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19(ユリウス視点6)

好きな人を待っていると思えば、”待つ時間”というのも悪くない。

時刻は既に夕刻で、夕陽が城を赤く照らす。


(この城がこんなにも美しいだなんて……初めて思った)


魔王を討伐して、こんなにも平和になって……そしてフェリシアと結ばれることができたなら。俺は幸せ過ぎて死んでしまうかもしれない。


そんな呆けたことを考えている時だった。遠くからフェリシアの声が聞こえてきたような気がして、視線を門の外――街の方へ向ける。


「フェリシ――――」


そこまで声を掛けようとしたところで気づく。彼女は今、一人ではない。彼が……ディランが一緒だ。彼と楽し気に軽口を叩きあっている。

そんな光景を見て、また自信がなくなってくる。


(やはりフェリシアは……)


そこまで考えたところで、思考を振り切るように首を横に振る。


(こんなことで弱気になるな。俺はもう、気持ちを伝えると決めたはずだ)


「ディラン?丁度良かった。フェリシアを見なかったか?」


だから()()()()()()()()()()声を掛けた。彼は昔から城内でも唯一無二の信頼を置ける親友でもあったが、今はライバルでもある。俺は知っているんだ。ディランはフェリシアを見つめる時だけ瞳が甘くなる。女好きで自分でもそう吹聴しているくせに、フェリシアにだけは他の女性には向けないような瞳を向けるのだ……きっと本人も無意識だが。

しかし、自分の気持ちを伝えようとはしない。俺より先に出会っていたのだから、そんなチャンスいくらでもあった筈なのに。それと同時に厄介なのが、フェリシアから離れようとはしないことだ。

だから敢えて彼への牽制の意味も込めて、ディランに声を掛けた……のだが。


「フェルは今日は見ていませんね。鍛練場にでもいるんじゃないですか?アイツ、鍛練大好きですもん」

「え……でも、君の奥にいるその子――――」


返ってきた答えは予想とは全く違うものだった。何を言っているのかと一瞬耳を疑う。フェリシアはディランの

それどころかディランはフェリシアを自分の方へ引き寄せたように見えた。

信じられない。頭が理解することを拒否する。まさか、ディランはフェリシアに気持ちを伝えたというのか? そして、フェリシアもそれを承認した……?


「この子は俺の今夜のお相手です。もう魔王討伐は終わったんですから、いくら殿下だったとしても、俺が女の子を連れ込むことに対して文句はいわせませんよー」


それを聞いた瞬間、言葉を失った。頭が鈍器で殴られたようににグワングワンする。


今夜のお相手……?


フェリシアとディランはいつの間にそんなにも深い関係になっていたんだ? 俺はやはり彼女の特別にはなれていなかったのか? 俺の想いはもう……届かない?


疑問と感情の波が一気に押し寄せてくる。息が出来ない……苦しい。自分が今、()()()()()()()すら分からなくなってくる。


「……そう、か。分かった」


何とか絞り出せた言葉がソレだった。彼への”敗北”を認め、彼女を諦めるようなその言葉――。


ディランにフェリシアを奪われたことが悔しい。フェリシアの気持ちをもしかしたら……などと勘違いしていたことが恥ずかしい。フィリシアとの未来を手に入れたディランが恨めしい。そしてなによりもフェリシアと自分の未来はないのだと思うと苦しくて苦しくて、何もかもが嫌になってくる。


ディランにもフェリシアにも顔を見られたくなくて、その場を足早に去った。





あとがき(読み飛ばしておk):




勘違いに次ぐ勘違い!ディランのあの言葉は若干わざとではあります。”どうせお前が奪っていくんだから、これくらいの嘘(幻想)許されるだろ”的な(ユリウスのしぶとさなどの諸々のことも計算にいれての)。

彼はこの時、一応はフェリシアの頭を冷静にさせるまでは……と思っている感じですね。ユリウスの事もフェリシアの事も深く知っているだけに。


ついでに、ゲーム選択肢的にはディランが関わらず(ゲーム中にディランの好感度上げないで)このまま進んでいたら、フェリシアはユリウスの事を勘違いしたままで城に帰ることもせず、パーティの誰も来ないような場所に逃げての救済なしノーマルエンドです。(ちょっと小説でも書いてみたいw)


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