が逃亡したという話は聞いてるが、いったいなにをしたんだ?」

「さあ、よく知らん。ていうか聞いても教えてくれなかったよ」

「うーん、ていうか、眠い」

「いい加減慣れろよ。これから数年はおそらくこの仕事なんだからよ」


 欠伸を遠慮することなくする騎士と、それを見て欠伸が移りそうになるのを必死にこらえる騎士。

 どうせ何も起きないだろうと、一人がその場に腰を下ろすと、もう一人もそれには同感と言って、勢いよく座り込んだ。


 しかし息をついたところで、二人の耳に遠くから蹄の音が聞こえてくる。


「聞こえる?」

「ああ。町からじゃない。外からだ」


 二人が身体を起こし、音の鳴る方へ視線を向ける。

 槍を構え、戦闘になることを覚悟する。


 ようやく視界に入ったのは、馬に乗った血まみれの騎士。

 鎧から自国の国属騎士であることがわかる。

 若い騎士たちは止まるように怒号を飛ばすが、なにやら様子がおかしい。

 手綱を握る手が緩み、騎士の身体が滑るように馬から落ちていく。

 そのまま地面にたたきつけられ、ぴくりとも動かなかった。


 見張りの騎士は走り続けようとする馬をなんとか諫め、倒れた騎士に近づく。


「ジャスでも、ウオール先生でもなさそうだ」

「だな。ヘルメットをとろう」


 一人が手をかけ、ヘルメットをとる。

 ウエーブのかかった金髪が現れ二人は顔を見合った。

 よく知る騎士だったのである。

 一人が肩をすくめて嫌そうに頬をたたく。


「おい、おいエネ!起きろ!」

「……た、助けて、くれ」

「は?」

「ウオール先生、先生に、みんな、殺された……」




 エネの報告を受けて、違和感を感じるほど迅速に役人たちは動いた。

 報告の内容は、ウオールの裏切りによって先遣隊が殺されたこと。

 そして、グリーフ国は戦闘力が高くなく、周囲を囲む石壁ももろいということ。


 早速開かれた役人たちと王の会議は、ウオールを騎士隊長から懲戒し、裏切り者として指名手配することを決定する。

 そこに反対意見は驚くほど無かった。

 宰相は終始冷や汗をかきながら下を向いていたが、誰も彼のことを気にかける者はいない。


「では、決定じゃのう。次に、グリーフ国について。エネ、入れ」

「失礼します」


 扉が開かれ、凜とした姿勢でエネが入室する。


 ニヤニヤとした顔の役人たちが気味悪く光る目でエネを見つめている。

 王は彼を隣に招き、グリーフ国について今一度報告せよ、と命じた。


「グリーフ国は我々の予想通り、かなりの小国です。おそらく資源については外部からの輸入に頼っており、兵士らの戦闘力もたいしたことはありません。私一人で100人は相手を出来ます」


 エネは誇らしげに語る。

 それを満足そうに首肯しながら役人らは聞いていた。

 よし、と王は頷き、役人らを見回す。


「エネの報告を頼りに、グリーフ国侵略軍を編成する!相手からなにか探られる前に、軍はなるべく早急に出立させよう。エネ、お前を最高指揮官に任命する!また我が王国の歴史に勝利の文字が刻まれる……私の歴史だ!」


 すっきりした顔で王は皆へ向かって言う。

 エネを含めた役人たちが軽く拍手をしながら笑っていた。

 宰相は王を少し睨みながら周囲の空気になんとか動きを合わせる。


――強欲な奴め、ウオールを封じたつもりでいるな。まさか、これで終わると思うなよ。ジャス、頼んだぞ。我が友ウオール、お前は生きているだろう。

今回は短めで切りました。すいません…(´・ω・`)



明日も更新致しますので、ぜひご覧下さい!また、本作は細かい伏線が少し多いです。見直してみると意味ありげな描写があるかも…

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