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ヴィロン村の様子は酷いものだった。具体的には倒壊した建物が殆どを占めており、無事に建っている建物は数える程しかなく、住民は昼間は瓦礫の撤去、夜は一時的に魔法で作った屋根と壁だけの簡易的な建物で寝起きをしているようだった。


既に魔王は倒されているのにそれまでイースディールの最前線として長い期間耐え忍んでいた影響から土地も住民も痩せこけている。

その上物資も少ない。元々寒さから土地で収穫できるものが少ないことに加え、王都から送られてきている物資も限りがある。今現在は王都からの物資でギリギリ賄っているのが現状だった。


フェリシアの一番最初の仕事は、若い女性であるということもあり、調理だった。元々派遣されていた城塞のメイド――キャリーとアメリア、それと村の若い女性数人と共に住民達の朝食の準備をしていく……筈だったのだが。


「料理……何にしましょう」


アメリアが呟く。彼女がそう呟いてしまうのも仕方がない。調理場にあった物資は大量のジャガイモ……ジャガイモのみだった。今まではもう少し食材の種類が多かったこともあり、今回のジャガイモしかないという事態は異例だった。

それに加え、もう一人のメイドであるキャリーも集まっている村の女性もそこまで料理が得意という者はいないようで眉を顰めていた。


「っあの……でしたら私がレシピを考えてもいいでしょうか」


ここでは新参者であり且つあまり同世代の女性と関わったことがないためにフェリシアは最初かなり緊張した。しかしこのままでは進まないと勇気を出したのだった。


「確か――フェリシアさんでしたっけ?ディラン様の紹介で手伝いにいらした方でしたよね?貴族の方だったとお見受けしますが……失礼ながら料理の経験は?」


キャリーが少しキツめの口調で問いかける。フェリシアはそれも仕方のない事だろうと思う。そもそもフェリシアは勇者パーティに所属していたという経歴があったとしても、そもそもこの土地の人間ではない。ディランに紹介され手伝いとして来たと言っても、もしかしたら物見遊山に貴族令嬢が来た程度に思われているのかもしれない。


それに今、こんなに食材が限られた中では失敗など許されないのだ。だから彼女らの態度も頷けた。


「確かに私は貴族です。けれど、料理は昔からしていたので得意なんです!だからここは私を信じて任せてくれませんか?」


誠意が伝わるように彼女らの一人一人に目を合わせながら、言葉を紡ぐ。信じて任せてもらえるか内心ひやひやしていたが、それを噯にも出さないようにするのに全神経を集中させる。そして少しの沈黙の後、キャリーが溜息を吐いて口を開いた。


「分かりました。正直私達は皆、料理はあまり得意ではありません。だから自信があるというのでしたらお任せします」


フェリシアはその言葉に心の中でガッツポーズをする。そしてその寄せてくれた信用を裏切らないようにと、すぐに準備に取り掛かった。


******


「アメリアさん達はこの芋をイチョウ切りに、キャリーさん達は――」


スープや煮物、野菜チップス……朝だから軽くお腹が満たされるものを指示を出し、味付けをしながら作っていく。ついでにお昼に食べることが出来るように保存の効く状態でハッシュドポテトも作った。そうして出来たジャガイモだけで作ったとは思えない様々な料理が机に並ぶ。


「美味しい」

「っこら!アメリア、つまみ食いしない!!」


きっとお腹が空いていたのだろうアメリアがつまみ食いをしたらしく、キャリーに怒られている。そんな二人を見て、フェリシアは妹であるイリスの事を思い出した。

イリスもよく、一緒に料理をするたびにつまみ食いをしていた……。フェリシアはそんな妹が愛おしくて、大切で、両親に護れと言われた時も喜んで引き受けた。

けれどいつからだろう。妹が――妹だけが両親から過保護に愛されて羨ましいと思い始めたのは。いつからだろう、自分よりも可愛く、可憐な妹に劣等感を抱き始めたのは。


「――シアさん?……フェリシアさん!」

「っなんでしょう、アメリアさん」


いつの間にか思考の海に潜っていたようで、フェリシアはアメリアに強いトーンで名前を呼ばれてやっと意識が浮上する。


「……フェリシアさん。次回から貴女にこの村での料理の監修を任せてもいいかしら」

「はい!大丈夫です」


アメリアは少し不審に思ったようだが、朝からずっと料理を作る指示を出していれば当然疲れていると判断したようで、フェリシアの態度に対して深く突っ込むことはしなかった。フェリシアにとっては今はそれが有難い。

それに要望も仕事を求めていたフェリシアにとっては願ったり叶ったりの事だったため、フェリシアは大きく頷き、それを引き受けた。


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